休日はバイトが当たり前になる中、珍しくレジに立つちぃの表情があまりよくない。 いつもはお客さん相手ににっこり笑って、まるでヒマワリだねとお客さんに褒められたあいつらしくない。 いや、正直にいえば今日に限ったことじゃなく、最近はずっとこの調子だったかも。 どうしたんだ、ちぃの奴は。 「千奈美さ〜全然元気ないよね。金額打ち間違えたから、からかったのに『うっさいなぁ〜』と言ったきりでさ。 いつもなら『桃には言われたくないもんに〜』なんて怒るのに」 桃子先輩がたまたま通りがかった俺に声をかけてきた。 表情から桃子先輩もちぃの事を心配してくれている、とわかる。 はじめはどうなるか心配したのに、今では桃子先輩の五月蝿さに対抗できるのは徳永さんだまで言われるほどの仲なのに。 それが最近に限っていえば、そうではなかったという。 こんな話を聞いた事を思い出した。 『徳永さんの両親離婚するかもよ』と風の噂で聞いたんだった。 学校でも元気なかったよな、ちぃ… 1 帰りにデートに誘ってみるか 2 今、話しかけてみよう 3 からかってみて決めるか 帰りにデートに誘って、元気を出してもらうかな。 バイトが終わると、俺は従業員用の出入口でちぃが出てくるのを待った。 「お疲れ〜ちぃ、今日だけどこれから空いてない?よかったらデートしようよ」 「ん、暇だけどさ。いきなりだね、相変わらず。しかも最近ほったらかしにしてたのが、どういう風の吹きだまりだい?」 うわっ、突っ込みどころ満載の言葉あるのに突っ込めない。 条件反射でつい突っ込みたくなるのに、抑えないと不味い展開になるのはみえみえだ。 訂正するにしても、ぶすっとした表情のちぃからしたら、鬱陶しいかもな。 えい、吹きだまりはスルーだ。 「本命の彼女なんだしデートするのは当然じゃん。だから、いこうぜ」 「ふぅん、ちぃは君には本命なんだね。わかった、なら他の女の子たちと会っていてもちぃ優先させるね?」 何だ、今までなら会う事すら口には出さなくともご法度だったはずが、会っているのは許すような発言は。 ただし、自分を一番に優先させろか。 いつもちぃを一番に考えてきたつもりなんだよな、俺は。 1 わかった、ちぃを優先させる 2 どうした、いつもちぃが一番だぞ 3 考えること小一時間…って、待った待った ちょっと真面目に考えてみる。 雅ちゃん、彼女は俺が憧れの女の子でようやく念願叶ってつきあうことに。 愛理ちゃん、彼女がいてもつきあいたいと言ってくれた可愛い後輩。 岡井ちゃん、友達の愛理ちゃんとも付き合ってるのに付き合いたいと言ってくれた、これまた可愛くてボインちゃん。 栞菜ちゃん、いつ付き合いだしたか不明だけど妖しい魅力のあるほっとけない女の子。 舞美先輩、母さんもお嫁さんにしなさいと太鼓判のおっちょこちょいだけど、運動神経抜群の綺麗な女の子。 って、まだまだきりがないくらい女の子がいて、どの子も俺には大事だ。 う〜ん、ちぃは大事にしたいんだ、だけど… 「何だ、口だけじゃんか。ジミーっちの馬鹿」 あれれ、待った待った。 俺は慌てて勝手に帰っていくちぃを追いかける。 「待てよ、俺は真剣に考えてるんだぞ」 「考えるな。そういう事はすぐに答えられない人は嫌いだ」 「ごめんよ、だから話しだけでもしてくれよ。最近はちぃが元気なさそうだからデートに誘ったんだ」 「べ、別に。ジミーっちには関係ないんだからいいよ。どうせ誰に話したって解決しないんだし」 ちぃの表情が怒りから哀しみに変わり、そこには今までにない失望がみえる。 まさかあの噂は本当なのか? 1 噂は聞いたよ。あれ、本当なのか? 2 噂が本当なら俺はますますちぃを元気にしたい 3 話せば楽になるさ、話してみるゆ こんな自分でも力になりたい。 確かに頼りないし、俺で解決できる事なんかないだろう。 それでも俺はお前にもっと何でも話してほしいと思う。 だから 「話せば楽になるさ、話してみるゆ」 オチをつけてみた。 話してみるゆ、想像以上に軽々しく男が口にしていい言葉ではなかった。 ちょっと後悔。 「ぷっ、馬鹿じゃないの。何が話してみるゆだよ」 「俺は真剣だゆ」 「ほら〜そういうとこが真剣じゃないんだよ。そんな人には話したくありません」 「む〜ダメだゆ。話してくれるまでは帰さないゆ」 「こらっ、離せ。おい、何胸揉んでるんだ。馬鹿たれ」 「近くにあったから掴んだだけゆ」 「ゆをつけて話すな〜キモいぞ」 笑ってくれた、今日ようやく笑った。 話してほしいのは山々だが、それ以上にちぃの笑顔が見られないのは悲しい。 やっぱり笑顔がトレンドマークだからな、ちぃにはいつも笑っていてほしい。 「全く、人さらいしてどこに連れていく気だよ」 結局、俺はちぃを連れてある場所を目指していた。 そこは 1 前にいった天文台 2 学校の伝説の樹 3 毎度おなじみ川原 「どこに行くかは教えてよ。ねぇ、ジミーっち聞いてる?」 「内緒だゆ」 「ゆはしつこいぞ。それ、禁止ね」 暗い気持ちの時は誰でもあると思う。 いつもおっちょこちょいで間抜けな事をする舞美先輩も、悩みはあるし解決しようとする。 そんな時、ゆをつけて話されたら怒るだろう…とは、あの先輩なら言い切れない。 訂正、熊井ちゃんがそういう時怒るはずだ。 でも、ちぃとなら仲直りするのに役立つ。 あくまでちぃぐらいだけど。 「場所は毎度おなじみ〜川原だよ」 「また〜あんたカッパでも探してるのかい。みつかったら、鈴木さんから賞金でるってよ」 「それはマジか?」 「噂だけどね。あはは、本気にするなって。あれ、ねぇ、ジミーっち、あそこにいるのオッシーじゃない」 オッシー? ネッシーやヨッシーの親戚で、世界の沼地や川に存在する新手の恐竜伝説か。 と、思いきや去年お世話になった押尾じゃないか。 草むらをかきわけて、網を片手に何をしてるんだ? 1 オッシーに何を探してるか聞いてみる 2 オッシーを無視して川原へ 3 ちょっ、オッシー逃げるな オッシーの様子は非常に気になるが、今は二人の時間を楽しみたいんだ。 悪いが、また会った時に話でもしようぜ、オッシー。 俺たちは川原に座り、少しの間何も話もしないでいた。 俺もちぃも、ここにはよくも悪くも仲直りする時に決まって寄るからだ。 前はちぃに浮気がバレて仲が冷えていた時期だった。 さっき見たオッシーこと押尾もその時に知り合い、そりゃもうズタズタになるまで殴ってくれた。 あれがなかったら、ちぃと俺どうなってたかな。 「ジミーっち、結婚ってどんなものだと思う?」 沈黙を破り、ちぃが唐突にこう切り出してきた。 しかも内容が結婚とは何でだ。 とりあえず真面目に答えるか。 「う〜ん、した事ないからわからないけど、愛があってするものだし、ずっと相手と一緒にいたいと思うものかな」 「ジミーっちはそうなんだ。でも、君の場合は難しいだろうね」 「何でさ、今はまだ学生だからだけど、俺は結婚したら浮気しないつもりだ」 ちぃはこう答えた俺をみつめ、またあの哀しそうな表情に戻った。 まるで今の答えでは、世の中甘くないぞと無言で言われているようだ。 何だ、ちぃやっぱり様子がおかしいな。 「ジミーっちさ、もしもちぃと結婚しようって言ったらずっと好きでいる自信ある?」 1 よく考えてからあると答える 2 よく考えてからないと答える 3 決まってる、あるよと即答 簡単に答えを決められる問題じゃないから、俺はじっくり考えてみた。 俺が想像できる範囲で、ちぃとの結婚生活を頭に描いてみた。 結婚したら、ちぃとは何人も子供が出来そうだ。 この少子化の世の中でどれだけいるんだって驚かされそうな人数作るか。 俺が家に帰ると子供たちに囲まれ、子供を抱いて笑うちぃが振り返る。 大人になっても舌ったらずな話し方をするのは変わらない。 ちぃらしいや、「おかえり〜」って笑うとたれ目がもっと下がるのは。 子供たちもちぃに似てたれ目な子が多くて、騒がしい娘に囲まれそうだな。 うん、これって理想的な家庭だ。 「ある。ちぃをずっと愛していく」 「珍しいね、ジミーっちが直感に頼らずに考えるなんてさ」 「考えてなんかないさ。想像してみたんだ、ちぃとの家庭を。そうしたら、幸せそうな気がしたから」 「私の目をみて」 私、自分のことをちぃが私と呼ぶ時は少ない。 こういう時、ちぃはかなり真剣になっていて冗談は通じない。 「ほら、嘘をついてる目じゃないぞ。俺は真剣だ」 「ジミーっち、あのね、ちぃはいくらジミーっちが好きでも結婚は怖いよ。 だって、だって、うちのお母さんとお父さんがさ…」 ちぃが目に涙をためて話し出した。 もう最後まで聞かなくても内容はわかったし、聞いていいのか迷った。 どうする 1 ちぃの話を最後まで聞く 2 聞いていいかわからないから抱き締める 3 キスして口を塞ぐ あんなに泣きそうなのに堪えて、話を続けようとするちぃはみていられず抱き締めていた。 「もう無理に話さなくていいよ」 「別れたら嫌だよ。ねぇ、こんな時どうすればいいかな。ちぃやお姉ちゃんじゃ力になれなくてさ」 「親の問題に子供が巻き込まれるのは辛いよな」 「うわぁぁ」 俺に抱きしめられながら、ちぃはわぁと声をあげて泣いた。 もう何も言葉にはしないで抱きしめる、それしか俺には出来ない。 ちぃがどれだけ泣いたかわからないが、泣き止むまで抱きしめていた。 ずっと泣いているんだ、相当溜め込んでいたんだろうな。 落ち着いてもらおうと何度も背中を擦ってあげた。 「ちぃ、俺は浮気性でどうしようもない奴なのはわかってる。でも、約束するよ。 結婚したら絶対に浮気しない」 「馬鹿、今から信じられるか。私の大事な後輩にまで手を出す奴が」 「えっ」 「岡井ちゃん、急に女の子らしくなってきてさ。何だろうって気になったから聞いてみれば、ジミーっち好きだって言うじゃん」 ちぃも女の子だな、そういう事に気付くとは。 信じてほしいのに。 俺はちぃを大好きだから 1 川原に向かって叫ぶ。「千奈美さん、あなたが好きです。愛してます」 2 指環を外させイニシャルをみせ、想いの真剣さを伝える 3 がむしゃらだ、キスする 俺はちぃがどんな時も外さない指環を、指から引き抜いた。 ちぃは大事な指環をどうする気だ、と不安げにする。 安心していいのに、これは俺が誰かに贈ったものの中でも一番高価なものだ。 お金ではなく気持ちの面で。 「指環の内側みてみな。これ、世界に一つしかない指環なんだぞ」 「あれ、文字が書いてある。JTOC.T?」 「俺からちぃに贈った証拠さ。こんな指環は誰にも贈ってないし、これからも贈るかわからないよ」 そう、こんなに真剣に人を好きにさせてくれたのはたれ目の誰かさんなんだ。 その気持ちは今も変わらない。 どんなに年をとって俺がおじさんになって、ちぃがおばさんになっても。 「ジミーっち、あんた本当にキザだよ。女たらし」 「抱きついて言うセリフがそれかよ。俺は女たらしですよ」 「うん、女たらしで世界で一番最低なくせに最高にカッコいい」 「どっちかにしろ」 「じゃあ、最低」 「そんな事言う口はこうだ」 もうお決まりだな、キスでちぃの口を塞いだ。 舌が自然と絡み合い、お互いに久々にするからなかなか離そうとはしない。 ちぃ、離さないから安心しな。 1 エビバデ野外エッチ、万歳 2 星が綺麗だ、みてみな 3 オッシーみてんじゃねぇよ 俺とちぃが熱々なキスを交わしてから、日が傾き、ちらほら星が空を彩る時間になった。 もうしばらくすれば星がはっきりわかるようになる。 川原はやっぱり俺とちぃには欠かせない場所になったな。 「ちぃ、空を見上げてみな。星が綺麗だよ」 「おっ、ちょ〜綺麗だ〜ジミーっちと星みるの久々だね」 「うん、久々だ。こんなに綺麗な星みてたらさっきまでの暗い気持ちも吹き飛ぶな」 「だね」 ちぃに辛いことがあったら笑わせてあげられる人でいたい。 そうなれたら嬉しい。 「ジミーっち、この指環前よりも大事になったよ。無くなさいから」 「あぁ、大事にしてくれ。それよりもちゃんとした指環贈ってあげられるまでさ」 「いらないよ。だってこの指環よりいい指環はないから」 ちぃ、ずっと一緒にいような。 「ふぅん、マネージャーも優しいとこあるじゃん」 「そりゃね。ちぃは大事な人だからな」 「おい、千奈美さんを前にそれを言うかな」 「千奈美だって大事だよ。世界に一人だけだからな。だから、指環はいつか贈りたい」 「うん、約束だぞ」 千奈美に指環を贈る、これはまた別のお話。 それはいずれ…