夏休みも残りあとわずか。 
俺はそれでもいつもと変わらない日曜日を過ごしていた。 
ちぃと一緒にバイト帰りに、来週の予定を聞かれた。 

「ねぇ、ジミーっちさ〜今度の土曜日あいてない?」 
「今度の土曜日はあいてるけど、何?」 

デートの誘いかな、と思っていた俺はあいてると一言。 
あいてるのと言われた途端、ちぃはにっこりと笑ってまた誘いをかけてきた。 

「ん〜とね、驚かないで聞いてね。友達に彼氏を紹介することになっちゃってさ。 
ちぃがジミーっちを紹介して、友達も自分の彼氏を連れてくることになったの」 

おいおい、俺が許可もしてないのに、どうしてそんな約束をしてくるかな。 
しかも、これはダブルデートなんじゃないのか? 
その友達の彼氏がイケメンだったりしたら、俺としては窮屈な思いをしそうだな。 

「もちろん、いってくれるよね?」 
「えぇと・・・」 

1 ごめん、やっぱり予定があってさ 
2 自慢の彼氏って紹介しろよ 
3 悩むが、とりあえずOK 



ちぃにもたまにはいい思いをさせてあげたいし、ここはOKにするか。 

「自慢の彼氏って紹介しろよ」 
「本当に?やった〜友達にメールですぐに教えておかなくっちゃ」 

ちぃは携帯をとりだし、メールを打ち始める。 

「で、その友達と会って何するの?」 
「友達が陸上大会に出るんだってさ。ちぃは応援してって言われてて、話してるうちに紹介しあうことになったんだ」 
「ふぅん。陸上大会ね」 

陸上大会といえば、舞美先輩がどうやら大会に参加するとかで忙しくしていたな。 
ダブルデートというより、ただの応援にいくだけなのか。 

「友達は陸上やってるのか?」 
「そうなんだよね、走るの早くってさ。陸上部のエースらしいよ」 

ちぃも走るのは早いのに、友達を早いっていうくらいだから相手は相当早いんだろうな。 
陸上ばっかりやってるってことはゴッツイのがくるのかな。 
あ〜ありえるな〜ムキムキで女としての柔らかみがないタイプの女とかwww 
うわぁ〜ある意味楽しみだわ 

「じゃあ、土曜日のことはまた連絡するからね。ほいじゃあね〜」 
「おう。友達にいっといて。当日はちょっとおめかしした方がいいぞってw」 
「ん〜わかった。ってか、何で?」 
「いや、何となくw気にするなって。じゃあ、よろしくな」 

ちぃと別れ、俺は家に帰ってきた。 
すると、玄関には見覚えのあるスポーツシューズが一足。 
舞美先輩だな、玄関にまで夕飯の匂いが漂ってきている。 

「ただいま〜舞美先輩、お疲れ様です」 
「お疲れ〜早かったね。今日はね、大会も近いから気合い入ってるんだよ」 
「おぉ〜いつもより豪勢だ。どれもうまそうだし」 

舞美先輩の料理の腕は味音痴ながらも、かなりの上達ぶりのようだ。 
うちの母さんがほとんどサポートしなくても夕飯ができてしまっている。 
これはますます母さんが先輩を嫁にしたくなるな。 

「舞美ちゃんには大会でいい成績作ってもらって、我が家にいい伝統を残してほしいもんだわ」 

母さんは舞美先輩とかなりくっつけたがっているな。 
前は千奈美ちゃん千奈美ちゃん言ってたのに、あいつが家事全般ダメってわかってこうなった。 
母さんは知らないだろうが、ちぃなりに頑張ってるのにな〜二番手じゃあかわいそうかも。 

「さて、いただくとしましょう」 

母さんの掛声を合図に、夕飯が始まり、いつもと同じくにぎやかで楽しい。 
そこへ 

「ねぇ、ジミーにお願いなんだけど聞いてくれるかな?」 
「いいですよ。何ですか?」 
「今度の大会なんだけど、私の彼氏として応援に来てくれない?」 

へ? 
いきなり何を言い出すんですか、先輩。 
彼氏って・・・ 

「ほら、舞美ちゃんのお願いなんだから聞いてあげなさい」 

母さんはこれはいいチャンスだとばかりに、舞美先輩の援護に入る。 
ここは 

1 ごめんなさい、先約がいて 
2 いいですよ。ちぃとの約束もうまくこなそう 
3 考えさせてくれませんか? 



二人にじっとみつめられ、ちょっとどころでなくきまずい。 
俺は何だか嫌な予感がする、とのフォースのお告げに従うことにする。 
断るも無理、OKするのも無理、なら・・・ 

「考えさせてくれませんか?いきなり友達はまずいですって、緊張しちゃうな」 
「そっか〜でも、前向きに考えてほしいな。私は友達に最高の彼氏だっていっちゃったし」 
「・・・あはは、そうですか・・・前向きに考えますね」 

おいおい、よりによってちぃの陸上部の友達は舞美先輩かよ。 
うわ〜調子に乗って、おめかししてこいとか余計なこと言っちゃった。 
やばいな、舞美先輩のことだから真に受けて、ピンクの洋服着てきそう。 

「顔色悪いよ。平気?」 
「あ、平気です。舞美先輩の彼氏って紹介されるかと思うと、緊張しちゃって」 
「や、やだな〜気軽に考えてほしいのにな」 

舞美先輩の照れ臭い顔も、今はとてもじゃないが正面からみられない。 
結局、おいしいはずのご飯もろくに味がしないまま、夕飯は終わった。 
そして、舞美先輩は帰る時間となり、母さんから送っていきなさいと言われる。 
だけどな〜今、舞美先輩と二人きりになるとOKしちゃいそうなんだよな。 

1 舞美先輩、大会の練習がてら走って帰ったらどうです? 
2 あ、いけねぇ〜バイト先に忘れ物したから取りに行かなきゃ 
3 いつも通りに送ろう 



こんなことで取り乱してどうする。 
本番の陸上大会はちぃの彼氏か舞美先輩の彼氏かで大変になるっていうのに。 
今日はいつも通りに送って、それからどうするか考えるんだ。 

「先輩、友達とはどこで知り合ったんですか?」 
「その子とは入学式で知り合ったんだ。といっても、私が中二のときに、その子が入学してきたんだけどね」 
「へぇ〜年が違うのに、どうやって仲良くなったんです?」 
「その子が私を同級生と勘違いして、声をかけてくれたの。『やぁ、友達になろう』とか言ってw 
で、私はあんまり友達も多くないし、うんって。今では大親友なんだ」 

ちぃのやつ、入学式の日に何て出会いをしてるんだよ。 
やぁ、じゃないつうの。 

「梅田先輩や清水先輩たちとはまた違う仲間みたいですね」 
「うん。すっごい明るくていい子なんだ。だから、その子が馬鹿で浮気者って言ってる彼氏にはパンチしたいかも」 
「へぇ〜馬鹿で浮気者なんですか」 

ちぃ〜お前、なんてこと言ってくれてるんだよ。 
お前のせいでパンチ食らうかもしれないだろうが!! 
舞美先輩のパンチなら簡単に死んじゃいそう・・・ 

「大丈夫。私の彼はスケベだけど、優しくてかっこよくて最高の彼氏だっていってあるから」 
「あははは、ありがとうございます。照れちゃうな〜」 

これはいかないわけにはいかなくなってきた。 
舞美先輩にここまで言わせておいていかないってなったら、俺最低じゃん。 

「ジミー、いつもありがとうね」 
「いえ、お安いご用ですよ」 

舞美先輩の家につき、いよいよお別れというところで舞美先輩が俺に「期待してるからね」と言って、突然キスしてきた。 
不意をつかれ、俺は呆然としてしまい、しばらく動けなかった。 

「ジミー、大好きだからね。じゃ、じゃあね」 

舞美先輩は自分でも相当頑張ったみたいで、顔を真赤にしながら家に入っていった。 
俺はそれを見送り、唇の感触を確かめながら家まで戻った。 
キスなんて今更照れることでもないのだろうが、今日のは不意すぎて照れてしまった。 
舞美先輩のキスってこういうのだったんだなって思い出す。 

「はぁ〜結局行くことになったな」 

俺はとほうにくれながら、ベッドで寝転がっている。 
いい案が浮かばず、このままでは二人に自分の彼氏ですって紹介されて・・・ 
その先は修羅場すぎて想像したくない。 
どうする、俺 

1 携帯をいじくっているうち、とある画像が目に入る 
2 助っ人を呼ぶしかない 
3 けせらせら〜なるようになるさ 



まいったな〜俺、どうしようかな。 
ピンチだっていうのに俺は、だらだらしながら携帯をいじくっている。 
我ながらどうしようもない奴だな、真面目に考えろって。 
そして、偶然写真のフォルダを開いたとき、驚くべき画像が目に入った。 

「な、何だ、こりゃ。ま、舞美先輩と栞菜ちゃんがキスしてる。こ、これは完全にエッチしてやがる」 

おいおい、俺の携帯にはなんてものが入ってるんだよ。 
自分では覚えがないのに入ってるってことは、記憶喪失前に撮ったものらしい。 
日付を確認すると、確かにそうだ。 

「こ、これは」 

驚く俺は、携帯に見入って言葉も何も失っていた。 
その時、頭の中に響き渡る悪魔の声を聞いた気がした。 
思えば、俺はもう奴を飼っていたのかもしれない。 

「ふはははは、お前ようやくみつけたか。これはな、お前を大好きになる前の先輩とストーカー女の写真だよ」 
「だ、誰だぁ〜俺に話しかけてくる奴は」 
「ばぁか。お前の頭の中から聞こえてくるのはわかってるんだろう?なぁ、これはいいネタになるぞ」 
「や、やめろ。うるさい。あっちいけ」 

頭の中に響く悪魔の声、このままこいつの話を聞くのは危険そうだ。 

1 写真は消し去ってしまおう、これは持っておくべきじゃない 
2 うるさい、あっちいけと悪魔を振り払う 
3 ちょっとくらい聞いてみるか 



俺はこの悪魔の声を何故か受け入れた方がいい気がした。 

「お利口じゃないか。俺の言葉に耳をようく傾けろよ。いいか?」 
「あぁ」 
「お前は舞美と千奈美、どちらとも失いたくはないよな?」 
「当然だ。俺は最低の人間といわれようとも、舞美先輩もちぃも自分の彼女にしておきたい」 
「ふははは、それでこそ俺の飼い主ってわけだ」 

ガラスにうつるもう一人の俺。 
こんなにあくどい顔が出来るのかって震えあがる不気味なやつが俺を見返してくる。 
そいつは口の端をあげ、けらけらと笑っている。 

「お前はこれを餌にして、舞美の兄貴を呼び出せ。これがほしかったら、俺のいうことを聞けってな」 
「お兄さんを利用するのかよ」 
「はん、これくらい朝飯前だろ。簡単じゃないか。あのシスコンならほいほいついてくるさ」 
「で、でも、それは」 
「ふん、引っかかる奴が悪いんだよ。いいか、画像はあくまで餌だから、全部をくれてやることはない。 
これからも画像は小出しにして、奴をうまく使えばいいさ。あいつはな、栞菜をストーカーする男だぞ。構うものか」 
「何て計画たててやがるんだよ、お前は」 
「栞菜の画像なら、これからいくらでも手に入るさ。あいつ、レズどころかお前を相当好きみたいだからな」 

こうして、俺は悪魔の耳に傾けることにしたはいいが、実行していいものか 

1 まだ引き返せるぞ、こんなことはやめるんだ 
2 いいさ、自分が助かるためだ。お兄さんには悪いが、利用させてもらう 
3 悪魔に他の手はないか聞いてみる 



いくらお兄さんがストーカーしてる人でも、これはいくらなんでもやりすぎだ。 

「なぁ、他の手はないのか?お兄さんを利用するのはちょっと」 
「おじけづいたか、やれやれ。これくらいできなくてどうするんだ。たかが協力してもらうだけだろ」 
「舞美先輩と栞菜ちゃんの画像をそんなことに使いたくはない。お前なら他の手も考えてるんだろう?」 
「ちっ、馬鹿が。お前がそんな腰抜けとはな。拍子ぬけだ。あとは頑張りな」 

ガラスにうつっていた悪魔は、あきれ顔であっという間に消えていた。 
ただ、これまでの様子を呆然とした様子でみつめ返す俺がいるばかりだ。 
やれやれ、悪魔の力を借りようとした自分がダメだったんだ。 
自分のことなんだ、自分で何とかするしかないな。 
しかし、どうやって二人の紹介を交わすんだ。 

「はぁ・・・頭が痛くなってきた・・・」 

再び、路頭にさまよいだす俺。 

1 突然、部屋を訪ねてきた親父に助けを求める 
2 萩原に頼み込む 
3 けせらせら〜やっぱりこれしかない 



なるようにしかならない、もうそれしかないだろうな。 
俺がいくら悩んだところで、いい案が思いつくとは思えないし。 
そして、当日・・・ 

「じゃあ、応援にいってきます」 
「はいはい。舞美ちゃんをしっかり応援してきなさいよ」 

何も知らないうちの母親は、はりきって応援してこいと見送ってくれた。 
俺は前日二人から連絡を受け、一人を家まで迎えに行くことになっている。 
紹介されるのは大会終了後らしいし、それまでにいい案が思いつくかもしれない。 
それにかけるしかもう手はないしな。 
さて、どちらを迎えにいくんだっけ 

1 ちぃ 
2 舞美先輩 



そうだった、ちぃを迎えに行くんだったな。 
俺はちぃの家まで迎えにいき、ちぃと陸上競技場まで向かった。 
競技場には既に結構な人だかりで出来ていて、この中に舞美先輩がいるかと思うと不安になる。 
ちぃと一緒にいるところをみつかったりしたら、やばそうだしな。 

「ジミーっちさ、友達の前では変なことするなよ。したら、あんただけ帰ってもらうから」 
「はいはい、そんなことはしませんよ。できるわけがないっての」 
「もうそれじゃあ信用できないな〜舞美の彼氏はきっとかっこいいからね、心配だよ」 

ちぃがついにさらっと舞美って言葉を口にした。 
舞美先輩だろうことはわかりきってはいても、ちぃから言われるとショックは大きい。 
舞美先輩からは最高の彼氏で、ちぃからは最低の彼氏か・・・ 

「舞美って子とは大会後に会うんだよな?」 
「うん、そのつもり。だって、大会前に会ったら緊張しちゃってそれどころじゃなくなっちゃうじゃん」 
「そうか」 

舞美先輩の控え室に行くつもりだったんだけど、どうしようかな。 
やめておこうかな 

1 ちぃにお腹が痛くなったからと言って控え室へ 
2 飲み物買ってくるといって控え室へ 
3 会うと緊張しちゃうらしいし、メールでがんばれ 



今日の主役は陸上大会に出る舞美先輩だし、応援しておきたい。 

「飲み物買ってくるから席行って待っててよ。とりあえず、ちぃは何飲む?」 
「お、気が利く〜ちぃはお茶系でいいよ。よろしくね」 

飲み物を買いにいくふりをして、いざ控え室へ。 
控え室前はたくさんの人だかりで、なかなか舞美先輩に会えそうにない。 
探すの苦労しそうだな、俺が不安になりかけたその時、ピンクの服を身につけた舞美先輩を発見した。 
本当におめかししてきてる。 

「先輩、やっとみつけた」 
「あ、ジミー。ここまで来てくれてありがとう。友達からさっきメールがあってね、彼氏と一緒に今ついたって」 
「そ、そうなんだ。友達の彼氏、どんな奴なんだろうね」 
「うん、千奈美のことだから顔だけがいい男だよ。あの子、注意しても顔だけで判断しちゃうんだからさ」 

いえ、その心配はいらないと思いますよ。 
俺、自分の顔にそこまで自信ないもん。 

「今日は練習の成果だせるよう、頑張りたいな。せっかく大会まで来たんだもん」 

舞美先輩は頑張り屋さんだし、今日は勝ってほしい。 
俺からできることなんて全然ないけど、これくらいはしてもいいよな。 

1 この前のお礼とばかりに、キス 
2 がんばれ、と応援 
3 客席からずっと見守ってるよと抱きしめる 



俺は周りをきょろきょろと見回し、誰もみてなさそうなチャンスを狙い、舞美先輩にキスをした。 
それはほんの一瞬だったけど、舞美先輩は顔を真赤にしてうつむいてしまった。 

「こ、こんなところでキスはよくないって」 
「何だよ、照れてるだけじゃん。この前のお礼ってことで受け取ってよ」 
「も、もぉ〜お礼はいいのにさ。大会前に余計に緊張しちゃったじゃん」 

舞美先輩は完全に照れてしまって、動きがガチガチになってるっぽい。 
場所も選ばずにキスした俺が悪いんだけど、まさかここまでとは思いもしなかった。 
あちゃ〜応援失敗かな。 

「で、でもでも、ジミー来てくれたから、元気いっぱいもらったよ。今日も全力でがんばってくるね」 
「うん。客席から応援してるから。ずっと見守ってるよ」 

俺はキスして緊張してしまった舞美先輩を抱きしめ、少しでもリラックスしてもらおうと思った。 
キスまでして、抱きしめるくらいなんでもない。 
とにかく先輩には頑張ってほしいのだ。 

「馬鹿。もうビリだったら、ジミーのせいだからね」 
「了解。がんばってよ、先輩」 
「うん」 

舞美先輩の応援を何とかクリアし、ちぃのところへ戻る。 
戻ると、ちぃは既に応援中だったみたいで、手をメガホンかわりに大声で「舞美、ファイト」と叫んでいる。 
会場が大きいので、先輩の姿がみえても結構小さいのが、この場合救いだ。 
大きかったら、隣にいる時点でアウトだからな。 

大会は順調に進み、先輩の走る順番が刻一刻と近づいてくる。 
舞美先輩はストレッチで体を温めて、本番に備えて順調みたいだ。 
よかった、控え室ではどうなるかと思ったけど、今はほっと一安心。 

「ジミーっちさ、あれが舞美だよ。みえる?」 
「あのな、双眼鏡でやっとみえる距離だぞ。わかるわけないだろう」 
「ほら、あのポニーテールのすらっとした可愛い子だよ。あれ、あれ」 
「あれじゃわからないって言ってるだろうが。全く、お前の説明だとわかりづらいな」 
「ジミーっちは目鍛えたほうがいいぞ。馬鹿なんだから、目くらいよくしておきなって」 

舞美先輩の出番がくるまで、俺とちぃはこんなバカなことをしながら過ごした。 
しばらくして、学校名と選手名がアナウンスで流れ、先輩の出番だと教えてもらった。 

「舞美、ちょ〜真剣な目をしてるよ。普段はぼぉ〜とした感じなのにさ」 

ちぃはなかなか視力がいいみたいで、舞美先輩の表情変わったことにも気づいた。 
こいつ、どれだけ視力いいんだよ。 
まるでアフリカの民族並みだよ、これじゃあ。 

「いよいよ、レースだ」 

舞美先輩は決められた位置につき、ほどなくして出番となり、走り始めた。 
速い速い、先輩は走り出してすぐに一位になって、そのまま独走状態になった。 
隣のちぃが言うには先輩は念願の一位を獲得し、満面の笑顔でいるようだ。 
よかった、舞美先輩って偉大な先輩だ。 

それを改めて再認識してしまった俺に、無常にも大会の終わりを知らせるアナウンスが流れる。 
ついにきた、ついにきてしまったぞ・・・ 
どちらの彼氏を選べ、とは自業自得ながら厄介な問題だ。 
もうどうするか。 

1 舞美先輩の彼氏として紹介されよう 
2 ちぃの彼氏として紹介されよう 
3 ここは脱走するのが一番な気がするな 
4 天使(読者)のリクエスト通りに 



「舞美、早かったね。さすが陸上部のエースだよ」 
「一位とるなんてすごいんだな、その友達」 

もうここまできたら、しらを切り通すしか道はない。 
そのお友達は知らないし、あう約束もなかったことにする。 
これでいこう。 

「表彰台にまで乗ってるよ〜うっひゃ〜いいな」 
「一位とったんだし、そりゃ当然だろうな。お前も陸上部に入ったら?」 
「馬鹿言わないでよ。バイトだってあるんだし、無理。部活入って忙しくなってみろ。ますます浮気するだろ」 
「しないって」 
「嘘つき〜岡井ちゃんにも手出したくせに」 

俺はどうしてこうも人目をはばからずに行動する悪いくせがあるんだろうか。 
騒いでいる俺とちぃは結構目立ったみたいで、ちょっと遠くから何か視線を感じた。 
あぁ、気のせいであってくれ。 

「表彰式も終わったし、そろそろ会うとしますか。恥ずかしいことだけはしないでよね」 
「あ、悪い・・・先にいってて。俺、体調悪いみたいで、トイレいってくるからさ」 
「しょうがないな〜早くしなよ」 

ちぃには本当に申し訳なく感じながら、俺は舞美先輩にもメールを打つ。 
『今日は一位おめでとう。先輩の走ってる姿最高でした。それで、友達と会う約束だけど、今日はキャンセルさせて 
親戚に不幸があったとかで、いきなり親から呼び出されちゃってさ。今度は絶対に会うから』 

ふぅ、これで何とかいけるな 

俺は誰とも顔をあわせないよう、慌てて逃げていった。 
ちぃにもメールで体の不調で友達に会うのはまた今度ね、とかわしておいた。 
当然、ちぃからお怒りのメールもまた届いたわけで。 

『馬鹿〜友達楽しみにしてたっていうのに〜逃げたな?今度は何が何でも会わせるもんに〜』 

やれやれ、一命だけはとりとめたみたいだ。 
しかし、まさかの組み合わせがあったことに驚きつつ、俺は家に帰った。 


「千奈美、その彼ってやっぱり最低だよ。別れれば?」 
「ん〜そう言ってもな〜あいつってちぃがいないとダメなんだよ。ちぃがいてこそなんじゃないかな。 
だから、いつかきっと更生させちゃうから」 
「大変だね。千奈美もさ」 
「そう言う舞美こそ、彼氏はどったの?」 
「家族に不幸があったんだって。応援には来てくれてたみたい。千奈美と近い席だったみたいだよ」 
「へぇ〜そっか。舞美に似合うイケメンなんていなかったけどな」 
「イケメンでもないんだって〜もう照れるじゃん〜千奈美も彼氏とうまくいくといいね」 
「だね〜まぁ、ちぃはいつか結婚しちゃうかもw」 
「そう言われたら、私だって彼氏の親から舞美ちゃんがお嫁さんなら最高ねとか言ってくれるんだよ」 
「いいね、結婚式ダブルでできたらいいね。同じ日とかにさ」 
「うん」