「あ〜〜〜〜。今日も1日よく頑張った〜〜」 

疲れ果ててソファーに身体を投げ出す。 
ふと鼻で息を吸うと、キッチンから美味しそうな匂いが 

・・・あの娘が料理をしてくれている、俺のために。 
こういうのを幸せって言うんだよな、きっと。 

「ふぁあああ・・・あ・・・」 

ああ、眠くなってきたわ。ちょっとだけ目を閉じるか。 

ちょっと、寝よう。夕飯まではまだ時間があるはずだ・・・ 

‐―‐―‐―‐―‐― 


「そんなにはしゃぐんじゃないの、もう」 
「まったく元気だなぁお前は」 

・・・ん・・・あれ、母さん、それにオヤジ? 
ずいぶん若いな。ああ・・・これ夢か。疲れてると夢見るって言うからな。 

「はーやーくー!つれてってよぉ〜」 

はは、あれ俺か。自分で言うのもあれだが昔は可愛かったんだな 

どこに行くんだろう? 




ここって・・・神社か。 
うわ〜〜〜〜混んでるなぁ、屋台がいっぱい並んでる。灯りついたちょうちんも並んで・・・ 

ああ、夏祭りか。ずいぶん鮮明な夢だな。暑いし匂いもあるし 
「パパ、ママ、ねえ」 
あれ?いないぞ。こんなかわいい子供をおいてどこにいったんだ 

「どこ?どこいったのぉ」 

・・・いた。おい何してんだよ、子供がいるんだぞ。 
「今日の母さんはいつもよりきれいだな」 
「もぉ、あん、ダメよぉ。あの子をほっといたら、ああっ」 

ふざけてんじゃねーよ。外で励むなっつーの。 
そんな場所をかまわずなのに俺はなぜ一人っ子なんだ。 
「・・・いいか、ぼくはぼくで楽しむから」 
我ながら冷めた反応だな、どこに行くんだろう 

1 金魚すくいにいくのか 
2 射撃か、しぶいな 
3 お面のとこか 



「おじちゃんおじちゃん、お面ちょうだいっ」 
「いっぱいあるよ。どれがいいんだい?」 
「えっとね〜〜〜」 

・・・似てねえな、どれも。正直出来は悪いと思う。 
でも子供のときはこういうのが欲しくなるんだよな、懐かしい。 

「ぐすん、ひっく」 
おや。泣いてる子供がいるぞ。女の子か?俺のすぐ隣でしくしく泣いている。 

「えっとね〜、じゃあこれ。いややっぱりちがうのに・・・」 

何やってんだ俺。気付けよ、隣で泣いてる子がいるんだぞ、おいおい 

1 あ、気付いた。話し掛けてるぞ 
2 その子が俺に話し掛けてきたわ 
3 っておい、いっちゃうのかよ俺!バカ! 



「ねえどしたの?」 

おっ、話し掛けた。それで正解だ、ふう。 

「・・・パパとママがいないの。はぐれちゃった」 
泣きながら静かに言うその女の子。 
・・・あれ、ヘンだな、顔がよく見えないぞ。なんか不思議な感覚だ。 
「じゃあさがしてあげる。いつはぐれちゃったの?」 
「んと、えっと、5分くらい前かな」 
「じゃ大丈夫、すぐ見つかるよ。ぼくについてきて 

我ながら頼りになりそうだな。根拠のない自信だ。 

しかしあてもなしにどうやって見つけるんだろう。 
そう思っているとその子の手をひっぱって走りだした。向かった先は・・・ 

1 屋台か・・・食ってる場合じゃないだろ 
2 え?俺の両親のとこか 
3 あっちは・・・駐車場、なにするつもりだよ 



よし頑張れ俺。頼りになるのはお前しかいない。 

「こ、ここ・・・」 
「お腹すいたでしょ?」 
なにやってんだか・・・ここは焼きそばの屋台じゃないか。このバカはまったく 

「つらい顔してたらないちゃうよ。元気になって」 
「・・・う、うん。ありがと。あ、焼きそば、美味しい」 

だがこの行動が良かったのか、女の子に笑顔が戻った。 
っておい俺、そんなに口の周りに食べかすつけて・・・きったない食い方だな。 
うちの親は場所をかまわず子作りをするけど躾はきちんとしてたぞ。恥ずかしいなぁもう 
「おいしいね〜」 
「もう。そんなに食べかすつけて。ほら」 

あああ恥ずかしい、夢の中とはいえ見ず知らずの他人に口をふかせるとは。 

「ありがとぉ」 
「うふふ、なんか君って弟みたいだね」 
「弟いるの?」 
「うん。でも、なまいき。言うこときかないもん」 
「いいなぁ。ぼく一人っ子だからさみしいよ」 

・・・うらやましいな。俺には兄弟がいないから 

1 誰だ?大人の人がこっちに来る 
2 花火が始まったな 
3 突然お姉ちゃんキスしてと甘える俺・・・ 



この音、花火か。ホントにこの夢は鮮明だなぁ・・・ 

「わぁ〜〜きれーい」 
「約束、やぶっちゃった」 
「やくそく?」 
「うん・・・パパとママ、弟、みんなでみようってゆってたの」 

すると俺はその娘の手をぎゅっとにぎった。 
「じゃあぼくと一緒にみよう。さみしくないよ」 
「うんっ」 

わりと簡単に安心させた。へえ・・・やるじゃないか。現実でもこうだったらな 

「わぁ〜〜〜〜」 
「きれいだね」 

花火には特別な思い入れがある。たくさんの思い出が・・・ 
あの時もそうだった、花火だった。思い出の節目には必ず花火があったっけ 

なんだか不思議な夢だな。 
小さい頃の自分を遠くから見てる、そんな感じだ。 
テレビを見てる様な、いやちょっと違うかな。分かりやすくいえばそうなるけど。 

「いた!おねえちゃんみつけたよパパ、ママ!」 
「そこにいたのか。さがしたぞもう」 
「・・・あら、見たことない子がいるわ」 

こっちに家族らしき人たちが来る。この女の子の家族かな 

「お?早いな。もう彼氏を見つけたのか」 
「ちがうよぉ!迷子になっちゃったんだけど、この子が一緒に探してくれたの」 

・・・?! 
この父親らしき人、顔がよく見えないぞ。霧がかかってるみたいだ。 
いやよく見たら母親らしき人も、女の子の弟らしい子供もよく顔が見えない。 
ヘンだぞ。だって他の人は顔がくっきり見えてるのに。 
お、俺の親だって、自分だってはっきり見えてたのに・・・ 

なんだかただの夢にしてはおかしい。夢ってそういう感じだろうけど、何かが・・・ 

「せっかくだから一緒に見ようか、花火。ほらっ」 
「わぁ〜〜〜よく見えるぅ〜」 

俺を肩車するその父親。 

・・・なんだかその声、どこかで聞いたことある様な・・・ 



 「もう  、いつまで寝てるの。できたよ!」 

・・・気が付いたらそこは俺の部屋。 
そして、俺を起こすあの娘。 

・・・間違いない、その声、夢で聞いたあの母親にそっくりだ。 

じゃあ・・・あの二人の子供は、まさか・・・ 


「・・・愛してるぞ」 
「な、何よ////寝起きでいきなりそんな言葉・・・っ」 

あの夢は普通の夢じゃない。あれはきっと 

「早く食べよう、冷めちゃう」 
「うん」 


あの夢はこの日常の先にある 

そう信じたって、いいよな?