『来週の土曜日、ジミーの家に行ってもいい?できれば家族はいないといいんだけど』

早貴ちゃんのお誕生日(という名目での野外エッチ)の日に桃子先輩に言われたメールする宣言。
それがまさかこんなメールが来るなんて思いもしなかった。
まだ少し信じられない部分があってソワソワしてる。

何度もメールを見返した。
間違いない、来週の土曜日、つまり今日。
言われた通りに家族も追い出した。今の家には俺一人。
桃子先輩と二人きり。
まさか、まさか…ね?
桃子先輩から誘われるなんて…!
あぁもう桃子先輩ってば言ってくれればいいのに、そんなに期待してたなんて。
ああもう分かってます分かってますよ桃子先輩、皆まで言わなくても…

「何が分かってるの?」
「そりゃもちろん桃子先輩が」
「もぉが?」
「ってもももも桃子先輩!?」
ビックリした、いきなり目の前に立ってるんだもん。
ってか俺浮つき過ぎだな、まだ寒い冬だってのに玄関の前で待ちきれずにぼんやりしてるだなんて。
それでいて桃子先輩に気付かないだなんて。

「ねーぇぇ、何を知ってるの?ジミーはもぉのぉ、何を知ってるのかなぁ?」
「そ、それはですね…」
完全に油断してて意表を突かれたこともあって頭の中が真っ白だ。
下から俺の顔を覗き込んでくる桃子先輩の顔がまともに見れない。

1.桃子先輩が今日に期待してるってことですよ
2.そ、それより今日はどうしたんですか?
3.桃子先輩の今日のパンツの色ですよ 



遅くなりました
2で! 


3w 



「そ、それより今日はどうしたんですか!?」
「あ、なんかいま話はぐらかそうとしたでしょー?」
「そそそんなことないですよ」
桃子先輩はいじられキャラのくせにこうして俺が弱点を見せるとお姉さんぶって見せてくる。
そのくせ俺が逆にいじろうとするとムキになって怒っちゃったりするときもある。
ヘタなことを言うとさらにまずいことになるはず。
「ふーん、まぁいっけど。お邪魔しまーす」
「はいどうぞ」
あまり深く突っ込まずに桃子先輩は俺の脇を通り抜けて玄関を開ける。
桃子先輩に見えないようにそっと安堵のため息をひとつ。

「久しぶりだねジミーんち、今日はジミーのパパとママは?」
「いませんよ、桃子先輩がいないほうがいいっていうから」
「ホントに?じゃあ今日ジミーだけなんだ、ふーん…」
桃子先輩はまっすぐ俺の部屋に向かうかと思いきや、リビングを覗いたり階段を登る途中で1階を見下ろしたりとキョロキョロ落ち着きがない。
まるで他に誰かいないかを確認してるみたいだ。
そんな桃子先輩の後について階段を上り、俺の部屋に向かう。
ちなみにミニスカートの中は…ピンクw

「うわー!ジミーの部屋久しぶりだねー、全然前と違う」
「模様替えしましたからね、ちょっと前なんですけど」
「ふーん…」
「ところでさっきも聞いたんですけど、桃子先輩今日なんでウチ来たんですか?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてませんよ」
「ふっふっふ…さて何ででしょう?しんきんぐたーいむ♪」
もったいぶって指を顔の前で揺らし(ちょっと古くないですかその仕草)、ニヤニヤと俺の顔を見つめてくる。
当てろってことですか?ああ分かりましたよ、当てますよ!

1.バレンタイン…とか?
2.早貴ちゃんのことですか?
3.男の家に来るなんて答えはひとつだ 



2で
3と行きたい所ですが失敗しそう 


1にしとく 



桃子先輩が考える俺のほうを見ながら楽しそうにニヤニヤしてる。
俺が答えが分からないのが本当に楽しいんだろうな。
消してやるぜそのニヤついた笑みを!

「早貴ちゃんのことですね?」
「早貴ちゃん?誰それ?」
「あれ?違うんですか?」
「佐紀ちゃんなら今ごろ受験勉強真っ最中じゃないの?」
どうやら違うらしい。
てっきり桃子先輩がこないだのコンビニに来た早貴ちゃんのことで何か言いにきたのかと…
「あ、もしかしてあの子?こないだジミーがコンビニに連れてきた?」
「そうなんですけど…」
「カワイイ子だったよね、なかなかジミーも隅に置けないんだから♪このこの♪」
「はぁ…あ、そういえば桃子先輩、こないだ早貴ちゃん…のこと、どう思いました?」
「どうって…普通じゃない?ジミーに話しかけたらいきなりお店出てったからちょっと人見知りされたかなーとは思ったけど」
良かった…どうやらあのときの全裸事件は桃子先輩にはやっぱりバレてなかったらしい。
知らないのにあんなこと偶然で言えちゃうんだから凄いよなぁw
いやでも早貴ちゃんのことでもないらしい。
だとしたら残る可能性は…

「もしかして…バレンタイン、とか…?」
「おぉぉ!?」
パァッと桃子先輩の顔が明るくなる。どうやら正解か?
まさか桃子先輩からもらえるとは思わなかった。
バレンタインには何日か早いけど、わざわざ持ってきてくれるなんて。
一時期は嫌われたかと思ったこともあったし、ホントに嬉しいよ。

1.そのカバンに入ってるんですか?
2.早くくださいよ
3.別にくれるのは桃子先輩でもいいですよw 



1! 


きてたあああ!!!

1 



「そのカバンに入ってるんですか?」
「うん、入ってるよ、チョコレート」
「ホントですか!?」
wktkが止まらない。きっと今の俺の表情、ニヤけてすごいことになってると思う。
そんな俺の表情を満足そうに見た桃子先輩が、もったいぶったしぐさでカバンに手を伸ばす。
チャックを開け、中から包みを取り出す。
俺がそれに手を伸ばす――

「じゃあ始めよっか」
「あれっ」
「ジミー、キッチン借りるね」
「ちょ、桃子先輩!?」
俺の手が包みにかかろう、というところでサッと身をかわした桃子先輩がいきなり立ち上がる。
バランスを崩した俺はコントみたいにずっこける格好だ。
そんな俺をちらっと見ただけで桃子先輩はドアを開けて部屋を出て行ってしまう。
慌てて立ち上がり、桃子先輩を追いかける。

「あの…桃子先輩?」
「んーなにー?」
「…何をしてらっしゃるんでしょう…?」
「チョコ作ってるの、分かんない?」
階段を降りてリビングダイニングに移動する。
そこで見た桃子先輩はというと、キッチンに向かってボールやら鍋やら取り出してる。
包みから出てきてるのは手作りチョコのキットなのか、チョコレートを作る道具?
桃子先輩に聞いてみるけど、答えは見たままの答えで。
「いやそうじゃなくて、なんでウチで…」
「やーなんかさ?うちの弟が『バレンタインの桃姉ちゃんのチョコは手作りがいい』なんて言うからさー」
「じゃ、じゃあそのチョコは…」
「弟の、作ろうと思って」
いやあの…桃子先輩? 

「い、一応聞いてみますけど…俺のチョコとかは…?」
「ないけど?」
「ないけど、って…」
「その早貴ちゃんにもらえるんでしょどうせ」
桃子先輩は表情ひとつ変えない。というか準備に夢中でこっちもあんまり見てない。
………なんだろう、この脱力感と敗北感は。

1.俺にもくださいよ!
2.よそでやってくださいよ!
3.このブラコン! 



31 


3と1
食パンで作るアレですかw 



「俺にもくださいよ!」
「やだ、別にもぉジミーにあげたいって思わないもん」
「何でですか!?」
「だってジミー別にもぉの彼氏とかじゃないし」
納得いかない、納得いくわけないじゃないですか!
俺んちに来て、俺の目の前で作るチョコが俺のじゃないなんて!
俺と桃子先輩の仲じゃないですか!彼氏じゃないってそんなつれないこと言わないでくださいよ!

「そんなことないじゃないですか!俺は桃子先輩の『居場所』じゃないんですか?」
「もぉの居場所は楽しいバイト先ですー、結局ジミーあんなこと言ってメールもすぐしなくなったし」
「それは…」
言葉に詰まる、というか悔しいけど否定できない。
桃子先輩を俺のことでいっぱいにする、なんて大口を叩いたカラオケ。
あれから数ヶ月、一時期はものすごい頻度でやり取りしてたメールもどんどん数が減り。
桃子先輩の中に占めてた俺の比率はじりじりとバイトに追い出されようとしてるっぽい。

「だ、大体弟に手作りチョコなんておかしくないですか!?」
「別にー、もぉ弟大好きだし」
「ぐっ…桃子先輩のブラコン!」
「はいはい、もぉはジミーよりも弟のほうが大好きだからー」
何を言っても敵う気がしない。というかこっちにも非があるから強く言えないのも悔しい。
このままじゃいけない。
身内の家族にチョコの本命度で負けるなんて、男として、桃子先輩の初めてをもらった男としてのプライドが許さない!

けど今の俺にできることは桃子先輩へのささやかな嫌がらせだけ!

1.スカートの中身覗きまくってやる
2.隠れて桃子先輩の様子を伺おう
3.自分も手作りチョコセット買ってきて隣で作るとか 



2で 


そうきたかw
裏があると思ったらこりゃまたきつい一撃

2 


2でいいかと 



「じゃ、じゃあ好きにしてください!俺ももう知りません!」
「はいはーい、言われなくても好きにさせてもらいますー」
悔しいけど、口ゲンカで女の子には勝てない。
だけど桃子先輩、正直俺、カチンときちゃいましたよ。
ちょっとぐらいイタズラしても怒られないと思う、っていうか怒らせやしませんからね。
リビングに桃子先輩を放置し、玄関に向かう。

「ちょっとくらい脅かしたってバチは当たらないはず…」
玄関で自分の靴を回収し、下駄箱にしまう。
これで俺が隠れれば、俺はこの家の中にはいない、と思うはず。
適当に隠れて桃子先輩がどんなことするか観察してやろう。
部屋に戻って、クローゼットの中に隠れる。わざとドアはあけっぱにして下の様子は聞こえるようにしておく。

「ねぇジミー?おたま使いたいんだけどどこー?」
「………」
「ねえちょっとジミー!?」
桃子先輩が俺を探してる声が聞こえだした。
スリッパでパタパタと、俺を探してる様子が聞こえる。
「トイレー?ねぇジミーってばー、いないのー!?」
「おっかしいな…怒って出てっちゃったかな?」
「あれー?部屋にもいない…」
階段を上り、俺の部屋を覗き込む桃子先輩。
部屋を見回し、俺がいないか探してる。
ケケケ…ドア1枚隔てたクローゼットの中に隠れてるとは思うまい。
そして桃子先輩が俺に言い逃れできない決定的瞬間を押さえるためのトラップを部屋には用意した!

1.無造作に放置したエロ本・DVD
2.俺の携帯
3.ヘビのオモチャ 



2で 


どれが正解なのか想像つきませんが
1で 


2かな? 



「ったく…どこ行ったのジミー…」
ぶつぶつ言いながら携帯を取り出し、電話をかけ始める桃子先輩。
たぶん俺がどこにいるか、電話してみようと思ったんだろう。
でも…残念。

 ブガガガガガッ、ガガガガガッ

「ぅわ!?ビックリしたぁ…」
部屋のテーブルの上でバイブで震えて音を立てる俺の携帯。
そう、桃子先輩のかけた俺の電話は桃子先輩の目の前で鳴ってるわけで。
目の前で携帯がなった瞬間の桃子先輩のビックリした顔!
笑いを必死でこらえながらそんな様子を覗き見る。

「…ジミー!?どこー!?」
「……いないのー!?」
「………」
ふと、電話を切った桃子先輩が黙り込む。
そのまま、廊下のほう、人の気配がないことを確認して俺の携帯を拾い上げる。
くるかくるか…きた!
桃子先輩が俺の携帯を開き、その中身を覗き込む。
流石に人の携帯を覗き込むのはやましいのか、後ろを何度も確認しては、俺の携帯を操作してる。
自分で言うのもなんだけど、色んな子とメールやり取りしてるし、気にはなるだろうな。
あ、ちなみにそんなメールはみーんなメモリーカードに退避して抜いちゃってるけどねw
だからその携帯にメールとかはほとんど残ってないですよ、桃子先輩w
そんな俺の思惑には全く気付かず、携帯の中を見てる桃子先輩。

1.「何してるんですか!?」
2.あれ…俺の携帯でメール作ってる?
3.え、泣き出した!? 



2で泳がせて1か? 


2かな 


2から3

桃子先輩切ない・・・ 



携帯の中にやましいメールはない。
早貴ちゃんとかのエロい写メもみんなパスワードかけて隠したし。
けど、桃子先輩が今やってる行為には、どんなことがあっても言い訳は聞かない。
…ってあれ?
桃子先輩が俺の携帯で何やらカチカチやりだした。
え、メールでも作ってる?
もしかしてそれ、まずくないか?
だって例えば、例えばだけど。
ちぃに「別れよう」なんてメールを『俺の携帯』から送れるわけだし。
そしてそんなメールちぃが見たら間違いなく本気にする。俺からのメールなわけだし。
やばい、躊躇してる暇はない!

「何してるんですか桃子先輩!?」
「ひゃぁぁぁ!?じ、ジミー!?」
「桃子先輩、何してたんですか!?」
「な、何もしてない、何もしてないってば!」
俺がクローゼットから飛び出すと、予想もしてなかったのかビックリした桃子先輩が文字通り飛び上がる。
でも何もしてないわけないじゃないですか、俺の携帯あんなに触っといて!

「……返してくださいよ、俺の携帯」
「…………」
しぶしぶ、といった感じで俺に携帯をつき返してくる。
何でそんなふて腐れてるんですか!俺被害者なのに!
「……ぅ、……ったもん……」
「え?」
「もうメール、送っちゃったし」

な  ん  で  す  と  ! ?

1.お仕置きしようそうしよう、性的に
2.桃子先輩の携帯も見せてもらおう
3.…帰ってください 



展開早くしとかないとな
1 


桃子先輩カワイソス・・・
3はバッドエンドになりそうだからやだ

2 


2かな
つーか送信メールの確認しろよw 


1か2を先輩に選んでもらうとかw 



最悪だ。もう何もかもおしまいだ。
桃子先輩に掴みかかり、そのまま押し倒してしまおう、そんな声が頭の中で響く。
けど、そんなことしたってどうしようもない。
ちぃに嫌われて、桃子先輩は俺から離れてくに違いない。
呆然と、何をするでもなく立ち尽くしたままな俺。

 ブゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン

携帯の震える音がする。俺が持ってる携帯じゃない、ってことは桃子先輩のだ。
桃子先輩の携帯にメール?が来たらしい。
外側の液晶画面を見るなり、中身も見ずに俺に携帯を突き出してくる。
「ほら、見ていいよ、もぉのも、これでおあいこ」
「別に俺は…」
「いいから!」
桃子先輩に携帯を握らされる。
ストラップのついたピンクの可愛らしい携帯。
こんなの今さら見たって…

『桃子先輩、今日もバイトお疲れ様。あんまり無理しすぎないでくださいね』

こんな文面で始まったメール、差出人は俺。
思わず自分の携帯を開き、送信メールの履歴を開く。
「…え? これって…」
「見りゃわかるでしょうが……」
桃子先輩がきまりが悪そうにぶっきらぼうに答える。

1.他のメールも見ていいものか
2.なんでこんなことを?
3.桃子先輩、頭大丈夫ですか? 



2に決まってます 



「なんで…こんなことを」
「…いいじゃん、別に……」
「よくないです、俺は携帯勝手に使われたんですよ」
「………」
桃子先輩の両肩を掴み、少し背中を丸めて桃子先輩と同じ目線の高さで覗き込む。
どれくらいそうしてただろう、目をそらして言い渋ってた桃子先輩がゆっくりと口を開き始めた。

「うちの弟、甘えてくるしもぉのこと大好きだけど、本音ではバイトとか好きじゃないんだよね」
「そうなんですか?」
「まだまだそんなおっきくないし、もぉが仕事って言っても自分といっしょに居てほしいみたいで」
「……」
「だからなんか、バイトから帰ってもあんまりお疲れ様とか言ってくれないし、おうちは好きだけどちょっとテンション下がるんだよね」
「桃子先輩…」
「バイトも好きだけどさ、なんかね、上手くいかないよね…」
ハッキリ言うと、俺の質問の答えには全くなってない桃子先輩の理由、というか言い訳。
でも言いたいことは何となく分かった気がする。
バイトは好きで、それでがんじがらめになるくらいに働いて。
楽しいけど、その苦労があんまりねぎらわれてないというか。
仕事が終わって、お疲れ様、と声をかけてくれる、そばにいる存在が欲しかったんだ。
それがたとえ、自作自演のメールだったとしても。

「言っとくけど!別にジミーからメールがほしかったわけじゃないからね!別に誰からでも…」
「嘘だ」
「やっこらジミー!?離して…ッ」
「イヤです」
抱き締めた腕の中で桃子先輩がもがく。けど腕を緩めるつもりはない。
今さっき届いたメール、俺のフォルダを作って振り分けられてた。
つまり桃子先輩、俺からのメールをそれだけ楽しみにしてたんじゃないか。
メールの頻度が減って、口では俺のことからかったりしてたけど、寂しくなかったわけがないんだ。
でもフレンドリーに見えて負けず嫌いでプライドの高い桃子先輩が自分から言えるわけもなく。
この前のカラオケのときももそうだった。意地でも俺の前では弱いところを見せない。
でも…もういいです、それ以上強がらないでください。 

1.キス、したい
2.バイト、やめてください
3.なんか焦げ臭い臭いが… 



1でお願いします 


桃子が報われてほしい・・・

2 



「桃子先輩……ンッ」
「ちょっとちょっとジm…ンン」
桃子先輩の頭をかき抱き、そのまま唇と唇を重ねる。
目を閉じる一瞬手前、桃子先輩が驚きに見開き、緊張のあまり引きつりかけてるのが見えた。
けど抵抗はされない。
唇同士が重なったままの長い長いキス。

「…もぉ、いきなりなんてことするかなぁ…」
「桃子先輩」
「な、何よいきなり…」
「バイト、やめてください」
「はぁ!?」
またしても桃子先輩の表情が驚きに染まる。
いきなりとんでもないことを言ってるのも分かる。
けど…桃子先輩は頑張りすぎてる。
「どう、して…?」
「桃子先輩が、辛そうだからです」
「ばっ、ばっかじゃないの!? もぉは楽しいからバイトしてんの! 大体なんでジミーがそんなこと…!」
「桃子先輩のことが好きだから、じゃダメですか?」
「…ッ」
離れようと俺の胸を押す桃子先輩の身体が固まる。
ワンテンポ遅れて白い肌が真っ赤に染まった。

「ばっ、ばっかじゃないの!? もぉが何しようがじ、ジミーには関係ないし!
 あーもうこんな時間!チョコ作るよチョコ!」
「桃子先輩!」
「聞こえない!あーあー聞こえなーい!」
耳を塞いだまま桃子先輩は部屋を飛び出して階段を駆け下りていってしまった。
唇にはまだ桃子先輩の唇の感触。 


「桃子先輩…」
「うるさい!話しかけないで失敗するから!」
「だって混ぜてるだけ…」
「いいから黙ってて!喋ったら罰金ね!」
様子を見に下に降りてもずっとこんな調子。
まともな会話にもなりゃしない。
けど、桃子先輩の照れ隠しなのはバレバレだ。ずっと顔は真っ赤だったし。
その証拠に。

「はいこれ作りすぎたから、キッチン使わしてもらったし」
「え、でもさっきは俺の分ないって…」
「いいから!いらないなら別に食べなくていいから」
「そんなことないです!大事に食べますってば!」
弟くんのために、って作ってたチョコ、型に流し込んで固めて作った分の半分を包んで俺に押し付ける。
桃子先輩からのバレンタインチョコ、もらえるなんて思ってなかったし。
結局今日最初から最後までまともな会話ってしてない気がするんだけど、それでも楽しかった。
何より桃子先輩の本心を知ることができたし。

ホントに桃子先輩がバイトを辞めるかなんて分からない。
けど、バイトを辞めなくても桃子先輩の頑張り、俺は見てますから。
だから、桃子先輩も、もっと俺を見てください。