つらくたって考えようによっては前向きに生きていける。 

焦っても記憶は簡単に戻らない。少しづつかけらを見つけて拾い上げて集めていくしかないんだ。 
「きれいな空だな…」 
相変わらず授業をサボり屋上のベンチで寝っ転がっていた。 
「いい天気だぁ〜」 
5月になったばかりで衣替えにはまだ早い。 
しかし冬服では暑いので上着を脱いでまるめて枕にしていた。 

実はまだあんまり誰かとかかわりたくなかったり… 
ちゃんと記憶を戻してから向き合いたいんだよ。今のままじゃ傷つけてしまうだけだ。 

……ん? 

足音がする。気のせいか? 
こんな時間にわざわざこんな場所に来るとはいったいだれだ。 

1 起き上がって顔を見る 
2 めんどいから起きない 



めんどいから起きない。今日はずっと寝てるぞ。 

足音がだんだん大きくなってくる。俺に近づいてきてるのか…? 
…止まった。いったいだれだ。 

おそるおそる目を開けてみると 

うっわ、見てる。ていうか顔がめちゃ近いぞ!俺を食い入るように覗き込んでる。 

あれっ、この顔、見覚えがある…!!あの人じゃないか!! 

「ま、舞美先輩?!」 

一瞬にして記憶がよみがえった。俺が出会ったなかでもインパクト強いからな、当たり前かもしれない。 

……あれ? 
よく見ると、髪が短いぞ。それに制服は女子のじゃなくて俺と同じだ。 
先輩、男装してるのか?そんな趣味があったなんて 

1 いや待て、この人舞美先輩じゃない! 
2 確かめるために胸を触らせてもらう 
3 寝たふり 



いやこの人は舞美先輩じゃない。匂いが違う。 
あのくらくらしそうな匂いじゃない…この匂いは¨男¨だ! 
「誰だおまえは!」 
「お前こそ誰だ。人の指定席に無断で寝てるとは」 

男にしては高い声だな。 
…この声、舞美先輩に似てる。ちょっと低くなればこうなるかもしれない。 
「どけよ。悪いが寝るなら他にしてくれ」 
「あ、ちょっと!うわっ」 
無理矢理俺をどかしてベンチに横になったその人。 
いったいなんなんだこの人は?体は大きいけど細いな。でもただ痩せてるだけって感じじゃない。 

「……すぅ…」 

もう寝ちゃったわ。 
…うぅ、なんかどきどきする。俺は男になんか興味はない、なのになんでだ? 

この寝顔、あの人に似てる。そのせいなのか? 

1 もう少し近づいてみよう 
2 他で寝るか。保健室にしよう 
3 …誰か走ってくる。あの美しいフォームは 



また誰か来たぞ。これ以上人が増えるのは… 

「舞美先輩?!」 
…あの美しいフォーム。完璧としかいいようのない姿は間違いない、先輩だ。 
「先輩!あの…」 

話し掛けようとしたら先輩はベンチに寝ているその人に掴み掛かった。 
「ちょっと!話はまだ終わってないんだから!」 
ワイシャツの首もとをつかみがくがく力で振りまくって… 
「い、痛い、痛いよ、寝かせてくれ」 
「だめ!いつもそうじゃん、私の話聞いてくれないんだから」 

いきなり険悪だなぁ。 
…先輩、こっち向いてくださいよ。そんな人なんかほっといて 

1 先輩…俺の方を向きなさい 
2 なんか話し掛けない方がいいかも 
3 二人はどういう関係でしょうか 



いかん、先輩目が血走ってるぞ。あれは近づかない方がいい。 
「ま、舞美…わかったよ。手は出さないって言ってるじゃないかよ」 
「だめ!お兄ちゃんがそうやって適当に返事する時はぜったい約束を守らないから」 
「く、苦しい、兄貴を殺すつもりか、はなせ…けほ」 
「…ご、ごめん」 

…終わったか。喧嘩。 
いったいこの人は先輩のなんなんだろう。顔が似てるから、ていうか瓜二つだからまさか… 

「……ジミー?」 
「先輩、喧嘩はもう終わりましたか」 
「良かった、無事だったんだ!私のことも憶えてたんだね!」 

あぐ、苦しいです、そんなに抱き締められたら… 
「離さないからね!大好きだよ、大好きだから!!」 
「せ、せんぱい、ベアハッグはやめてくださ、骨がきしんでますぅぅぅぅぅ!」 

ちぢんじゃう、折れちゃう、骨がバラバラになっちゃう! 

1 勘弁してください。殺されたくないです 
2 だめよ、男が見てる前でそんなに激しく抱かないで 
3 きもちいいっ、もっと抱いて。こうなりゃやけだ 



「か、勘弁してください、殺されたくないですぅう」 
「あ?ああ、ごめん」 
「わっ?!」 
…いててて、急に離したから地面に落ちた。 
ほんとあっさり体を離したな。先輩ったら… 
「もうジミー心配したんだよ。殴られて記憶なくしたなんて聞いたから」 
なんで会いに来なかったんだろう。聞いてみようか 
「ごめん。会いに行きたかったけど運悪く部活の大会練習と重なっちゃってね…」 
それじゃ仕方ないか… 

「…お前か、舞美の彼氏っていうのは」 
急に先輩の兄貴が立ち上がり、俺の前に威嚇するように立ちはだかった。 
「お、お兄ちゃん、やめてよ。乱暴しないでっていったでしょ?!」 
舞美先輩が俺をかばうようにその人と向かい合う。 
「…どけ。そいつと二人で話がしたい」 
「やだ、どかない」 
「舞美…兄貴のお願いをききたくないのか?もう一緒に風呂入らないぞ」 
「ずっと前から入ってないでしょ!!」 

脅しのつもりなのか?その言葉。よくわからないが何か得体の知れない威圧感がある… 

1 先輩を抱っこして逃げ出す 
2 二人で話をしてみようか 
3 ほっといて寝る 



…話してみよう。 
俺の直感がそう決めた。 

もしまたこないだみたいになって記憶を無くしたら 
…どうしよう。まだ完全に戻ってないのに、今度はもう二度と思い出せないかもしれない。 

それでも、俺の直感が二人で話せと言っている。 
「先輩、二人にさせて下さい」 
「だめ!」 
「…お願い。大丈夫、二人にさせて」 
「……………」 

舞美先輩は俺をしばらく見つめたあと、また抱き締めた。 
「…殴られそうになったら助けてください」 
「ばか」 

精一杯の、冗談。せめて笑ってほしかったから。 
何度も振り返りながら舞美先輩は屋上から去っていった。 


…二人きり。 
ものすごく、怖い。空気が重い、息苦しい… 

「……………」 

顔も雰囲気もそっくりなくせに今いるこの人は舞美先輩じゃない 

1 話ってなんです 
2 だめだ、逃げよう 
3 …手招きしてる、あれ、ベンチにすわったぞ 



なんだよ、話したいって言ってたのにベンチに座ったぞ。 

「まあ来な。こっちだ」 

手招きしてる。なんで笑ってるんだよ、薄気味悪いな。 
「早く来いってば」 
「は、はい…」 
言われるがままベンチに座るといきなり肩に手を回してきた。 

…やばい捕まった。こりゃ殺されるな。 
うわぁその笑顔がめちゃくちゃ怖い…怒ると笑顔になるタイプなのかなこの人。 
「お前、何人も彼女がいるんだってな。須藤から聞いてるぜ」 
須藤…俺の記憶をバラバラにしたあの人だ。 
「は、はい」 
「………………」 

にらんでる、じーっと見てる。蛇ににらまれたカエルってこんな感じなんだろう… 

「舞美は何番目なんだ?」 
「えっ?!」 
「何番目なんだよ、お前の中では」 

ううう、逃げ出したい。そんな質問答えられるか! 

1 一番に決まってるでしょうが!! 
2 か、かなり上位です… 
3 ごめんなさい、実は俺には本命が… 



「い、い、い…」 
「なんだ?」 
「一番に、決まってるでしょうが!!」 

響くぐらいのばかでかい声で叫んだ。 
「…………」 
「一番です。舞美先輩は俺にとって」 

「……………」 

なんで何も言わないんだ。思ったことを口にしたのに。 
「お前はあれだな…つくづくあれだ。実際会ったのは今日が初めてだが、ウソつきだな」 
そんな。どうして信じてくれないんですか。 

ぽん、と俺のおでこに手のひらを当てて低い声でつぶやいた。 

「知ってるよ。本命がいるってことをな」 

全身から血の気がひいていくのがはっきりわかった。 

…生きて帰れない。そう、覚悟した。 
いや、諦めたと言った方が正しいだろうな。 

1 仕方ない、か…まさかこんなに早く死ぬとは 
2 やだ!死にたくない!死にたくない! 
3 せめて抵抗してやる 



仕方ないか。まさかこんなに早くお迎えが来てしまうとは。 

「……目、とじろ」 
言われるがままに目を閉じた。 
なんだか、執行寸前の死刑囚の気持ちがよく分かるぜ。 
こんな気持ちなんだな。ああ、どうせやるなら早くしてほしい 

早く、早く…… 


¨ピシッ¨ 

「…へ?」 
やけに痛みが軽くてしかもおでこだったから思わず目を開けてしまうと、 
「そんなにびびるなって」 

一瞬舞美先輩と見間違えたその笑顔が。 
「可愛い妹との約束だ。大事な人を傷つけないって」 
た、助かったのか? 
よく状況がわからないんだが、さすがに妹の頼みとはいえこんな最低な男を簡単に許せるとは思えない。 

…何か他に理由があるんじゃないだろうか? 

1 聞いてみよう 
2 た、助かった、早く逃走しなければ 
3 兄貴と呼ばせてください 



「舞美先輩の頼みだから俺を殴らなかったんですか…?」 
「そうだよ。まあそれだけじゃないけどね」 

…ここで初めて知った。舞美先輩はかなりのお兄ちゃん子で、小さい時からいつもくっついていたらしい。 
好きなタイプはお兄ちゃんだってつい最近まで言ってたのに、俺が彼氏になってからはあまりくっつかなくなった、と。 
それなら妹を奪った俺が憎らしいはずなのになぜ? 
「実はさ…俺、お前と同じなんだわ」 
「お、同じですか?」 
「そう。言い方は悪いが昔からたくさんの彼女をとっかえひっかえでね…」 

思わず吹き出してしまった。まるっきり俺じゃないかよ。 
「女の子の間でも噂になってるぜお前。知らないか?」 
「……よく知ってます」 
「だから舞美がお前の彼女になったのを知って笑っちまったよ。ああ、やっぱりタイプは俺みたいなのかなって 


…なんだか、複雑だ。 
俺みたいなのがこんな身近にいたとは。 
確かにもてるだろうな、こんなかっこいいんじゃ。 

1 …本命っているんですか? 
2 舞美先輩とはいつまでお風呂に入ってたんですか 
3 この浮気者! 



「舞美先輩とはいつまでお風呂に入ってたんですか?」 
「…知りたいか?」 
「はい、知りたいです!」 
あ、笑ってる。そういう悪戯っぽい笑顔ホント舞美先輩にそっくりだぜ。 
冗談抜きで遠目から見たら舞美先輩と見間違えそうだ。 
「ヒント…俺はお前の話をお風呂でよく聞いていた」 

そ、それってそんなに前じゃないじゃないですか! 
うらやましい…舞美先輩とお風呂に入れるなんて、しかも毎晩、うらやましいぃい! 
「…お前は舞美とエッチしたんだろ。うらやま…いやなんでもない」 

お兄様、いま危ない発言をしましたね。 
萩原と同じタイプか。いや萩原ももてるが舞ちゃんにしか興味を示さない。 
悪いが人としてはこの人の方が下だな…俺と同じレベルだ 

…とにかく命は助かったわけだ。ふう、本当に覚悟してたぜ。 

「もう話は終わったの?ジミー、殴られなかった?」 
「だ、大丈夫です…」 
駆け寄ってきた舞美先輩にまた体をしめあげられ、いや抱き締められた。 

同じ兄貴でも色んな人がいるんだな。 
茉麻の兄貴はそりゃもう大変で、舞ちゃんの兄貴は極度のシスコンで 
んで舞美先輩の兄貴は俺と同じく浮気性とは。 

…俺を怒らなかったのは本人も言ってた通り俺と同じ様な人間だったからか? 

いや、まだわからないぞ。この人はそんな単純じゃなさそうだ。 
やっぱり単純か?あの舞美先輩の兄貴だからなぁ… 

「…いずれお前とはまたゆっくり話をしたいね」 
そう言い残し、屋上から去っていった。 
「舞美!俺がいなくなるからってスポセクすんなよ!」 
悪戯に笑う兄貴と、顔を真っ赤にしてバカーと怒鳴る舞美先輩のやりとりがなんか可愛かった。 

「もう信じらんない!ホント無神経なんだから!」 
…いえ、さすがあなたのお兄様です。なんかそっくり 
「なに笑ってんのよ、もう、心配したんだから」 


先輩、いまは俺だけ見ててほしいです。 
たとえそれが許されないワガママだとしても 


(ジミー)<キョロキョロしてどうしたんですか? 从*・ゥ・)<うちのお兄ちゃんいないかと思って (ジミー)<いないですよ、そんないつも見張ってるわけないですから 从*・ゥ・)<だね、じゃあ〜エイ (;ジミー)<せ、先輩何を? 从*・ゥ・)<久々だし我慢できないからここでしよっ (;ジミー)<いや、屋上はお兄さんがよく来る場所みたいで今ももしかしたら 从*・ゥ・)<平気平気。いくよ〜 (ジミー)<先輩…激しいです…うぅ… 从*・兄・)<…ま、舞美、あいつ…やっぱり激しいのな…シコシコ 从*・ゥ・)<はぁはぁ、もうダメっ。気持ちいいっ (ジミー)<先輩、いっちゃいます… 从*・兄・)<ジミー、俺もいきそうだぜ。舞美〜 (*ジミー)<先輩〜 从*・ゥ・)<? 何かお兄ちゃんの声したような? (;ジミー)<先輩、気持ちよかったです。ふぅ 从*・ゥ・)<何いってんの。まだまだガーッとやるよ (;ジミー)<ちょっ、ま、待って下さい。た、助けて〜 从;・兄・)<アイツ、さすがだな。我が妹ながら恐ろしい体力だ… 从*・兄・)<お、舞美のお友達?いらっしゃい 州´・ v ・)<あ、舞美ちゃんのお兄さんですね、はじめまして 从*・兄・)<可愛いね、ゆっくりしていってね 州*´・ v ・)<え〜、そんな可愛くないですよぉ 从#・ゥ・)<ちょっとお兄ちゃん!勝手に部屋入ってこないでよ!もう出てって! 从#・ゥ・)<もう!何でいつも勝手に私の部屋に入ってくるの! 从;・兄・)<いや、つい… 从#・ゥ・)<あたしの友達にヘンな色目使わないで! 从;・兄・)<つ、使ってないったら! 从#・ゥ・)<もう…私は絶対彼氏とかはお兄ちゃんみたいな人じゃない人にするんだから!! (ジミー)<あ、舞美先輩 从*・ゥ・)ノシ<ジミー!! 从;・兄・)<「好きなタイプはお兄ちゃん」は直らないままじゃないか…