何とか雨宿りしないと…ウチ行くか! そう決めた俺はさらに自転車のスピードを上げる。 「ちょっと!そっちじゃないよ!私のうちあっち…!」 「俺んち行こう!多分須藤さんの案内で走るよりそのほうが早いから!」 ここからだと多分須藤さんの家のほうが近いんだろうけど、須藤さんのナビでゆっくり走って行くよりも 俺の家までまっすぐ行ったほうが時間的には濡れる時間は短いはず! そう思った俺は須藤さんの指示を無視して自分の家の方向に自転車を走らせる。 それから数分ほどで無事に家までたどり着いた。 土砂降りの雨の中、普通の通学のときにも出さないようなスピードで漕いだからホントに息切れしてる。 2人乗りでこれだけスピード、しかも雨だから少しだけブレーキかかりにくくて焦ったけども。 濡れ鼠になったまま玄関の鍵を開けて家に駆け込む。 顔やら足やらを拭くのもそこそこに風呂場に行って、バスタオルを取ってきて玄関の須藤さんに手渡す。 「これ使って、頭とか拭いたら風呂のスイッチ入れてきたからシャワー浴びるといいよ」 「え、でも……」 「いいからいいから、そんなカッコじゃ中に入れれないからさ」 俺自身もバスタオルで頭を拭きながら須藤さんにそう声を掛ける。 「そんなカッコじゃ風邪引いちゃうからさ、浴びてきなって」 須藤さんはまだ渋ってる風だったけど、返事を待たずに俺は部屋に向かう。 逆にこういうのって俺がいると入りづらかったりもするだろうしね。 部屋に入って、俺もずぶ濡れの制服を脱いで部屋着に着替える。 うわ…下着の中までぐしょ濡れだな。全部着替えて制服を壁に掛けた。 雨の雫が滴ってるので、居間から古新聞を持ってきて敷くのも忘れない。 玄関を見ると須藤さんはいなかった。風呂から音がするところを見ると、ちゃんとシャワー浴びてるみたいだ。 さて、須藤さんの着替え、どうしようか? 1.俺の私服を貸す 2.母親のタンスから着れそうな服を探してみる 3.体育あったし須藤さんも体操着持ってるよな やっぱ無難に考えて俺のを貸すのが一番か。 母親のを…ってのも考えたけど、サイズ分かんないし、何より須藤さんも中3の女の子なわけだし、 あんまりそういう上な世代の服とか、ってのもイヤだろうし。 タンスから須藤さんに合いそうな服を探してみる。 ちょっとサイズの大きめのスウェットとTシャツを引っ張り出してみた。 須藤さんもけっこう大きいほうだからなぁ…多分着れると思うけど。 着替えを持って風呂場へ向かう。 「須藤さん?ちょっとだけ入るよ、着替えここ置いとくから」 「あ、ありがと!」 「お湯大丈夫?」 「うん、平気ー」 何だかんだシャワーを浴びてリラックスはできてるみたいだな。 とりあえず一安心して今度は台所に向かう。 お茶を淹れるためにやかんを火にかけてカップを用意する。 あ、部屋あっためなきゃな、ヒーター出すとして、灯油残ってるかなぁ… あたふたと用意をしているうちにドアが開く音がして須藤さんが入ってきた。 「ジミー君、シャワーありがと」 俺の服を着て少し上気した顔色の須藤さん、ちょっと色っぽいな。 「服のサイズ大丈夫だった?」 「うん、ぴったりかな」 「そりゃよかった」 1.じゃあ俺もシャワー浴びてこようかな 2.俺の部屋行こうか、お茶も準備できたし じゃあ俺もシャワー浴びてこようかな。とりあえず須藤さんはこれで大丈夫だろうし。 「俺もシャワー浴びてくるよ、まだこんなだし」 と生乾きの自分の髪の毛を触ってみせる。 「あ、ごめんね、私先にシャワー浴びちゃって」 「いいっていいって、こういうのはレディーファーストだしさ」 やかんのお湯が沸いたのでココアを淹れてお盆ごと須藤さんに手渡す。 「悪いけど先に俺の部屋行ってて。そこ曲がった奥のとこだから。暖房ついてるとこね」 「う、うん…」 風呂場に行って、着替えたばかりの服を脱いで浴室に入る。 換気扇は回ってたけど、まだまだ須藤さんがシャワー浴びてから時間が経ってないからまだあったかい。 充満してるのはうちのシャンプーの匂いだけど、何だか少し違った匂いがする気がする。 須藤さん自身の匂い…? やべぇ、ドキドキする…って俺は有原さんかよw 1.とりあえず、排水溝チェック→自手トレ 2.須藤さん待ってるし、急いで浴びよう とりあえず須藤さん待ってるし手早く浴びちゃおう。 あぁ…お湯あったけぇな。外寒かったからな。 特別何があるってわけじゃないけど、女の子が部屋にいる状況でシャワーを浴びてる、ってのはなんかドキドキするなw 何となくいつもよりも少し念入りに身体を洗ってすぐに風呂を出た。 「お待たせ、須藤さん」 「ううん、お邪魔させてもらってる」 部屋に戻ると、テーブルの前に正座した須藤さんが落ちつかなげにキョロキョロしてる。 「なに?何か変なところある?」 「ううん、そうじゃないんだけど…お兄ちゃん以外の男の子の部屋に入るって初めてだからさ」 「へぇ、須藤さんってお兄さんいるんだ、でもあんま男の部屋なんて変わんないでしょ」 「まぁ…ね。お兄ちゃんテニス部だからそういう用具とか多いかな」 「そうなんだ、まぁ俺と萩原の部屋も全然違うからなぁ」 「ふぅん…」 ま、萩原の部屋は妹の写真だらけなんだけどなw 流石に須藤さんにはこのことは言えないだろwww 「あれ、制服は?さっきの雨だしけっこう濡れたでしょ」 「あー、ここに入ってるけど…」 「ハンガー貸すから掛けときなよ、皺になるし、帰るまでに多分乾くよ」 「いいの?ホントごめんね、何から何まで」 「いいっていいって、元はといえば俺がカバンほっぽって須藤さん待たせたせいでこうなったんだし」 「そういえばそうだったわねwまっすぐ帰れてたらこんな雨には遭わなかったわけだしw」 相変わらず須藤さんは手厳しいなw 立ち上がって俺の制服の隣に自分の制服を吊るす須藤さん。 俺に背を向けてる格好だけど…あれ? 須藤さんの背中にブラジャーラインが見えない。 これはもしかして、もしかして…? 1.「須藤さんもしかしてノーブラ?」と直球で聞く 2.「ずぶ濡れだったけど制服とか乾きそうかな?」とオブラートに聞く 3.気付かないフリをする、でもじっくりと見せてもらうw これは言わないほうがいいな、そしてじっくりと見せてもらおうw うかつなことを言うとまた殴られかねないし。 「ありがとね、帰り着てけるか分かんないけど」 「イヤじゃなかったらその服貸すよ。あ、上着が要るな…流石にそのカッコじゃ寒いだろうし」 「え…でもそんな、悪いよ……いいの?」 「いいっていいって、あとで探すから」 いつものちょっとお母さんっぽくて面倒見のいい須藤さんが俯いちゃってすっかり小さくなっちゃってる。 ちょっと前のちぃの一件以来、強気だったり怒らせてばっかりだったからなぁ…。 こういう弱気っぽい須藤さんってちょっと新鮮かも。 そんなことを思いつつ、俺の視線はさっきから須藤さんの胸に釘付けなわけだがw やっぱおっきいよなぁ…桃子先輩や梅田先輩よりも大きいし。 ちょっとふっくらしてるけど、こないだも自転車で抱き心地よかったし。 絶対胸だって柔らかいんだろうなぁ。 …胸の先端、もしかしてポチッと飛び出てないか?おいおい、マジかよ… やばい、頭の中がエロで一色になってきてる。 ちぃや桃子先輩や愛理ちゃんだったらこういう状況で絶対押し倒すんだけどな。 須藤さんは悲しいかな、腕っ節が俺より数段上だからな、返り討ちにされること請け合いw 「なんか…ちょっと意外だな」 「え?」 「ジミー君がこんなに優しくしてくれるって思わなかったから」 「ちょw俺ってそんな冷たい男なイメージ!?」 「だって浮気しまくってちぃ泣かすし、私のことだってからかってばっかりだし…」 1.「俺はそんな酷い男じゃないよ………多分」 2.「やっぱ女の子からはそういう風に見えるんだ…」 3.「それはアレだよ、好きな子はいじめたくなるっていう…」 「やっぱ女の子からはそういう風に見えるんだ…」 自分でも確かに色んな女の子振り回してる酷い奴だとは思うけど、いざ言われるとショックだな。 「そりゃあね。やっぱ女の子は好きな相手からは自分だけ見てほしいって思うしさ。 千奈美が前によく言ってたよ。『たまにジミーっちが自分のこと好きか分からなくなる』って」 うぐ…耳が痛いな。清水先輩にも似たようなこと言われたことあるな。 『俺を好きになった人は独り占めできないから大変だ』って。 それが証拠にちぃのことも随分悩ませてたんだよな。 「ホントは俺だって好きでちぃや熊井ちゃんのことを傷つけたわけじゃないよ。 何ていうか…できれば傷つけたくだってないし。 例えばちぃじゃない女の子から誘われたとして、でもそれを断ったら可愛そうだって思っちゃうんだよね。 でもそれを受けるってことはちぃにとってみれば浮気、っていう風になるし」 前にあったな。菅谷を遊園地に誘って、ちぃを誘わなかった、って泣かれて。 そのときも須藤さんに助けてもらったっけ。ラーメンは奢らされたけどw 「正直、誰を優先したらいいのか、どう断ったらいいか分からないんだよね。 結局、みんなの誘いを受ける、それが浮気になるんだよな…」 気付いたら俺は須藤さん相手に自分の悩みというか独白をぶちまけてた。 もちろん、誰に浮気したとか、そんなことまでは言ってないけど。 「…ハァ、ホントに馬鹿ね、ジミー君って」 「なっ、バカって!」 「傷つけたくないからって全部の誘いとか受けてたら、いつか爆発しちゃうでしょうが。 前に千奈美とみやと3人で保健室でジミー君殴ったのだってそういうことでしょ。 そんなちょっと遊びに行く約束他の子の断ったって死ぬわけじゃないんだから、ホントに一番大事な子見てあげなきゃ」 「一番大事な子、かぁ…」 須藤さんは強いよなぁ。間違った方向行きそうになったらガツーンって方向修正してくれそうだし。 1.「でも俺、今誰が一番大事か、分かんないよ…」 2.「絶対女の子泣かせないって約束したし、俺、ちゃんとするよ」 3.「もし須藤さんが俺の彼女だったら、絶対俺浮気なんてしないだろうねw」 「でも俺、今誰が一番大事か、分かんないよ…」 ちぃのことだって好きだし、雅ちゃんも愛理ちゃんも桃子先輩も舞美先輩も清水先輩だって 梅田先輩だって熊井ちゃんだって… 「ホントに情けないわね…千奈美もみやも何でこんな男を…」 正直、俺もたまにそれは疑問に思うもんな。 「ジミー君は私と同じかもね。好きな子や興味ある子が自分から離れてくのが怖いんでしょ。 私も桃子って先輩に言われたけど、同じ気がするわ」 「好きな子が離れてくのが…」 「女の子って、ジミー君が思ってるよりずっと強いんだから。 そりゃ浮気とかされたら傷つくけど、振られても立ち直ったりするのはけっこう早いし。 自分に気があるって思ってる相手が他の方向に行くのは傷つくけど、 自分に気がないって分かったらスパッと切り替えられるし。 中途半端に引っ張ってたら余計に傷つけるだけだから余計によくないわよ」 「なるほどね…」 確かに、一度付き合おうってなって、断ったあとの熊井ちゃんがそんな感じだったな。 ちゃんと結論出さなきゃなぁ…。 「ありがとう、いろいろ参考になったよ」 「どういたしまして」 「なんか須藤さんカッコいいね。何か彼女よりも俺彼氏にしたい感じw」 「微妙に失礼ね、それw」 こうしてシリアスな話の中にボケを入れちゃうのも俺ならでは、なんだろうけども。 そんな感じでシリアスな恋愛談義やら、誰が可愛いだとかどんなファッションがいいだとかの雑談から 授業の話やらで話し込んでるうちに、すっかり外は暗くなって、雨も上がっていた。 制服もすっかり乾いて、帰りはそのまま着ていけるようになったみたいだ。 「ホントにいいって、俺の服だし」 「いいから、洗濯して返すから、この服貸して?」 須藤さんはどうしても自分の家で洗濯して返すから、と貸した服を返さなかった。 「そんな須藤さんが着てたからって匂い嗅いだりしないからw」 「そんなことしないでよ!ヘンタイ!!」 「痛てぇ!」 余計なことを言ってまた叩かれてしまったりもしたけどw 自転車で須藤さんの家まで送っての別れ際。 「ホント今日はありがとね。長いことお邪魔しちゃったし」 「ま、あんな家でよければまた遊びに来てよw」 「んー考えとくwじゃあまた明日、気をつけてね」 「うん、それじゃ」 自転車にまたがって、家までゆっくりと漕ぎ始めた。 須藤さん、カッコいいなぁ…ああやって恋愛観ハッキリ言えるのはすごいよな。 付き合う人は大変だろうけどw クリスマスは…雅ちゃんとのパーティ、そしてちぃとのイブ。 まぁ…イベントだし、ここはどっちも泣かさないようにいい風に振舞っても…大丈夫だよな?