「どうすっかなぁ…」 
図書室の背の高い棚をうろうろして本を物色する。 
冬休みの読書感想文用の本を探して図書室へ来ているが、適当な本が見つからない。 
つーかマジマンドクセ。なんで読書感想文とか書かなきゃいけないわけよ。 
だからといって書かないとまた面倒なことになるだろうしなぁ。 
クラスのみんなは何読むって言ってたっけな? 
ちぃは家にある少女小説とかって言ってたし、雅ちゃんは普段から文庫本けっこう読んでるよな。 
須藤さんは古文とか好きそうだからそういう物語とか読むって言ってたし。 

とりあえず適当な本を取ってパラパラとめくってみる。 
…ま、これくらいなら読めなくもないか。 
何とか最後まで読めそうな感じの本を何冊か選んだところでふと気付く。 
本を借りるのに必要な生徒手帳を持ってきてないや。 
カバンに入ってるから、教室だよなぁ…。 

1.急いで教室に戻って生徒手帳を取ってくる 
2.面倒だし今日はいいや、誰かいないかと図書室をうろついてみる 



せっかく見つけたしやっぱ借りときたいな。 
明日とか出直してきて誰かに借りられてたとかじゃやっぱ凹むし。 
そう思った俺は慌てて教室に戻って生徒手帳を取ってくることにした。 

廊下を走って教室へ向かっていると、何だか外暗い気がする。 
時計を見たらけっこう時間経ってたんだなぁ。 
おまけに雲行きも怪しい。雨、降りそうだなぁ。 
参ったな、傘、持ってきてないんだよな。急いだほうがよさそうだ。 
そんなことを考えながら教室まで戻ってきてドアを開ける。 

「ちょっとジミー君、カバンほっぽってどこ行ってたのよ!」 
ドアを開けるなりいきなり須藤さんが怒りの声を上げる。 
「や、図書室に本借りに行ってただけだけど…っていうか須藤さんこそまだ残ってたんだ」 
「あんたのせいでしょうが!カバン置いて残ってるから日直の私まで帰れないから!」 
「ごめん!すっかり忘れてたw」 
そういや須藤さん今日日直だったな。 
黒板もしっかりキレイになってるし、机もすっかり整頓されてる。 
俺がカバン放置してたから帰れなかった…ってことか、申し訳ない。 
謝ってるけど、なかなか須藤さんの機嫌は直りそうにないな。 

1.「ごめん、帰りに何かおごるから!」 
2.「今度日直のときは俺が手伝うから」 
3.「ごめん急ぐんだ、生徒手帳なくて本借りれなかったからさ」 



「ごめん急ぐんだ、生徒手帳なくて本借りれなかったからさ」 
「あ、ちょっとこら!待ちなさいよ!!」 
須藤さんには悪いけど、あの本借りなきゃ宿題ができないんだ! 
カバンから生徒手帳を取り出すと、慌てて俺は教室から駆け出した。 
「せめてカバン持って行きなさいよ!!」 
須藤さんの声が後ろから聞こえた。ごめん、須藤さん… 


「ハァ…ハァ…ハァ…疲れた…」 
教室から走って図書室に戻ってくる。 
息切れしたまままっすぐさっきの本を見つけた本棚に向かって本を選ぶ。 
良かった、誰にも借りられてないみたいだ。 
本を持って図書委員のいるカウンターに行って、無事に本を借りることができた。 
これでとりあえず読書感想文の宿題は何とかなりそうだな。 

あ、でも本当に須藤さんどうしよう。 
さっきのあの感じだと教室戻ったら絶対須藤さん待ってるよな…。 
流石に今度は謝って済む問題でもなさそうだし。 

1.素直に教室戻って謝ろうか 
2.ほとぼりが冷める下校時刻まで借りた本読んでようか 
3.そんなのどうだっていいか、誰か知った人いないか探してみる。 



…恐る恐る、教室のドアを少し開けて中の様子を伺う。 

「…ッ!!」 

やばい。 
鬼だ、鬼が居る。 
須藤さんが俺の机の前で仁王立ちしている。 
当然ながら相当ご立腹な様子だ。 
「…あの、須藤さん」 
「…何?」 
怖ぇぇ!!久々に阿修羅モード入ってるぞこりゃ。 
「…ごめんなさい」 
「何時間待たされたと思ってるの?」 
「う…本当に面目ないです」 
時計を見ると、授業が終わってから軽く1時間半は経ってる。 
ってことは日直の仕事やってたこと考えたって、軽く1時間は待たせてるわけで。 
「あんたね…ちょっとは人のこと考えなさいよ!」 
「ホントすいませんでした」 
須藤さんのお説教が続く。 
確かに俺が逆の立場でもキレるよな。反省。 

「じゃ、私帰るけどジミー君も帰るでしょ?」 
「あれ?殴らないの?」 
「殴られたいの?」 
「…いや、勘弁してください」 
…とりあえず助かったらしい。 
けど須藤さんの機嫌はもちろん悪いまま、何とかしたいけど…うーん… 

2人して廊下に出て数歩歩いたところで窓の外の異常に気付く。 
「雨…」 
「ウソ、俺傘持ってないのに」 
「私も…」 
おいおいマジかよ、どうしようか。 

1.まだ小降りだし、須藤さんを自転車で送る 
2.家に電話して迎えに来てもらおうか 
3.じゃあ俺急いで帰るから、須藤さんも気をつけて!と離脱 



「まだ小降りだし、自転車で送るよ」 
「え、でも…」 
「いいからいいから、散々待たせちゃったし、これくらいさせてよ」 
あんだけ怒ったあとだから俺に甘えるの若干気まずそうな須藤さんを引っ張って自転車置き場に行く。 
そのまま自転車を出して後ろに須藤さんを半ば無理やり乗せた。 
「俺須藤さんち正確には分かんないからちゃんと教えてよ」 
「う…うん」 
いつもよりおずおずといった感じで俺の身体にしがみついてくる。 
「よし!飛ばしていくよ!」 
俺は勢いよくペダルをこいで自転車を走らせだした。 


数分後。 


「ちょっとジミー君!?大丈夫!?」 
「あ…あんまり大丈夫じゃない!」 
ちょっとウソだろ、ネタじゃないんだから! 
学校を出た途端に、パラパラ降り始めた雨がいきなり土砂降りに。 
にわか雨…というかスコールみたいな勢いであっという間に2人ともずぶ濡れになった。 
「もー!最悪なんだけど今日!!」 
こんなことなら最初から大人しく学校で家に電話して迎えに来てもらえばよかった! 
自分ひとりならともかく、須藤さん巻き添えにしちゃったしな。 

1.どこかで雨宿りをしよう! 
2.須藤さんの家に急げ! 
3.須藤さんのナビを聞きながらよりもうちに行くほうが早い! 



このままじゃ2人とも風邪引いちゃうよ! 
とりあえずどっかで雨宿りしなきゃ。 
どこだ?どこがいい? 
落ち着けて、できれば制服も乾かせるところ…。 
ファミレス、ファーストフード、コンビニ…カラオケ! 

「ちょっと雨宿りしよう!」 
「いいけど、どうするの!?」 
「あそこにあるカラオケ行くよ!」 
「大丈夫?入れる!?」 
「大丈夫だよ!」 
そのまま俺と須藤さんは自転車を降りてカラオケボックスに駆け込んだ。 
店員さんには流石にずぶ濡れのまま入ろうとしてかなり嫌な顔をされたけど、何とか受付を済ませる。 
ハンカチで顔やら頭やらを拭きながら部屋に入る。 
「寒っ!エアコン入れよう!」 
「うん、寒い寒い寒い…」 
さすがにこの季節に雨でずぶ濡れになったので身体がかなり冷え切ってる。 
2人して上着を脱いで、エアコンの真下に掛ける。出るまでに乾くかな…。 
「何かあったかいもの頼もうよ、何飲む?」 
「えーっと…どうしようかな…」 
メニューを須藤さんに手渡すと、須藤さんは真剣な顔で悩み始めた。 
ふと見ると、須藤さんのブラウスが雨で透けてブラが浮かび上がってる。 
…ピンク。 
ブラウスも肌に張り付いちゃってるし、これはこれでけっこうエロいんだけど。 

1.とりあえず拝む 
2.体操着に着替えてくるのを勧める 
3.歌う雰囲気作りと見せかけてブラックライトをつける 



「じゃあ私ココア」 
「オッケー、注文するよ」 
部屋の電話で手早く受け付けにココアを2つ注文する。 
受話器を置いたタイミングでさりげなくすぐ横のブラックライトのスイッチを入れた。 
あくまでも普通に、さりげなく。 
いきなり照明の感じが変わったので驚いて顔を上げる須藤さん。 
「あ、ごめん、こういうのつけるのクセなんだよねw」 
「ビックリしたー、言ってよ」 
「あはは、ごめんごめん」 
須藤さんは気付いてないけど、ブラックライトで須藤さんのブラウスは白く光ってる。 
しかもブラのところは光り方が違うからブラの形まで丸分かりだ。 
これはけっこう美味しいな… 
光ってるのがバレないように、じっくりじゃなくてチラチラ眺める。 

しばらくして店員さんがココアを持ってきた。 
ココアを飲みながらしばらくマターリする。 
「とりあえず雨止むまで動けないね」 
「うん、暗くなってきたからちょっと外見えづらいけど、まだ降ってるし」 
ま、カラオケの時間もあるし、1,2時間は動けないな。 
どうしようか? 

1.雑談して過ごす 
2.せっかくだしカラオケしようよ 
3.その他(アイデア募集) 
 3 プロレスごっこであっさり負けるジミーw 
 3 腕相撲リベンジ 
 3 須藤さんの母性に思わずママー!と赤ちゃんプレイ 



「せっかくだしカラオケしようよ」 
「そうね、パーッと歌おっか!」 
そんなノリでカラオケを2人で始めた。 

「ボックらんの、生〜まれてく〜る〜ずっとずっと前にはもぉ〜♪」 
「あははははは!ちょっと無理やりすぎ〜!」 

「少し背の高いぃ〜あなたの耳に寄せたおでこ〜♪ぁ…無理!こんなの高くて出ないよ!」 
「ちゃんと歌ってよ!」 

何だかんだ2人でワイワイやりながらどんどん歌っていく。 
さっきまで不機嫌だった須藤さんだけど、何だかんだ機嫌も直してくれたみたいだ。 
桃子先輩とのカラオケも楽しかったけど、何か違った感じの楽しさだ。 
気付くと、すっかり時間も経って、退室時間も近づいていた。 
大騒ぎしたお陰で熱くなったからか、ワイシャツも制服もすっかり乾いている。 
須藤さんは結局ブラが光ってたのには気付いてなかったので、随分堪能させてもらったw 

ルームを出るために身支度をしながら、ふと一つ悪巧みを思いついた。 
「ねぇ須藤さんさ、前に腕相撲して俺あっさり負けたことあったよね」 
「あったあったwジミー君全然弱かったんだもん」 
「リベンジしていい?今度は俺勝つから」 
「いいけど、じゃあ私勝ったらここジミー君のおごりねw」 
「いいよ、じゃあ俺勝ったら一つお願い聞いてもらおうかな」 
「いいけど、何?」 
「や、正直まだ考えてないんだけどw」 
「変なのだったらやらないからね。じゃあいくよ」 
須藤さんと腕を組んで、マジ顔で見詰め合う。 
でも今日の俺には勝算があるんだよねw 

「レディー…ゴッ!」 
うお!前と変わらない勢いで腕を持っていかれる! 
やっぱり須藤さんには腕力じゃ勝てない、奥の手を出すしか! 
「すっ、須藤さん!?」 
「何よ勝負中に!?」 
「…さっきブラ、見えてたよ」 
「うそっ!?」 
須藤さんの力が抜ける、チャンス!! 
俺は渾身の力で一瞬にして須藤さんの腕をテーブルに叩きつけた! 
「勝ーー利!!!」 
「ちょっ…どこ見てるのよ!?さっきって…歌ってるとき!?」 
「はい、歌ってる間ずっとみせていただきやんした♪」 
「エッチ!ヘンタイ!」 
「いててててて!」 
本気で須藤さんに叩かれる。そりゃ怒るか。 
「ごめん、ごめんって!ウソ、冗談だから!」 
「ホント?」 
「見てない見てない!ちょっとだけしか」 
「やっぱ見てたんじゃないの!ヘンタイ!」 
何度かぶたれたけど、いつもの本気殴りじゃない。 
さっきカラオケでガス抜きしたのと、もう俺のキャラ見透かされてるんだろうなw 
部屋から出てお金を払うと、雨はもう止んでいた。 
須藤さんを後ろに乗せて、自転車で漕ぎだす。 

「で、お願いってどうするの?」 
「え?いいの?」 
「納得はしてないけど、負けは負けだし。でもあんますごいのはダメだからね!」 
マジかよ、反則勝ちだし、期待してなかったのに 

1.じゃあささやかに、年賀状来年出して 
2.ダメもとで、キスして、なんちゃってw 
3.とりあえずキープにしとこう、そのうち何か考える 



「じゃあ…キスして、なんて…てっ!」 
「そ、そんなのできるわけないでしょ!誰が好き好んでファーストキスあんたなんかと!」 
「ちょっ、危な、誰も口になんて言ってないじゃん!」 
「ほっぺただって嫌よ!」 
片手で俺に捕まったまま反対の手でポカポカ叩いてくる。 
ちょっとバランス崩して蛇行しそうになるが、何とかこらえながら、自転車を漕ぐ。 
「冗談だって、冗談、ウソだから!」 
「またー、とか言ってさっきみたいに不意打ちでとかしようとしないでしょうね」 
「しないしない、俺まだ死にたくないもん」 
「あんたね…ホントにしたら本気で殴るからね」 
須藤さんの本気…考えただけでゾッとするな。 
何度となく殴られたけど、今の口ぶりだと本気じゃなさそうだし。 
「ま、それは冗談として、またたまにこうして遊ぼうよ。それがお願い」 
「遊ぼうよってあんた…今日だってもともとはあんたがカバン持たないで図書室行くから悪いんでしょw」 
「そうでしたw以後気をつけますw」 
そんな話をしているうちに須藤さんの家が見えてきた。 

「じゃあ俺帰るから、ホント今日はごめん」 
「うん…あ、あの…ジミー君?」 
「え?」 
「あの…ちょっと…」 
自転車から降りて、家の前に立った須藤さんが俺を呼び止める。 
「何?どうかした?」 
「あの……」 
何だかモジモジして要領を得ない。こんな須藤さん、あんまり見たことないぞ。 
「………チュッ」 
ギュッと目を閉じたまま、右手の指を唇に当てて、それを俺のほうに振る須藤さん。 
みるみるうちに真っ赤になる須藤さん。 
「…今のって…」 
「もうやだー!恥ずかしい!もう絶対しないからね!」 
喚きながら須藤さんは家に駆け込んでしまった。 

…投げキッス、か。 
なんかああいう純な須藤さん、久々に見たな。 
2人のときにからかうネタができたし。 
使うには命懸けな気もするけどw 
ちょっとニヤつきながら自転車で家に向かって走り出した。 

空を見上げると、白い月が須藤さんの投げキッスに照れたのか黒い雲の中から時折覗き見ていた。