「先輩、さっきからそわそわしすぎですよ」 「これが落ち着いていられるか!あのな、一生に一度きりの出来事なんだぞ」 「しゃべるか歩き回るかひとつにして下さい」 こんな時でも生意気な後輩にチョークスリーパーをかまして、その時を待っていた。 今はお色直し中だよな、いったいどんな姿なんだろう。 「期待しててね」と義母さんは言ってたが果たしてどんな姿を見せてくれるのやら。 ・・・長かったな、本当に色々あったぜ。ここに来るまで ついに・・・ゴールか。正直まだそんな実感が無いぜ。 むしろ新しい始まりだと思うんだよな。絶対これから大変だぜ 「先輩貧乏揺すりはやめてください、みっともないですよ」 「うるさい!おまえにはこの気持ちがわかんないんだよ」 「気になるんでしたらそっと会いに行ってみたらどうです?」 1 そうだな、行こう 2 一緒に来てくれないか? 3 男は、いや新郎は黙って待つ! 「いや、男は黙って待つ」 「そうですか。それがいいと思いますよ。気を落ち着かせた方がいいです」 「そうだ。新郎は黙って花嫁を待つのだ」 きっともうすぐあいつは俺の前にやってくる。そう・・・美しい女神となって ・・・女神?我ながらなんときもい言葉を使うんだ。いや、それは失礼じゃないか? これから生涯をともにする大切な人への言葉をきもいだなんて、いくらなんでもそれは いやでも俺の口から女神とかそういう例えは気持ちが悪いだろ。うん、気持ち悪い。 「うるさいですよ先輩!思ってることが口から出てませんか?」 「・・・あ、ああ、悪いな。知らない間にしゃべってたのか」 「失礼ですけど本当先輩って大事な局面だと危なっかしいですね。大丈夫ですか?」 「俺はいたって平気だよ。うん、大丈夫」 「・・・靴、逆ですよ。はいてて気が付かなかったんですか」 はっ!後輩の前でなんという無様な!しかも結婚式の日に! 履きかえたらノックの音がした。誰だ? 1 おおっ・・・め、女神が舞い降りた 2 か、母さん?!脅かすなよ 3 か・・・栞菜ちゃんじゃないか、どうしたの? ドアをあけたら・・・そこには正装した母さんが立っていた。 「か、母さん?!びっくりした、誰かと思ったよ」 またちょっと痩せたんじゃないかな。俺としてはもう少しふっくらしてた方が好きだけど 「ふふっ。やっぱりね、ほらこんな汗かいて」 「な、なんだよ、自分で拭けるから」 ハンカチで俺の汗を拭いてるその表情、なんだか懐かしい。 「△△さん、またこの人ソワソワしてたでしょう。ずいぶん歩き回ってたのね」 「そうなんですよ須藤さん、この人相変わらずで・・・いたっ」 後輩の頭をこづいてから母さんに聞いてみた。 「もうお色直しは終わったかい?」 「うん、呼びに来たのよ。さあ行きましょう」 母さんに連れられて部屋を出て目的の場所に案内してもらう。 「・・・やっぱりあなたは選んだのね」 「ど、どうしたんだよ急に」 不意に立ち止まり、ちょっと低い声で話し掛けてきた。別に不機嫌そうな感じではない 「・・・・・・心配なの。あなたがうまく守れるか」 「なんだよ。俺だってもう一人前なんだぞ。ちゃんと守ってみせるさ」 ・・・母さんは笑って、それなら安心ねと言った。 だけど・・・なんだか寂しそうに見えたのは、気のせいだろうか? 「この先にいるわ。いってらっしゃい」 ぽん、と俺の背中を押してくれた。ちょっと強めだな 「ああ、いってくる!」 階段をのぼりその部屋の前まで来たが、なんとまだお色直し中。なんだよ・・・っ 仕方ないので窓から外を眺めて待つことにした。 ・・・もう・・・何年経ったんだろう。 初めて会ったのはまだ俺が二十代中ごろ、あいつはまだ十代だったな。 ってまだ俺は二十代だよ。まだギリギリ二十代だ。 何回殴られたっけ。怒らせた俺が悪いんだけど・・・少しは手加減してほしかったなぁ あいつと何回・・・エッチして、何回泣かせて・・・そして何回、笑ってくれたかな。 ¨ガチャ¨ ん、開いた? 部屋の方を振りかえるとそこには・・・ 「・・・あ、いた」 「・・・・・・!」 う、うわあ・・・すっげぇ綺麗だ。やば、直視できないわ//// ・・・美しすぎる 「なに顔赤くしてんの?もしかして照れてる?」 その笑顔はいつもと変わらないはずなのに・・・うう//// 1 素直に綺麗だと言ってしまえ! 2 よ、よう、顎 3 綺麗だけど胸だけが残念だな まっ白いウェディングドレスを身に纏う雅ちゃん。 ・・・言葉を失うってこういうことか。本当にただ綺麗だとしか思えないよ 「・・・き、きれ・・・」 「え?何か言った?よく聞こえないよ」 ああっもう、言えるはずだ。今の俺なら素直に。 「綺麗だ!!」 「うえっ?!なな何よいきなり、びっくりしたじゃん////」 はー、はー、はーと口から熱い息しか出てこない。 「もうお色直しはおわったよな!いくぞ!」 「なっ何よ?ちょ、きゃあっ!離してっ」 照れ隠しのためか、俺は雅ちゃんをお姫様抱っこして式場へと向かった。 あれ?たった二人でいくんだっけ?まあいいか、身内だけの結婚式だ。 「・・・前に見た夢とちょっと過程が違う」 「え、なんか言った?」 「なんでもない」 いきなりお姫様抱っこで教会の祭壇へ入ってきたからみんなは驚いていた。 「な・・・何あれ?手をつないで入ってくるはずじゃ」 「パパしっかりして〜〜」 「もう・・・相変わらずなんだから」 や、やめろ、そんな目で見るんじゃないよ 「ばか・・・」 「雅ちゃん、もっと甘えて。ぎゅうって抱きついて」 あいたたた!ちょ、こめかみをぎゅうってしちゃだめ! 神父さんは笑っていた。ってあれ?なんで目元が隠れる様な帽子をかぶってんだ 「おほん!えー、めんどいからそのままでいいです」 やけに声が高いんだな。なんかどこかで聞いた様な声だが 「えー、 、あなたは人生において、健やかなる時も、病める時も、夏焼雅を愛すと誓いますか?」 ああ、当たり前だ。どんな時だって雅ちゃんを想う気持ちは変わらない。 「はい、誓います!」 「・・・声が小さい」 「は?」 「声が小さい!あなたの雅への愛はそんなものですか?」 いきなり神父さんが帽子を取っ・・・お、おまえは、えりか?! 「言っちゃえよ。愛してるぞって、な?」 「え、えりか、本物の神父さんはどこだ」 「いいからいいなよ。ほら、みんなが見てる前で」 つ、机にならんで座るのはベリキューの12人と、後輩と、あと・・・皆の家族//// 「早くしなさい。神様を待たせるんじゃありませーん!」 えりか・・・おまえ・・・ みんなも黙ってじっと俺たちを見つめている。 い・・・言うのか、ここで 1 逃げよう、二人で 2 わかったよ!言ってやる!愛してるぞ、雅ぃぃぃ!! 3 まずえりかをしばく、話はそれからだ 「ま、待てよえりか・・・そんなの」 「言えないの?やっぱり愛してないのね」 「違うっ!!俺は」 ・・・そうだ。梨沙子、母さん、桃子、佐紀ちゃん、千奈美、友理奈 ・・・舞美、早貴、愛理ちゃん、千聖、舞、栞菜ちゃん ちゃんと見ててくれ。聞いてくれ、俺の誓いを 「愛してるぞ、雅ぃぃぃぃぃぃぃっ!!」 言った。みんなの前で 「わ、私も・・・愛してる。愛してるよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 雅ちゃんも俺に負けないくらいの声で叫んでくれた。そして顔を真っ赤にしちゃった、耳まで赤くなって 「お幸せにぃ〜!」 舞と千聖が席を立ち、俺の尻をひっぱたいた。い、痛いなもう 「私たちの分も頑張って!!」 すると舞美も立ち上がり同じく俺の尻を・・・痛い! 「もぉ〜〜!見る目がないねぇっ」 桃子が走ってきて俺の頭をぱんぱんひっぱたく わっやば、次々と立ち上がってきたぞ。このままじゃ無事にはすまない 1 ・・・逃げようか、雅ちゃん 2 いったん雅ちゃんをおろして戦う 3 えりかなんとかしろー!おまえのせいだ! や、やばい。このままじゃ袋叩きにされそうだ。雅ちゃんは不安そうに俺を見上げてくる。 「雅ちゃん」 「・・・な、なに?」 「逃げよう」 「ちょ、きゃあぁああっ?!」 雅ちゃんをお姫様抱っこしたまま走りだす。 「逃がさないかんなぁっ!」 「ガーッと追い掛けるよ!」 「ケッケッケッケッケッ」 「もぉ〜♪逃がさないですよぅ、ウフフフフフ」 つ、捕まったら大変だ。もっと速く走らなくては!! 「・・・・・・」 雅ちゃんはまだ不安そうな顔をしている・・・だめだ、ここで不安にさせちゃいけない。 「心配ないよ・・・大丈夫」 教会の入り口を抜けたが、まだみんなは追い掛けてくる。 「こらー待ちなさ〜い!」 「先輩待ってください、式の途中ですよ!」 外も安全じゃないか。そもそもなぜ逃げてるんだ? ・・・雅ちゃんをここから連れ出したかったからか、二人になりたかったからか 理由は・・・どっちもかな。きれいな姿を独り占めしたかったからか 1 ここからは二人で走ろう 2 まだ雅ちゃんをお姫様抱っこして逃げる 3 ちゃんと式を挙げてから逃げようか そっと雅ちゃんを下ろして、その手を握る。 「ここからは二人で走ろう」 「どこにいくの?」 「・・・あそこ」 俺はあの場所を指差した。式が終わったあとにいこうと思っていた、小さな丘。 「と・・・遠くない?」 「二人でいくからむしろ時間がかかる方がいいでしょ」 横顔も綺麗だな。見とれてしまうよ 丘を登りながら俺はまた今日までの事を思い返していた。 あれだけ俺を殴り続けた手を、こうして握っている。そして・・・二人だけの場所をめざしている 「ちょ、痛いよ」 「あっごめん。強かった?」 「うん。強く握りすぎだよ」 ・・・いい風だ。雅ちゃんの白いドレスがなびいている。 「ふう、着いた」 丘の頂上に生えた一本の大きな木。ここを、ゴールにしよう 「意外と早く着いたね」 隣に腰を下ろし、俺をじっと見つめてくる雅ちゃん。 1 ここで誓いのキスをしよう 2 ぎゅっと抱き締める 3 ねえ・・・ここでしようか? 木に背を預けたまま、雅ちゃんを抱き締めた。 「・・・い、いい風だね////風が気持ちいい////だ、抱かれたら痛いよ////」 こんな時でも素直じゃないのが愛しいよ。 「俺、ずっと雅ちゃんを守りたいんだ」 「・・・うう////み、見つめないで・・・////」 白いドレスと対照的な、真っ赤になったその顔。 「・・・あ・・・っ」 誓いの口付け そっと雅ちゃんの頭を寄せて、俺からかわした。 エッチの時に何度もしてきたキスとは違う。一生をかけて守りぬくのを誓うキスだ。 「・・・あ・・・」 あれ・・・?雅ちゃん、泣いてるの? 「な、泣いてない!見るなぁっ!」 「いたっ。おいおい、結婚式なのに顔を殴らないでよ」 「う・・・嬉しくなんてないから!泣いてないもん!」 1 もう一度抱き締める 2 お姫様抱っこしてあげるよ 3 ・・・誰かそこにいるのか?一人や二人じゃない、もっと多い・・・ 抱き締めたい、君を。 「あ・・・んあっ、痛いってばぁ////」 こんなに華奢なんだ。そうだよ、力は強いけど君は女の子なんだから。 「心配なんてしなくてもいいよ。君を守ってみせる」 「きゃあぁあ〜////」 さらにもう一度お姫様抱っこをして立ち上がった。 「ほ、本当に大丈夫なの?いつだったか、意識がずっと戻らない時があったから」 「雅ちゃんのためなら例え死んだって生き返ってみせる、百回死んでも百回生き返るから!」 「・・・・・・」 雅ちゃんは目をおさえている。きっと、感情がこみあげてきたんだろう。 ・・・?! なんだ、いま何か音がしたぞ。誰かいるのか? ま、まただ。これは手を叩く音かな?一人じゃない、何人かいるな。 「おめでとう 、雅ちゃん」 「教会じゃなくてここで告白なんて、似合わないよお兄ちゃん」 み・・・みんな?!どこに隠れてたんだ? 「やったね」 「え、えりか?!」 えりかの隣には・・・おそらく本物の神父さんらしき人がいた 「すまないね、どうしても神父をやりたいとえりかが言うから」 「ありがとうパパ」 え、えりかのお父さん?!まさかあなたが神父さんをやる予定だったとは 小高い丘でみんなに見守られながら大切な人を抱き抱えている。 「約束よ。自分で言った通り、しっかり守りなさい」 ああ、必ず守ってみせるよ母さん、いや茉麻。 「もぉはあきらめてないですよぉ。みやが油断してるところを狙いますから!」 め、目が笑ってないぞ桃子 「パパ・・・結婚しても私のパパでいてね」 友理奈、それはちょっと難しいかな。 「みんなの前で愛してるって言ったから、浮気したら大変だね」 千奈美・・・笑いながら言うな。怖いぞお前 「い、いつまでも幸せにね、二人とも」 佐紀ちゃんは涙を浮かべていた。ありがとう 「ねえパパ。りぃも抱っこしてぇ、順番だよ」 ・・・梨沙子、いつかおまえにも抱っこしてくれる人が見つかります様に 「マネージャーさん腕がふるえてるよ、鍛え方が足りない!」 こんな時でも変わらないな舞美 「雅ちゃん綺麗、キュフフ。お父さんに釣り合わないね」 さ、早貴、笑顔できついな 「お兄ちゃんほらほら〜」「うりうり〜♪」 あっはははは、ち、千聖、舞、くすぐるな!結婚式の時くらいおとなしく・・・ 「・・・雅ちゃん・・・ホントに綺麗だかんな。ジュル」 か、栞菜ちゃん、目が・・・寂しそうじゃなくてなによりだ。 「目隠し〜♪ケッケッケッケッケッ」 あ、あ、愛理ちゃん、手に力が入って、いたたたたた! 「お幸せにね、二人とも。でも注意してね、みんなまだあきらめてないから♪」 えりか・・・怖いぞ。冗談に聞こえない。 俺は雅ちゃんをずっとお姫様抱っこしていた。 離さないって決めたんだ、だから・・・いつまでもこのままでいたい いい風だな。空も真っ青で何もない、綺麗な空だ。 これからも大変だろうけど・・・君と歩いていきたい。 ゆっくりでいいじゃないか、歩く様に、1日1日を大切に・・・生きていこう