「おい、須藤。最近、元気ないな」 「いや、最近は思ったよりも練習に身が入らなくてな」 「はは〜ん、お前さては恋をしているな。で、誰だ。誰だ?」 「そ、そんなんじゃない。ふざけるな。ただ、練習の成果がすぐにでなくて悩んでるだけだ」 「そうはみえないぞ。誰だよ、誰だ。相手次第では仲をとりもってやるぞ」 このふざけた友人はよく女の子をとっかえひっかえしていて、自称恋愛のプロである。 今日もどこかの女の子とデートに行くとかいって浮かれていたっけな。 こんな奴相手に相談はしたくないし、相談したところでうまくいくはずもない。 俺の好きになった相手は・・・このふざけた友人の妹だからだ。 舞美ちゃん、俺はこの子のことが実は好きだった。 後輩のジミーを殴ったとき、自分では茉麻の痛みを味あわせてやると思ってた。 でも、本当は舞美ちゃんを奪われたことが大きいのかもしれない。 舞美ちゃん、君はどうしてあんな馬鹿を好きになってしまったんだい。 「須藤〜俺を信じろ。俺は恋愛のプロだ。俺がその子の落とし方を教えてやるぞ」 その子の落とし方ねぇ、確かに兄であるこいつなら舞美ちゃんの落とし方を知っているかもしれない。 うまく舞美ちゃんの落とし方を探れないだろうか・・・ 1 例として舞美ちゃんならどう落としたらいい? 2 直球で好きな相手をいってみる 3 スポーツ少女で天然入っていて、味音痴でとっても美人な子ならどうしたらいい? 「あ、あくまで例だから気にするなよ。たとえば、スポーツ少女で天然入っていて、味音痴でとっても美人な子ならどうする?」 自分でも、これはさすがにアウトだろうと思ったが、少しでも舞美ちゃん情報がほしかった俺は構わず言ってしまった。 あとは矢島が気付かないでいてくれることを祈るばかりだ。 「ふむ、何だ。そのわけのわからん女は。まるで俺の琴線には触れてこないなぁ〜須藤、お前趣味悪くないか?」 そのわけのわからん女はお前の妹だ、とつっこめたらどれだけいいか。 言って楽になってしまいたい。 だが、口がさけても言えるわけないじゃないか。 「趣味が悪くて悪かったな。お前こそ、まともに恋愛してるのか?」 「ふん、お前みたいな恋愛初心者と一緒にしないでくれるか。そのわけのわからん女だが、どこで知り合った?」 お前の家だ。 「ん〜友達の家だな。遊びにいったら、偶然ばったりってわけだ」 「ほう。となると、友達の姉ちゃんとか妹ってことか。その友達にいって、助けてもらえよ」 今、そうしてるところだ。 「それが出来たら苦労しないさ。友達はその子の兄でな、やたら可愛がってるからな」 「何だ、そいつシスコンかよ。やめとけやめとけ、そんな兄貴がいる女じゃ先が難しいぞ」 シスコンを気持ち悪がったりするんだな、他人なら。 「まぁいい。お前が止めてもいくならいけばいいさ。ただ、茨の道だぞ」 ありがたい助言だな。 もうお前には頼れないことだけが情報で得られたよ。 俺は矢島と別れ、一人とぼとぼと廊下を歩いていた。 と、そこへ前がみえなくなるくらいに書類を積み上げて歩く舞美ちゃんを発見した。 こ、ここは男として助けねばな。 いくか。 1 舞美ちゃん、助けいらないんだね・・・はは、感心感心だ 2 あ、ジミーか。先を越されたな 3 舞美ちゃん、俺がもってあげるとあらぬ方向へ声をかける ここは少しでもいいところをみせねばな。 重そうな荷物をもって好き、は狙いすぎか。 俺は緊張してどもりながら、舞美ちゃんに声をかけた。 「や、やぁ〜舞美ちゃん、こんにちは。その荷物、俺がもってあげるよ」 いえた、よかった。 さぁ、俺なら平気だからいくらでも頼りにしてくれていいんだ。 舞美ちゃん、どうした? 俺だ、君の兄貴の親友の須藤だ。 あまりにも反応がないからおかしいな、と思えばこれか。 完全に失敗だ。 「ふんふんふ〜ん♪」 舞美ちゃんがいた方向とは別のところへ声をかけていたらしい。 舞美ちゃんは鼻歌交じりに書類をもって廊下を進んで、自分の教室に入っていってしまった。 くそ、どうして反対向いて声かけたんだ。 自分の行動に腹が立った俺は、もう教室に戻ろうとしたところ、舞美ちゃんが再び廊下に現れてくれた。 よかった、これも運命に違いない。 1 舞美ちゃん、き、きぐうだね。あ、あのさ、今ヒマかな? 2 あれれ、おいおい。全力疾走で裏庭方面にいったな 3 ん、あれはジミー? 俺はもうこのチャンスにかけるしかないと思いきって声をかけた。 「舞美ちゃん、き、きぐうだね。あ、あ、あのさ今はヒマかな?」 「あぁ〜須藤さん。こんにちは〜お久しぶりです。元気にしてましたか?」 舞美ちゃん、やっぱり可愛いな。 何だろうな、このいつみても心躍る感覚は。 俺、一度はあきらめようと思ったのにまだまだあきらめついてないな。 「元気だったよ。舞美ちゃんこそ、部活が忙しいみたいだね。大会いったとかでさ」 「はい。大会にいってきました〜もうそれが記録まで作っちゃって大変だったんですよ〜」 すごく嬉しそうだね、陸上のことを話す君は。 その笑顔で俺はご飯が7,8杯はいけそうだよ。 ありがとう、君が矢島家に生まれてきてくれてよかった〜。 「うん。聞いたよ。おめでとう。これで関東大会で優勝すれば、全国だよ」 「はい。もうバッチリだと思います。やっぱり、応援にきてくれた人のパワーをもらったのかも」 「へぇ〜舞美ちゃんに記録出させるような人って誰なんだろうな」 俺は自分からジミーなんて言い出したくはなかった。 これくらいは男の意地ってやつだ。 「か、彼氏です。彼がいたから記録が出る力が出せたのかも、とか言ってw」 顔を真赤にしてあいつのおかげというのはやめてくれ〜。 「そ、そいつは羨ましいよ。こんな美人を彼女にできるんだからさ」 「もぉ〜須藤さんからかうのはやめて下さいよ〜お世辞がうまいんだから」 俺はふざけてるわけじゃないんだよ。 どっかの誰かさんみたく、うちの妹やそれ以外の女の子にも可愛いなんていう男じゃないんだ。 俺は君一筋だ。 「あ、すみません。私、いかなくっちゃ。またお話しましょうね」 舞美ちゃんは用事を思い出したらしく、あっという間に走って消えた。 後姿を見送る俺にはその先には奴の影がありそうな予感がする。 くそっ、追いかけてみるか。 1 またに出なおそう 2 さっさと追いかけるか 3 まてまて、それはストーカーじゃないか。考え直せ こんなところにいる場合じゃない。 俺は舞美ちゃんをおお慌ててで追いかけていった。 ついたところは、学校にあるとかないとか言われていた裏庭だった。 裏庭は人目につきにくいこともあって、俺と舞美ちゃん、あとはジミーだけだ。 「舞美先輩、呼びだしたりしてごめんね」 「ううん、別にいいよ。急にどうしたの?」 「えぇと、ちょっとベンチに座ろうよ」 ジミーの隣に座り、うっとりした顔でジミーをみつめている。 俺にはあんな顔みせてくれたこともない。 舞美ちゃん、君はあんな女みたいな男がいいっていうのかい。 俺のような男らしい強さの人間はダメなのか。 「きゃっ、い、いきなりはよくないって。ちょっと〜つねるよ」 「いいじゃん。先輩、最近はご無沙汰でしょ」 ジミーのやつめ、舞美ちゃんの足に気安く触るんじゃない。 しかもいやらしい手つきで触ってやがる・・・くそっ、少し羨ましい。 1 これ以上はみたら、限界がきそうだ 2 我慢しろ、ここで出たらすべてがぱぁだ 3 ま、舞美ちゃん、嫌だっていってたじゃないか 我慢だ、ここはぐっとこらえろ。 こんな場面で出てみろ、すべてがぱぁになるぞ。 俺の印象もがた落ちだ。 「先輩、いいじゃん。ちょっとだけだから、触らせてよ。こんなすべすべしてるんだからさ」 「馬鹿。そんな用事で呼び出したなら、もう呼ばないでね。ふ〜んだ」 よかった、舞美ちゃんはジミーの手をふりはらってたちあがった。 やっぱり君はこんな男とは違う男とつきあったほうがいい子だよ。 べ、別に俺がいいっていってるわけじゃないぞ。 「ご、ごめんよ。本当はこれを渡したくってさ。はい、優勝おめでとう」 ジミーはここで綺麗な包みにくるまれた箱を取り出し、舞美ちゃんに渡した。 舞美ちゃんは帰りかけたものの、渡されるがまま受け取り、中を開ける。 すると、その中には・・・ 「す、すごい。これ、何?」 「えぇと、何がいいかな〜と思ってネックレスにしてみた。先輩、いっつも陸上だし、たまにはこういうのでおしゃれもいいかなって」 照れくさそうに頭をかきながら、ジミーがそう言うと舞美ちゃんはすぐさま抱きついていた。 ・・・こ、こんな場面はみたくなかった。 最悪の場面だ。 「ありがとう〜ジミー大好き」 「俺も大好きだよ。舞美」 ダメだ、精神的にこれはきつすぎる。 俺はジミーがネックレスを舞美ちゃんにかけるところまで確認して、その場を立ち去った。 片思いは辛い。 それがまだあんな男でもなければ、舞美ちゃんの恋愛を応援してあげたい。 だけど、相手はよりによって矢島2号のジミーだ。 矢島2号とはいったが、矢島が絶対に結ばれない相手を捕まえた時点で奴の勝ちだ。 舞美ちゃん、君はすぐにでも新しい相手を探すべきだ。 君にそれがいいっていってあげたい。 でも、そんなことしても無意味に決まっている。 俺は一人、ボクシング部の部室にいき、ひたすらサンドバックをたたき続けた。 舞美ちゃん、俺、ボクシングやめてひょろひょろになった方がいいのかな? 「ジミーになりてぇ〜」