夏休みに入り、俺はバイト三昧の日々を過ごしていた。 携帯には毎日のように彼女たちから連絡がある。 月曜は梅田先輩、火曜は栞菜ちゃん、水曜は愛理ちゃん、木曜は岡井ちゃん、金曜は雅ちゃん、土曜は茉麻、日曜は舞美先輩という具合だ。 毎日、女の子から連絡があるのは嬉しいが、はっきりいって疲れる… 本命のちぃからはいつ空いてるのかと怒られて散々だし… というわけで、今日はバイトもないし、携帯地獄から解放されたいくらいだ。 なんて、噂をすれば携帯が鳴り出した。 さて、どうするかな 1 無視無視、ほっとこう 2 一応出るだけ出るか 3 〇〇、お客さんよ〜 鳴りやまない携帯の着信音だが、もう無視すると決めたんだから知らんぷりだ。 俺はベッドに顔を埋めて無視しようと努力してみた。 だが、あんまりしつこく鳴る着信音にさすがに根負けしそうになる。 いい加減にしてくれ、と思い携帯を見ると 1 川*^∇^)|| 2 ノソ*^ o゚) 3 从*´∇`从 だったので、思わず出てしまいそうになった。 今日は出ないと決めたんだ。 出ないぞ、出ない。 でも、気になるな〜もう揺らいでる情けない俺は 1 出ることにする 2 留守電を聞いて決める 3 決心は固いから出ない 電話の相手は熊井ちゃんとなれば、俺も出ないわけにはいかない。 熊井ちゃんとは家に遊びに行って以来だな。 「もしもし」 「もしもしじゃありません。早く出なさい」 電話に出て早々、熊井ちゃんから怒られてしまう。 怒り気味ではあるが、何だか同時に何かを期待する風でもある。 はて、何を期待してるのだろうな。 「先輩、今日は予定ないですか?ないなら外に出ませんか」 「うん、予定ないけど…何かあるの?」 「何かあるのは先輩じゃなくて私です。で、今から出ましょうよ〜ね」 熊井ちゃんには悪いが何が何やら。 さて、会うことには了解したがどこで会おうかな。 1 熊井ちゃんと散歩した公園 2 夏休みなのに学校 3 駅前 俺と熊井ちゃんが散歩した公園に向かうと、そこには熊井ちゃんがベンチに座って待っていた。 熊井ちゃんは 1 浴衣 2 熊井ちゃんには珍しいミニスカ姿 3 ジャージ姿 でいる。 俺は熊井ちゃんに駆け足で近寄り、「よっ」と声をかけた。 熊井ちゃんがベンチに座っていたおかげで、上目遣いに見上げてきた。 今のシチュエーションにドキッとしてしまい、何と返事していいかわからない。 「先輩、どうかしましたか?」と、本人はそれがわからず首を傾げる。 その姿にまたも可愛い〜とときめいてしまう。 危ない、今からこれだと熊井ちゃんと1日いる事考えたらどうなることやら。 「いや、何でもない」 「もう〜待ち合わせには遅れてくるし、何も話はしてくれないし、今日は先輩おかしいですよ」 「おかしくなんかないよ」 うん、おかしくなんかないはずだ… 「で、熊井ちゃんは呼び出しておいて何か用事でもあるの?」 「それは 4 今日は誰かを祝ってあげたくないですか? 5 隣の市で花火大会なんです 6 去年みたいにデートしませんか? 今日は誰かを祝ってあげたくないですか?」 「いきなりすぎて、えぇとどうかな」 熊井ちゃんは浴衣姿で、祝うとか祝わないとか何を言ってるんだろう。 電話の時から何かを期待するような気はしていたけど。 「先輩、とぼけちゃって〜実は知ってるでしょ?」 「うん、知ってるのかな」 「知ってます。知らないとは言わせません。言ったら、グーだから」 俺は知ってるをやけにを強調して話す、熊井ちゃん。 つまり俺は知らないとおかしいわけだな、これは。 しかし、思い出せないぞ。 言い訳じゃないが、記憶喪失以来、完全には戻っていない記憶がまだあるし。 それのことか? 「熊井ちゃん、えぇと 1 知りません、と白状 2 あぁ〜知ってるよ、ととぼけて、会話の中から情報収集 3 浴衣が綺麗だね、でごまかす 知りません」と俺は素直に白状することにした。 それを聞くと、熊井ちゃんはむぅ〜と唸って頬を膨らませた。 やばっ、怒らせてしまったかもしれないな。 「えぇと本気ですか?」 「ほ、本気です。ごめんなさい。言い訳する気はありません。ごめんなさい」 気をつけの姿勢で頭を下げる俺は、しばらくの間そのままで停止した。 そして、謝る俺をみて熊井ちゃんははぁと溜息をついた。 その声に、俺はやっと頭を上げて、熊井ちゃんの顔をみてみた。 怒ってるのは怒ってる・・・でも、寂しそうでもある。 「まさか、記憶が戻ってないとかそういう理由ですか?」 「うん、たぶん・・・そうでないとしても、熊井ちゃんを怒らせたんだ。俺が何かしたんだよね」 「今日。今日は私の誕生日です。あなたの大好きな熊井ちゃんの誕生日ですよ」 え、えぇ〜熊井ちゃんの誕生日だったんだ・・・ マジかよ、それは知らないって言ったら怒って当然だよな。 大好きなっのは間違ってないけど、つっこんでおくべきかな? 「お、おめでとう。これで15歳になったんだね」 「はい。そうです。先輩と同じ歳ですね」 そうか、俺誕生日冬だもんな。 「それで、お願いってわけじゃないんですけど。いいですか?」 「い、いいよ。誕生日なんだし、お祝いとして聞いてあげるよ」 「やった〜じゃあ言いますよ。 1 同級生と思って接してください 2 幼馴染として接してください 3 お姉さんとして接してください 同級生として接してください」 同級生としてというと、クラスメイトのちぃや茉麻、雅ちゃんと同じようにか? 「具体的にどんな感じかな?」 「そうですね〜友理奈って呼んでほしいです。あぁ〜恥ずかしいなぁ」 顔を赤く染め、熊井ちゃんがくねくねと動く。 こんな動きする熊井ちゃんは初めてみるな、そんなに言ってほしいんだ。 友理奈か、何か緊張するな。 たかが名前言うだけなのに変な汗かくし。 「えぇと、ゴホン。友理奈?」 「何で弱気なんですか〜もっとちゃんと言ってください。ゆりなって」 「友理奈」 「は、はい」 熊井ちゃんだって緊張してるじゃないか、声が上ずっているし。 新鮮な響きだな、熊井ちゃんを友理奈って呼ぶのは。 「この後どうしようっか?」 「そうですね、駅前の商店街でお祭りやってるんで、寄っていかない?」 「うん、わかった」 たどたどしいタメ口をきく熊井ちゃんは、慣れない浴衣に悪戦苦闘しながら歩いている。 下駄をカランコロンと鳴らしながら、駅前の商店街までくると屋台がずらりと並んでいた。 「金魚すくいやらない?」と、熊井ちゃんもとい友理奈はいう。 1 そうだな、やってみるか 2 あそこに射的あるからあっちいこう 3 わたあめ食べない? 「そうだな、やってみるか」 「うん、いこう」 友理奈は子供みたいに無邪気な笑顔で、おじさんからあみを受け取る。 俺もあみを受け取ると、どこがいいか観察してみる。 ま、うじゃうじゃいるし、特定の金魚に狙い定めてもどれか見分けがつかないけどw 友理奈も友理奈であみをどう入れようか真剣に悩んでいるみたいだ。 「どこがいいかな〜○○君はどこからいくの?」 「え、いや、ま、まぁどこだろう」 いきなり熊井ちゃんに名前で君付けされると恥ずかしいな。 ジミー君やジミーは聞きなれていても、下の名前で呼ぶ人少ないからな。 「どうしたの?今は私たち同級生だよね」 「う、うん。そうだね。俺はあそこを狙おうかな」 「そっか。じゃあ、私はこっちいくね」 二人して、あみを水槽に入れて、さっとすくいあげてみる。 しかし、金魚の動きの早さはこちら以上で簡単には引っかかってはくれない。 意外と難しいな、これ。 「絶対に一匹は釣って帰ろうね」 「あ、あぁ。お互いに頑張ろうぜ。あみはもうピンチっぽいし」 1 金魚は一匹も釣れずに終わる 2 一匹だけ釣れる 3 最後にキセキをみせる 最後にキセキをみせてやりたい。 ここまできて、金魚が一匹も釣れないで帰るのは寂しすぎる。 俺は気合を入れようと腕まくりをして、あみを再び水槽につけた。 隣で破けちゃったと騒いでいる熊井ちゃんの為にも頑張らないとな。 「待ってて、すぐに大量の金魚をもって帰らせてあげるからさ」 「○○君に期待してるよ。頑張って」 本当に新鮮だな、今日の熊井ちゃんは。 浴衣姿で現れたり、俺を○○君なんて呼ぶとか。 熊井ちゃんの期待に応えようと、俺は深呼吸してあみをすくいあげるイメージを作る。 そして・・・ 「ありがとう。こんなに取れるなんてすごいよぉ〜○○君、えらい」 「えらいって言って、頭を撫でるな。恥ずかしいだろう」 「いいじゃん、頑張ったご褒美だよ。えへへ」 結局、最後に俺は何とか5匹の金魚をすくいあげるのに成功した。 一匹も取れないと苦戦していたのを考えれば、これは上出来だろうな。 さて、金魚をすくった後も何軒か屋台をまわって、さすがに日が暮れてきた。 「ねぇ、○○君。お正月にいった神社にもう一度いってみようよ。今度は平気だと思うし」 1 嫌な予感がするな、いかないほうがいい 2 清水先輩の実家か、問題ないな。いってみよう 3 別のところじゃダメ?と聞いてみる お正月にいったところだと、あんまりいい思い出があるんだよな。 さすがの記憶なくした俺も、これは何とか思い出したんだ。 「別のところじゃダメ?」 「別のところじゃ意味ないの。お正月にいったところが一番なの」 「うぅ〜ん、でもさ、あそこだと嫌な思い出が・・・」 「今回は平気だよ。今回は平気。だから、一緒にいこう?」 どうするかな、熊井ちゃん絶対にあそこがいいらしい。 どうしても行きたいなら俺も行ったほうがいいだろう。 結局、いくことに決めた俺だが、清水先輩が神社でお仕事をしてないことにかけた。 いたら、お正月の二の舞になるからな・・・ せっかく姉ちゃんと甘えても許してもらえてるのに、熊井ちゃんみたら何ていうか。 「ここは恋には一番いいんだって。だから、来たんだよ」 「そうだったね。でも、ここじゃなくてもいいんじゃないか?」 「女の子は案外、噂とか信じるんだよ。恋ならとくに」 熊井ちゃんも女の子だもんな、そういうの信じるんだな。 俺は清水先輩がいないことを願って、お賽銭を投じる不届き者だが、一応お願いしておこう。 1 熊井ちゃんのお願いが叶いますように 2 俺の本命が決まりますように 3 清水先輩が今日はバイトありませんように 「○○君は何をお願いしたの?」 お願いごとをして、おみくじをして(姉ちゃんにみつからずに)無事に家路についている中、 熊井ちゃんが俺に尋ねてきた。 「う〜ん、友理奈のお願いが叶いますようにって」 「ふぅ〜ん、本当に?」 「疑り深いんだな。本当だよ。だって、それが一番いいと思ったからさ」 「そうなんだ〜じゃあ、それ叶うのかな。えへへ、すごいいい誕生日プレゼントだね」 「何、どんなお願いしたの?」 「内緒」 内緒にされては、どんなお願いが叶うかわからないじゃないか。 全く、人のは聞いておいて自分のはダメなんて酷いな。 こっちも怒ってやろうかと思ったけど、悪戯な笑顔を向けてくる友理奈にすっかりそんな気はうせる。 「そのお願いは叶うと思うよ。だって、神さまは約束してくれたんでしょ?」 「う〜ん、だといいな。でも、叶ってほしいな。○○君とずっと一緒にこうしていたい」 「え、何かいった?」 「内緒」 内緒が多い奴だけど、憎めない笑顔なんだよな。 俺は熊井ちゃんを家まで送り、自分も家路についた。 友理奈か〜新鮮な響きだったな、○○君も。 ああいうのもまたいいかもしれないな、照れ臭いけど。 また熊井ちゃんを友理奈って呼ぶのは照れるけど、○○君はいってほしいかもしれない。 そう思いながら、俺は熊井ちゃんのお願いごとを想像していた。 きっと叶いますようにと思いながら。