「ジミーちゃん、こうしてくっついてると恋人にみえるかな?」 「そうだな〜みえないことはないかも。前より舞ちゃんが大人っぽくなったし」 俺は舞ちゃんを送りに中等部の校舎まで来ていた。 すっかりデレモードになった舞ちゃんの変貌ぶりには驚かされる。 放置してた期間が長い分、こうして恋人みたいになると舞ちゃんのデレモードは凄まじい。 俺がちょっとくらいからかった程度では怒りもしなくなった。 あの舞ちゃんが天使になったみたいだ。 「ジミーちゃん、好きだぞ」 「舞ちゃんさ〜もうミニにタコになるくらい聞いたよ」 「舞がこんなに好きだって言ってるの嬉しくないの?」 「いや、嬉しいよ。でも、何か舞ちゃんらしくないっていうか」 「舞らしさって何?舞は好きな人にはこうなの」 がっしりと腕を掴まれ、俺を放すまいとしているようだ。 このままではちぃたちに少しの間出るって約束が守られるか怪しくなってきた。 「ねぇ、あそこで恋占いしてくれるって。いこう」 どうしよう、早く帰らねばならないのに。 1 ごめん、実行委員だし帰るねと断る 2 あれ、あのとんがり帽子に黒猫を抱いた女の子って… 3 げっ、携帯が鳴ってる。出るか 「わかった。舞ちゃんがそこまで言うならいこう」 「やった〜だからジミーちゃん大好き」 ここまできたら知るもんか、舞ちゃんとデートしちゃうからな。 俺は時間が来ていることを無視して、舞ちゃんとのデートを優先させた。 恋占いをやっている列まで近づいたとき、黒猫を抱いたとんがり帽子を被った女の子に気付いた。 あれは…菅谷か。 あいつ、何してるんだろう。 「恋占いはこちらでやってま〜す。相性をバッチリ占ってくれますよ」 客引きの仕事か。 目をあわせないようにしなきゃな。 「ジミーちゃん、相性をバッチリ占ってくれるってさ。ラッキーだね」 「う、うん…」 やべぇ〜菅谷がいるとなると、愛理ちゃんもいるな。 マズイ気がしてきた。 1 落ち着かないでいると「ゆ?ジミーだ〜」と発見されるはめに 2 順番になりいざ占いとなったとき、占いをしているのが… 3 腹が痛いとトイレに逃げる 逃げようか残るべきかとやっているうち、とうとう自分たちの番になってしまった。 もう逃げらないんだし、占いだけでもやって自分のクラスに戻ろう。 「占い、お願いしま〜す」 舞ちゃんがそれはそれは楽しそうに椅子に座り、仕方無いと自分も座った。 すると、水晶玉を前に占いをやっていたのは・・・愛理ちゃんだった。 「あ、愛理ちゃん」 「じ、ジミー先輩。しかも舞ちゃんまで」 「やっほ〜愛理。占いやってるんでしょ。ジミーちゃんと舞の相性チェックよろしく」 愛理ちゃんはじっと俺をみつめ、ちょっぴり隣に私がいたいのにって目を向けてくる。 何だかとても寂しそうだな。 悪いことしたな、愛理ちゃんに。 「では、この紙に自分たちの生年月日を記入してください」 「はぁ〜い。舞は・・・」 俺も自分の生年月日を記入し、紙を愛理ちゃんに渡した。 そして、占いの本をめくりだし、愛理ちゃんは「ふむふむ」と唸りだした。 「ど、どう?舞とジミーちゃんの結果」 「結果は」 1 バッチリで〜す、と謎の中国人らしき声で結果を言われた 2 こ、これは不味い相性ですね、すぐに別れて州´・ v ・)と付き合いなさいと言われる 3 結果は言わせたくない。水晶玉使わないんだね、とつっこんで話をそらす 「結果を言いますね。では、水晶玉に言ってもらいましょう。は〜」 『バッチリで〜す』 愛理ちゃんが水晶玉に手をかざし、掛声をかけるとどこからか声が聞こえてきた。 それも中国人みたいなアクセントで『バッチリで〜す』とか言ってたな。 「ジミーちゃん、やったね。最高じゃん。嬉しい」 「そっか。俺もホッとしたよ」 「愛理、またね。じゃあ、クラスに帰ろうっか」 「愛理ちゃん、またね」 「はい。先輩、あとでうちのクラスに寄ってください」 愛理ちゃんが去り際に言った言葉が気になるが、俺は舞ちゃんと一緒に占いをあとにした。 これは後日談なんだけど、占いの結果の種明かしをするとあれは誰がきても同じことを言うらしい。 何でも、留学生の中国人の子に日本語の練習になるから、とやってもらっていたそうだ。 ずっと同じことをいうのに何の疑問も持たないんだろうか・・・面白い中国人がいたもんだ。 「さて、舞ちゃん。そろそろここらへんでね」 「うん。ジミーちゃん、また会いにきてね」 舞ちゃんと名残惜しいが別れ、クラスに戻ろうとしていると、あちらこちらで人の話声が聞こえてきた。 1 中等部と高等部の生徒二人が体育館でダンスバトルをするらしいぞ 2 校庭でフットサルの大会をやっていて、そこで男の子みたいな子が頑張ってるらしい 3 高等部のお化け屋敷が大盛況で人手が足りないとかで、ジミーって奴みつけると懸賞金もらえるらしい 「聞いたか?うちのクラスの中島と高等部の巫女さんがダンスバトルだってさ」 「マジかよ。ってか、巫女さんがダンスできるのかw」 聞き耳を立てるつもりはなかったのだけど、つい聞き入ってしまった。 どうやら、話の内容からして早貴ちゃんと姉ちゃんがダンスするってことはわかった。 高等部の体育館を使ってダンスの大会開くと聞いていたが、それに参加するとはね。 しかし、姉ちゃんってダンスできるのか? 「体育館に人がわんさかいるらしいぜ。とにかくいってみるか」 二人が頑張っているとあらば、俺も体育館に行かねばなるまい。 さて、俺もとっとと二人の様子をみにいってみますか。 俺が体育館につくと、すでに外にまで人が溢れんばかりにひしめきあっている。 これでは中に入るのも難しそうだが、うまく中に入れないものかな。 1 あのメガネ使って、女の子に中に入れてもらおうとするか 2 無理いって、二人の関係者だから中に入れてと頼んでみるか 3 あ、文化祭の運営委員にお兄さんがいる。頼んでみようかな 俺は困ってしまい、どうにかして中に入る方法はないものかと悩んでいた。 そこへ忙しそうに通りすぎていく何人かの男たちの声がする。 「いいから。もう入りきらないんだし、とりあえずダンスバトルは始めたほうがいい」 「で、でも、先輩、見たいって生徒が見られないとなるとうるさいですよ」 「仕方無いだろう。時間があまりおして、他のクラスの出し物に人が集まらないのも困るんだ」 ふむ、なかなかのやり手が文化祭の運営を仕切っているようだ。 でもこの声どこかで聞いたことがあるんだよな・・・って、お兄さん。 「お兄さ〜ん。俺です、ジミーです」 「とにかくこの件は終わりだ。ん?あ、ジミーじゃん。どうした?」 「久しぶりっす。あの〜ちょっと頼みがあるんですが、いいですか?」 俺はお兄さんをちょっと借りて、体育館のダンスバトルを中でみられるよう手配してもらうことにした。 「ふっ、お前がこの俺を頼る日がくるとはな。俺は未来のお前の兄だからな、これくらいどうってことない」 「あ、ありがとうございます」 俺が一礼して中に入ろうとすると、足で通路を封鎖されてしまった。 「おいおい、お礼もなしに君はいこうっていうのかい。あのね、世の中はギブアンドテイクって決まっていてさ。 俺のお願いを聞いてもらえるかな? 1 舞美の汗をたっぷり吸いこんだ衣類すべてを持ってきてもらおうか 2 茉麻ちゃんと仲良くしたいんだけど、うまく誘ってくれよ 3 栞菜とデートがしたいな。お前、とりつけてくれよ 舞美の汗をたっぷりと吸い込んだ衣類をすべて持ってきてもらおうか」 な、何を言い出すんだろうな、この変態兄は。 このお願いとやらを聞き入れないと、俺は二人に会うことすらかなわないというのか・・・ そんなのは嫌過ぎる。 「お兄さん、家が一緒なんだからいつだって可能じゃないですか。別のお願いならいいですよ」 「いやだ。最近な、あいつはお前以外の男には触れられたくないんだとよ。乙女ってやつは変わるねぇ〜」 舞美先輩って一途でその上俺が浮気してるって知らないし、あとが怖い。 何とか舞美先輩には浮気をバレないようにしないとな。 一番知られたくないのはちぃと付き合ってることだけど。 「よし、了解してくれたか。では、いってらっしゃ〜い。楽しいひとときをお過ごしください」 「ったく。わかりましたよ。何とか汗まみれの衣類を手に入れてきますよ」 あぁ、二人を見るためとはいえ、舞美先輩に悪いことしたな。 聞けば、先輩はダンスバトルの曲を歌うことになっているらしい。 だから、汗まみれの衣類すべてを手に入れるのは簡単だろう、とのこと。 考えやがったな、あの男め。 俺はうまく楽屋に入れるよう手配してもらい、三人と会うことになった。 さて、誰から会うことにしようかな。 1 早貴ちゃん 2 清水先輩 3 舞美先輩 決めた、全然会ってなかったし早貴ちゃんからにしよう。 俺は『中島早貴様』と書かれた楽屋のドアをノックした。 「早貴ちゃん、俺だよ。入っていいかな?」 「あ、ジミー先輩。ど、どうぞ」 楽屋に入ると、早貴ちゃんは何やら携帯をいじくっていた。 ダンスバトル前だというのに、この余裕は何なんだろうか。 「ダンスバトルに参加するって聞いて、応援に来たんだ」 「そうだったんですか。嬉しいです。キュフ」 「何か携帯いじってるようだったけど、誰かにメール?」 「いえ。緊張してたんで、誰あてでもなく自分の気持ちを打ってたんです」 「そうなんだ」 「それより先輩、久々に会ったのに反応が冷たいですね。もっといつもみたいに抱きついてきてもいいんですよ」 早貴ちゃんはくすくす笑いながら、俺を誘惑する視線を送ってくる。 しかも衣装はきらびやかな色の露出℃の高いものだ。 とくに早貴ちゃんの細くてつるっとした生足がお尻近くまで丸見えになっている。 た、たまらんな・・・ 「出来ることはもうやったんで、あとは先輩の応援があれば勝てちゃうかな」 そ、そ、それは完全にきてってことなのか? 1 では、いただきます。と飛び込む 2 ストレッチした方がいいんじゃないの?ぐへへ、パンツパンツ♪ 3 や、やばいよ。隣は清水先輩だし 早貴ちゃんのデルタゾーンをみてみたくはないか? いいですとも。 あの中央にはどんな頂よりも素晴らしい光景が待ってるはずだ。 そうさ、お前を誘っているだろう。 うまく誘導すれば絶対みられるさ。 「早貴ちゃん、俺は君に絶対優勝してほしい。だから、ちゃんと応援したいしストレッチ手伝うよ」 「いいですよ。もうやれることはやったって言ったでしょ」 「いいからいいからジミーを信じて。さ、片足をもう限界まであげてみようか。グイッと」 もう仕方ないですね、と文句を言いながらも早貴ちゃんは片足をもって「どうですか?」と訊ねてきた。 今日は勝負ごとがあるだけに勝負パンツのオレンジか、素晴らしいな。 「そうそう。いいね〜その調子で反対側いこうか」 「は〜い」 素直でいい子だ。 同じものでも違う角度からみるとまたいいものだ。 「先輩、ちゃんとみてくれてますか?」 「みてるよ〜バッチリみえてる。君の開脚の素晴らしさに感動してたとこだ」 「ありがとうございます。これで優勝間違いないですね」 嬉しそうな早貴ちゃんをみてると、何だか癒される。 えっ、パンツに癒されたんじゃないのかって?ノンノンノン 俺は早貴ちゃんに癒されたんだ。 「頑張れ、早貴」 「あの〜お願いきいてくれますか?」 何だろうな 1 抱き締めてもらっていいですか? 2 ステージまでずっと手を握っていてほしいな 3 好きだっていってほしいです、キュフ 「抱きしめてもらっていいですか?」 恥ずかしそうにスカートの裾を掴みながら、早貴ちゃんは俺にお願いをしてきた。 そして、きわめつけは上目遣いときたもんだ。 「無理だったらいいんですけど・・・」 「無理なんかじゃないよ。わかった。俺でよければ抱きしめさせてもらいます。いや、させてください」 「先輩、嬉しいですぅ。キュフ」 俺は早貴ちゃんの華奢な体をそっと抱きしめた。 力強く抱きしめて早貴ちゃんが壊れないように、優しく。 「絶対に勝ちます。これで清水先輩に勝てる気がします」 「うん、頑張れ。応援してるから」 早貴ちゃんを見送り、俺はステージがみえるように観客席にまわって観賞することにした。 ステージ上から俺をみつけ、手を振る余裕さえみせ、早貴ちゃんはもう勝った気でいるみたいだ。 対して、姉ちゃんこと清水先輩はどうやら心配そうな顔さえみせている。 時間さえあったら、姉ちゃんの楽屋にもいったのにな。 「夏DOKIリップスティックいきま〜す」 舞美先輩の開始の宣言により、ついにダンスバトルが始まった。 両者とも開始早々、素人の俺でもすごいと言わざるをえないテクニックで激しく踊りだした。 こりゃ〜どっちが買ってもおかしくないぞ。 俺は二人のうち、どっちに投票しようかな・・・ 1 早貴ちゃん 2 清水先輩 3 あえて舞美先輩 どっちにも勝ってほしい。 早貴ちゃんも姉ちゃんも大事だからこそ、俺はどっちかなんて決められない。 でも、勝負は勝負だ。 だから、どっちかが勝って、どっちかが負ける。 俺はどっちにすればいいのか悩み、二人のどちらの名前も書けそうにない。 う〜ん、困った。 「おい、真ん中で歌ってた子可愛くないか?」 「そうだな。あの子の名前書いちゃうかw」 「お前は中島ってほうが可愛いっていってたじゃねぇかよ。浮気者だな」 「ふざけるな。お前こそ、清水って方がいいって言ってたんだからそう書けよ」 舞美先輩の名前を書くか。 いい考えだな、そうしてしまおうかな。 よし、決めた。 舞美先輩って書いちゃおうっと。 ”あらあら、どっちかに選べないからってそれはいけないんじゃないかしら” う・・・こ、この声は・・・まさかのあの声だ。 やめてくれ、俺をそうやって混乱させるのはよくないぜ。 ”ねぇねぇ、私なら涙をのんでどっちかの名前を書くわよ。いいじゃない、負けた方は慰めてあげれば” よし、じゃあ今度こそ名前を書くぞ 1 早貴ちゃん 2 清水先輩 俺は中島早貴と早貴ちゃんの名前を書いた。 ”あらあら、もう一人のさきちゃんはかわいそうね。これで負けたりしたら、ショックでしょうね〜” 「あんたは一体どっちに勝ってほしかったんですか?」 ”どっちでもいいじゃない。それに私は誰の味方でもないわ” まったく、この声の主は俺をからかって楽しんでるだけじゃないのかって気がしてきた。 とんだ悪霊だぜ。 ”聞こえてるわよ。誰が悪霊ですって。私は悪霊ではないの。近いものはあるけど” 「うるさい。とにかく、俺は早貴ちゃんに投票したんだ。ほっといてくれ」 そして、委員会の人間が紙を回収していき、ついに結果発表となった。 「皆さん、それでは結果の発表です。勝利は中等部、中島〜早貴さぁ〜ん」 ステージ上で拝むように祈っていた早貴ちゃんが、顔を輝かせとびはねた。 相当嬉しいみたいだな。 逆に隣の姉ちゃんの暗い顔はみるにたえられなかった。 姉ちゃん、ショックなんだな。 ”なら、あなたの出番じゃない。さぁ、楽屋に行きましょうよ。ね” ちくしょう、こいつの言う通りに行動するのもまたしゃくだな。 しかしな〜傷ついた姉ちゃんをほってはおけないし。 1 姉ちゃんの楽屋に慰めにいこう 2 ん?なんだ、全校放送がはじまったぞ・・・ 3 早貴ちゃんに投票した俺にあわせる顔なんてない。また後にしよう 姉ちゃんの楽屋に慰めにいこう。 姉ちゃんとも久々だから、ちょっと落ち着かなくなってきた。 「あ、あのぉ・・・姉ちゃん?俺、ジミーですけど。入ってもいい?」 「え・・・だ、ダメ。今日だけはダメ。来ないで。泣いてて酷い顔してるもん」 「で、でも、すげぇ気になってさ。お、俺はさ、ダンスバトルで姉ちゃん最高だったと思ってるよ」 「そうかな・・・だって、私負けたんだよ。負けたのに最高なわけないじゃん」 姉ちゃんのショックは俺の想像以上に大きいらしい。 泣き顔くらい俺は酷くたって気にしないし、姉ちゃんの泣き顔なら酷いわけがない。 だけど、姉ちゃんは固く閉ざしたドアを決して開けてくれようとはしてくれない。 「姉ちゃん、開けてくれ。お願いだ。俺に出来る事なら何でもするから」 「今日だけはお願いダメなの。また来て。そうしたら、ちょっとは私も楽になってるから」 あ〜もどかしい。 無理にでもこじあけていってしまいたい。 なのに、このドアがとても重く大きく感じて開けられない。 そんな緊張していた俺に、ちぃの声が降ってきた。 「全校生徒の皆さん、こんにちは。私、一年●組の徳永千奈美と申します。え〜皆さんに協力してほしいことがあるのです。 うちらのクラスの実行委員のジミー君が行方不明となっております。そのジミー君を皆さんの力で探してほしいのです。 みつけた方には何と賞金1000円が贈られます。よろしくお願いします」 ・・・何だったんだ、今の放送は・・・ しまった・・・俺ってば、実行委員だったんだな。 うわぁ〜約束の時間なんてとっくに過ぎてるよ。 姉ちゃんのことも気になるのに、クラスにも戻らないといけないなんてな・・・ 1 ええい、開き直ってやる。姉ちゃんを慰めるのが先だ 2 姉ちゃんが「いいよ。ちぃたちを大事にしてあげて」と行くように言われる 3 ミスコン出場予定の梅田先輩が通りがかって慰め役を買ってでてくれる また姉ちゃんをほったらかしにしてしまうなんてしたくなかったのに。 なのに、姉ちゃんは俺に「いいよ。ちぃがああ言ってるんだし、いってあげて。私、今は君にあえないもん」と弱々しく囁いた。 「ほら、いって。ここにいると捕まっちゃうよ。ね、いって」 「ご、ごめんね。俺、あとで絶対に会いに行くから。絶対だから」 「うん、待ってるね」 やっぱり別れ際も弱々しい声で、そのショックぶりが伝わってきた。 俺はここは無理にいっても姉ちゃんを傷つけるだけだと、諦めて教室に戻ることにした。 が、そうはいかんざきなのが、さっきの放送の効果だ。 何と、俺を探そうとやっきになっている生徒たちで溢れ、簡単には教室に戻れなさそうだ。 ”面白そうなことになってるじゃない。よかったわね、追いかけっこができそうよ” 「えぇ〜い。うるさい。あんたも俺が無事に帰れるように手を貸してくれ」 ”そうね〜カチューシャを被せる相手をみつけてくれたらいいわよ” 「そのみつける前にどう俺を教室まで無事に帰す方法をみつけてくれるんだよ」 ”それはみつけてくれてからよ。さぁどうする?” 1 自分の悪魔がささやき、女ならいくらでもいるんだ。ここはこいつに任せてみろよといってくる 2 胡散臭い奴なんて信じるもんか。俺は自分の力で戻るぞ 3 困っているところに栞菜ちゃんがやってきて、先輩こっちと引っ張っていく もう悪魔なんかに頼りたくもない。 俺は自分の力で切り抜けるんだ。 「こ、断る。あんたには頼らない」 ”いいのね?せっかく力になってあげられた人を無碍にするとどうなるか教えてあげるわ” 『ま、まて。あんたの力を借りたい。この馬鹿のいったことは取り消す。だから、ここはひとつ頼む』 ”ふふっ、いいわよ。もうはじめからそう言いなさいよ” あれれ、おい、俺の意見は無視かよ。 くそっ、あの悪魔の野郎め、何だってでしゃばってきやがったんだ。 『馬鹿。ここはこの女の力を素直に借りておけ。女ならいくらでもいるんだ。その方がいい』 「で、でも・・・」 『でもじゃない。いいか。今のお前に無事に帰れる方法は思いつかないだろうが』 ちくしょう、こいつの意見が珍しく正しい。 女ならいくらでもいるってのがひっかかるけど。 ”さて、準備はいい?コウモリのカチューシャを女の子に被せなさい。私は被せた相手を操れるんだから” 操ってどうするつもりかは知らないが、相手をここでみつけないとだな。 誰にしようかな・・・と悩んでいる俺の前にあの子が 1 岡井ちゃん 2 熊井ちゃん 3 雅ちゃん 「み、雅ちゃん・・・」 「ジミー君。こんなところにいたんだ。さっき、ちぃが放送流したでしょ。早くクラスに戻ろう?」 「う、うん」 ”ほら、早くして。あの子が知りあいならやりやすいじゃない。さ、被せて” 受付のメイド服のままの雅ちゃんに、このカチューシャは似合いすぎるくらい似合うだろう。 だからこそ、被せた後でエッチな方面にいかれると怖いものがある。 この悪魔ならやりかねないからな。 教室に戻るどころじゃなくなりそうだぜ。 「どうしたの?」 「う、ううん。何でもないよ。あ、あの〜ちょっと雅ちゃんに似合うかなと思って買ったものがあってさ」 「ほ、本当?嬉しいな、君がそういうことしてくれたことなかったから」 はにかむ雅ちゃんに申し訳ないけど、俺は彼女の頭にカチューシャを被せた。 「これ、コウモリの形しててかわってるね。似合うかな?」 「うん、ばっちり。何か変わったことあったら、いってね。すぐに外してあげるから」 「いいって。せっかく買ってきてくれたのに申し訳ないよ」 頭にコウモリのカチューシャをのせ、ハミングまでして雅ちゃんはご機嫌だ。 このままで大丈夫か? ”さぁて、ここからは私の時間といったところかしら。では、体を操るから待ってなさい” 「ん?ジミー君、さっき何かいった?」 「ううん、何も」 こうして、雅ちゃんは身体を乗っ取られ、俺と一緒に教室に戻ることになった。 さて、その方法とは・・・ 「おい、何でこうなるんだよ。俺にまた女装させるとかありえないだろう」 「文句はいわないの。わけのわからない連中につかまって無理やり連れて行かれるよりもいいでしょ」 雅ちゃんの体をのっとったから、雅ちゃんの声で全ての言葉が口から出てくる。 嫌な感じだ。 こんなの俺の知ってる雅ちゃんじゃない。 ちょっと上品な感じになってるのがまた本当のお嬢様っぽい。 今はお嬢様っていうか、お坊ちゃんなんだけど。 「じゃあ、行きましょうか」 「なぁ、マジで?」 「マジよ。マジ。この子、男ならかなりのイケメンだったでしょうね。結構好みかも」 「はいはい。そうですか。いきますよ。愛お嬢様」 「ふふっ、そうむくれないの。あなただって結構可愛いわよ。本当の女の子みたい」 女装した俺は雅ちゃんとカップルを装い、堂々と歩いて教室まで戻ることになった。 これもまだまだ長い一日の一部でしかない。 ミスコンに後夜祭、とイベントはある。 ラストスパートも頑張ってみるか。