俺は放課後、一人ある教室の前で立ち止まった。 
そこには一人ダンスを踊る少女がいる。 
彼女は何分も前から俺が教室内をずっと覗いているのも気付かず、ダンスを夢中でやっている。 
その姿は圧倒されるものがあり、長い手足の指先の一つ一つにまで精神を張り巡らせているような正確さがある。 
もうプロかと見間違うレベルだ、と素人ながらに思う。 
どうしよう、ずっと見ていたい。 

1 もう少しこのまま見ていよう 
2 声をかけてみようかな… 
3 あれ、気付かれちゃったか? 



もう少し彼女のダンスを見ていよう。 
すごい、うちの学生にこんなにダンスが出来る生徒がいたなんて。 
俺は彼女のダンスが踊り終わるまで見続け、終わると同時に自然と拍手を送っていた。 
突然背後からする拍手に驚き、彼女は初めてその顔を見せてくれた。 
俺と目があうと、彼女は嬉しそうに目を輝かせて走りよってきた。 

「ジミー先輩、もう元気なんですか?キュフフ」 
「う、うん…元気だよ。それにしてもカッコいいダンスだったね。見とれちゃった」 
「ありがとうございます。先輩も人が悪いな〜見てるなら見てるって言ってくれればいいのに」 

彼女は俺のことをジミー先輩と呼ぶし、よく知ってるみたいだ。 
だけど俺は知らない、なのにそれを誤魔化して話を続けてしまっていた。 

「今休憩するところだったんで、先輩もよかったら一緒にどうですか?」 
「うん」 

厚い唇と笑うとキュフフと言うのが印象的な女の子だ。 
う〜ん、うまく思い出せない。 

「先輩、はい。いつも美味しいって言ってくれてたうちの牛乳です」 

そう言って彼女は俺に牛乳瓶を手渡してきた。 
牛乳…何だろう、こんな場面前にもあったようななかったような… 

1 君、早貴ちゃんだよね? 
2 ぷはぁ〜うまい牛乳だぁ。って、何も思い出せてないな 
3 痛い…思い出そうとすると頭が… 



手渡された牛乳を俺はとりあえず飲むことにした。 
思い出せそうなのに思い出せない、そんな感覚を味わいながら。 

「ぷはぁ〜美味い。この牛乳はすごく美味い」 
「キュフフ、先輩美味しそうに飲みますね。もう口から牛乳垂れてますよ」 

彼女は俺の口からだらしなく零れる牛乳をハンカチで拭き、満足そうに微笑んだ。 
その笑顔に思わず胸がしめつけられる想いがしてしまう。 
綺麗な子だ、顔から仕草から何まで上品な感じがする。 

「先輩、何顔を紅くしてるんですかぁ?前ならこんなくらいじゃ照れなかったのに」 
「いや、そのぉ…君が綺麗だったから…」 
「せ、先輩…や、やだなぁ〜お世辞なんて似合いませんよ」 

記憶は思い出せないのに体はこの子を覚えているのか、どんどん熱くなってくる。 
それに記憶がない、って大事なことを話した方がいいかな… 

1 話してしまわないと彼女に悪いし、話そう 
2 いい雰囲気だ、うまく誤魔化せ 
3 何より今は彼女のほんのり紅い頬を撫でてみたい 



俺は覚えてないのに覚えているふりをして彼女に接するのはよくない事だ。 
よし、ここは打ち明けてしまおう。 

「あの…俺ね、しばらく学校休んでいたでしょ」 
「はい…だから、私もすごく心配したんです。病院にお見舞いに行くと、栞菜が私が看病するからいいって言って…」 

そうか、栞菜ちゃんも知り合いなのか…なら、何で栞菜ちゃんは彼女をお見舞いさせなかったんだ。 
お見舞い出来なかった事を残念がる彼女の横顔がとても辛そうなのが俺も辛くさせる。 

「お見舞いに来てくれてたんだ…ごめんね、会えなくて」 
「いいんです。今、こうして会えたから私は嬉しいです」 
「それで肝心な本題だけど、俺その時に記憶障害があるって言われて。今も君の事がわからないんだ」 
「…」 

彼女は言葉を失い、俺から視線を反らして俯いてしまった。 
そして膝を抱えるように座り、しばらく何も話してくれなかった。 

「栞菜、酷いよ。先輩がそんなに重症なのに一言も言ってくれないなんて…」 

俺はかける言葉もなく、オロオロとするばかりで彼女に何もしてやれない。 
彼女は俺を涙目で見上げ、何か言いたそうにしている。 

「先輩、辛かったよね。しかも殴られたって噂で聞いたよ、痛かったよね」 

まるで自分の事のように悲しんでくれる彼女の涙は本物だ。 
その彼女にどう応えてやればいい 

1 素直に辛かったと話す 
2 今は平気とアピールする 
3 彼女の涙を見ていられないと拭う 



空元気でも彼女には平気とアピールして安心させてやりたい。 
あんなに可愛い顔を涙で濡らしたくはないから。 

「今はまだ記憶も一部抜けてるけど、もう平気だよ」と、涙を指先で拭いながら答えた。 
「先輩、本当に無理しないで下さいね」 
「うん、君みたいな可愛い子の涙はみたくないよ。嬉し涙なら別だけどさ」 
「またぁ、先輩はギザなセリフを吐くんだから。記憶無くしてもそんな所は変わらないんですね」 

やっと笑ってくれた、それもとびっきりの笑顔で。 

「私は中島早貴です。友理奈ちゃんと同じ学年です」 
「早貴ちゃんだね、うん、絶対忘れないよ。こんなに可愛い子だから」 
「やっぱり記憶無くしてもジミー先輩だ、キュフフ」 

人差し指を口に持っていって笑う仕草がよく似合う。 
早貴ちゃん、記憶を思い出せない俺の痛みを自分の事のように悲しんでくれた優しい子だ。 

「先輩、あのやっぱり辛いことありませんか?私と一緒に嫌な事を吹き飛ばしません?」 

いきなり早貴ちゃんはいい事を思い付いたとばかりに話してきたが、嫌な事を吹き飛ばす方法って何だろう。 
素直に話そうか… 

1 今はないよ 
2 早貴ちゃんなら吹き飛ばしてくれそうだ、話そう 
3 女の子の記憶が思い出せない事かな、特に早貴ちゃんの 



早貴ちゃんは俺の痛みを悲しんでくれた、その行為に偽りはないと感じ、嫌な事を話すことにした。 

「今ので全部ですか?」 
「うん、全部」 
「わかりました。いきますよ、こうするんです」 

早貴ちゃんは自分のバッグから携帯を取りだし、誰宛かわからないがメールを打ち始めた。 
メールにしては長い間打つな、と俺は早貴ちゃんの指の動きを見守る。 
しばらくして、出来ました〜と言うと送信と言ってボタンを押した。 

「誰宛にどんなメール送ったの?それにさっき聞いた話は関係あるのかな」 
「それはこういうことです」 

早貴ちゃんが俺に見せてくれた画面には、俺が話した嫌な事がびっしり書かれていた。 
おいおい、さっき聞いた事を誰かに送ったって言うのか、信じられない… 
早貴ちゃんを信じて全てぶちまけたって言うのに酷い…と、俺が落ち込んでいると 
「心配しないで下さいね、これは嫌なことを空メールしただけですから」とフォローを入れてきた。 
「でも、送信って」 
「送信は口癖で言っちゃうんです。心配しましたよね、キュフフ」 

早貴ちゃんが悪戯っぽい笑顔を俺に初めて向けてくる。 
それが何だか嬉しかった。 

「先輩、嫌な事は吹き飛びましたか?」 
「うん、一気に吹き飛んでいったよ。早貴ちゃん、ありがとう」 
「どういたしまして。よかった、先輩も笑ってくれたぁ」 

早貴ちゃんが今日みた中で一番の笑顔をくれた。 

「先輩、今度ダンスの大会があるんです。私、部の代表で出るんです。それで…」 

早貴ちゃんはまたダンスの練習を再開すると言い、教室の真ん中に立ち振り返ってこう言ってきた。 

「先輩に応援に来てほしいんです。私、先輩が応援に来てくれたらきっと頑張れるから」 
「わかった、約束するよ。応援にはかけつける」 
「よかった〜来てくれるって約束してくれて」 

そりゃ約束しないわけにはいかないよ、俺の応援を待ってくれてるんだから。 
絶対にかけつけるよ。 

「あっ、でもこの約束も記憶無くしたなんて言わないで下さいね」 
「言わないったら。俺はもう誰の記憶たりとも忘れないって誓ったんだから」 
「はい、じゃあ約束ですよ」 

指切りをしようと俺が小指を差し出して笑うと、早貴ちゃんは手をどかし顔を近づけてくる。 
えっ…まさか… 

「はい、これで忘れない」 

早貴ちゃんは俺の唇にあの厚い唇を重ねてきた。 
それもごく自然に。 

「先輩が私を大事にしてくれるなら、私も大事なものあげますね。キュフフ」 

君の大事なものを受け取るまで、俺はきっと君を大事にするよ。 
汗を飛び散らせて踊る早貴ちゃんを眺めながら、心に固く誓った。 


イメージ画像 (*マネ)<二人とも好きなんだなぁ。ほらほら見てごらん松茸だよぉ! 州´・ v ・)<うるさい。エリンギ ノノl∂_∂'ル<しめじのくせに
从o゚ー゚从<出番まだなの? (マネ)<…俺も記憶喪失みたいで高校の頃のことあんまし覚えてないわ 从♯o゚ー゚从<いいから思い出せとゆいたい (マネ)<無茶言うなよ、誰か書いてくれるまで記憶はないも同じなんだ 从o;ー;从<…難しい話でわかんないわ。とにかく高校の私出してよ (マネ)<最後に言っておく。誰か茉麻をよろしく 从o゚ー゚从<いないならお前が書けとゆいたい