「兄さん!」 いけない。あのままでは兄さんが! 「何してるんだ、早くいけ!」 「で、でも、兄さんを置いてはいけません」 行かなきゃ。須藤さんのもとへ。頭ではそう分かってるんだが兄さんを置いてはいけない。 「お兄ちゃんいつまで私のパンツかぶってるのよ!早く取ってよもう」 「お、俺の屍を越えていけ、 !!」 「兄さん…!」 名前で呼んでくれましたね。兄さん、僕はあなたを忘れません。 絶対に忘れないから! 「あっこらジミー待ちなさい、どこにいくの」 「舞美だめだ、いかせないぞ。お前は家から出るなぁあ〜」 「お兄ちゃん離してよ足にしがみつかないで!こらっ、なんでスカートに頭入れて、バカぁ!」 俺がまた会うときまで生きてて下さい兄さん。行ってきます (須藤さんのところへ…!急がなきゃ、早く行かなきゃ!) もう日が暮れる。待ってくれ、まだ沈まないでくれ 風よりも速く須藤さんのもとへ急ぐんだ。速く! ってなんだ?こんなところに壁なんかあったか?!危ないぶつかっちまう。 「…どこへいくつもりだ?」 「っ!!!」 いま一番会いたくない人に出会ってしまったのだ。 記憶は一瞬にして甦った。俺はこの人にやられ記憶を失った。 自分のせいだとはいえ大切な記憶を… 「…………」 「まさか、俺の家…とか言わないよな?」 俺とは桁外れの体格の、須藤さんの兄貴。 ああぁ〜こわいよ、こわいよ〜、にらまないでください。 「黙ってんじゃない。答えろ」 「あ、あの〜…」 くそっ。こんなところで…ちくしょう! 1 違うルートからいくか 2 仕方あるまい。男にはやらねばならぬ時がある!いくぞ! 3 ゴリラが人間の言葉使ったから驚いちゃって …逃げたらだめだ。 俺は自分のために急いでるわけじゃない。 須藤さんの……ために 「そのまさかだよ。あんたの家にいくんだ」 「…ほう」 ちくしょう。怖いぞ。泣きそうだぜ。 だめだ、涙は見せたくない…俺は男の子なんだぞ 「簡単に行けるつもりじゃないよな」 「……………」 俺は誰かと殴り合ったことなんてない。 「こないのか?こないなら俺からいくぞ!」 「う、うわあっ」 痛みはなぜかあまり感じなかった。かわりに左頬にしびれた様な感じがして な、殴られたのか?ああそうみたいだ。ちくしょう 「お前みたいな浮気者のせいで妹は悲しんでるんだ。悪いがあわせるわけにはいかない」 やっと痛みを感じる様になってきた。うぐ、痛いぃっ! こんなの何発ももらって生きてられる程頑丈じゃないぞ。冗談じゃない 1 謝るふりしてダッシュ。力じゃかなわないんだ 2 あわせたくないだって?嫌だね。俺は会うんだよ 3 黙れゴリラ、胸でも叩いてろっ! でも、自分の体よりも大事なものがあるんだ。 「いやだね!俺は会いに行くんだ、あの子のところに!」 そうだよ。あの子に 「…茉麻に会いに行くんだぁああ!!」 名前、やっと思い出せたよ。ごめんな茉麻。 「お前がその名前を口にするんじゃない!」 くは…ぁ。き、きいたぁ、今度は鼻にきましたか。 あ…出てる出てる。コンクリートの地面に真っ赤なシミが次々にできていくぞ。 「どいてくれよ、邪魔しないでくれ、茉麻が悲しんでるんだよ。俺が行かなきゃいけないんだよ」 …ごめん茉麻。 まだ、君との思い出はもやがかかって何も見えないよ。 「だめだ。俺だって、お前を妹には会わせたくない。お前みたいなやつなんか…!」 この人の言うとおりあわせる顔なんか無いのかもしれない。でも行きたいんだ、頼む 1 力じゃかなわなくたって足なら負けないぞ。茉麻の家まで走る! 2 手段は選ばない、こうなったら一番弱い部分を 3 あら?なんだ、パンツをかぶった人が走ってくるぞ あ、あのパンツをかぶったマスクの人は誰だ? 夕陽に照らされたそのフォーム、まさか舞美先輩か。いや先輩はパンツをかぶる趣味はない。 「待つんだ須藤!俺の言うことをきけ!」 茉麻の兄貴はそのパンツの人を見て怪訝な顔をしている。 「…誰だお前。俺の知り合いに女の下着をかぶる趣味の奴なんていないぞ」 「バカ野郎、親友の声を忘れたのか。おまけに約束まで忘れるとは…」 「矢島か?なんでそんな格好してるんだ。上半身裸で」 つっこむのそっちかよ。確かに上半身裸だけどまず顔に下着を漬けてることをだな… 「言ったよな、ジミーを茉麻ちゃんにあわせてやれって。お前うんって言ったじゃないか」 「あ、あれは勢いで」 「あぁそういうこと言っちゃうんだ。お前勢いとか嫌いだろ?言い訳はみっともないぞ」 兄さんは茉麻兄を引き止めながら気付かれない様に「行け」と合図を送ってくる。 1 すいません、いきます! 2 ごめんなさい。茉麻の兄貴に認めさせるまで行けないです 3 誰だこのパンツ男は 兄さん、あなたはなぜそこまで俺に尽くしてくれるんですか。 「おい待てお前。逃げるつもりか」 うわっ気付いたか須藤兄、やばいぞ 「須藤悪いな」「うぉっ?!」 その時華麗な足捌きで足払いをかけ、巨体を軽がると薙ぎ倒してしまった兄さん。 「てめ、矢島、おい…うぷっ」 さらに、椅子にすわるようにその顔面におしりをつけて押さえ込んでしまった。 「ったく、俺がいなきゃ何もできないんだからなお前は。さっさと行けよ」 「ありがとうございます兄さん!ありがとう!」 顔にかぶったパンツを脱ぎ手をふるその姿、きっと俺が女だったら濡れていたにちがいない。 ありがとう。 「……はぁ…はぁ…やっと、ついた…!」 初めて家に行ったのはいつだったかな? なんだかなつかしい気がする。でも思い出せない… 1 ためらわずに入る 2 呼び鈴を鳴らす 3 あれ、ドアがあいた…?! でも場所は憶えてる。出てきてくれ茉麻、俺にその姿を見せてほしい ¨ピンポーン¨ 茉麻…君に会えばきっと何か思い出せる。 でも、ごめん、今は自分の記憶よりも茉麻の方が心配なんだ。 もしかしたら会ってもまだ記憶は戻らないかもしれない。 それでも記憶より茉麻のことが心配だ。大事なんだよ。 さあ…出てきてくれ。お願いだよぉ 長い。時間が物凄く長く感じる。茉麻…茉麻ぁ… …茉麻の兄貴もこれくらい妹が大事なんだろうか。家族がいない俺にはわからない。 でもわかりたいよ。その気持ち …足音がする。まさか茉麻か? あっドアが開いた。茉麻! 「……!!」 やっと会えた。茉麻 1 有無を言わず抱き締める 2 家に入る 3 会いたかったと叫び抱き締める 「きゃああ、な、なに、え?あ、きゃああ〜!」 玄関で俺に抱き締められて倒れこんできた茉麻。 「茉麻ぁ、会いたかった。よかった、無事だったんだ」 「… こそ無事だったの?なにその顔、アザだらけじゃない。まさかお兄ちゃんが」 「こ、こ、転んだんだよ。気にしないでくれ」 「うそでしょ。もうお兄ちゃん加減知らないんだから。待ってて、手当てしてあげる」 おい茉麻、体は大丈夫なのか? 「いたたたしみる〜!」 「我慢しなさい。男の子でしょう」 はは…もうさっそく茉麻に心配かけちまってら。 心配なのは俺の方だったのに。何日も学校に来てなかったから… でもこのぶんなら心配いらないな。 …言えなかった。まだ名前しか思い出せないことは。 「あの、さ」 「なあに?」 言うべきか、これを。 1 ごめん、まだ思い出せないんだ。茉麻との思い出 2 ちょっと痩せたんじゃないか?いい女になったな 3 おや?いやな気配が。あらお兄様おかえりなさい 「ごめん、茉麻。会えば思い出せるって思ったんだけど…」 俺は正直にまだ記憶が戻らないことを告げた。 「いいの、そんな都合よくいかないわよ。ね?」 「あ……」 茉麻の胸…あったかいよ はは、俺が安心させられてどうするんだ。 「明日から学校行ける。もう元気もらったから大丈夫だよ」 「…茉麻…」 思っていた以上に俺の記憶は手の届かない場所までいっちゃったみたいだなぁ。 こんなの、いつまで続くんだろう。 だけど今はいい。 茉麻がそばにいる。それだけで十分じゃないか。 「泣いてるの? 」 「いや…目にゴミが」