高校生活がはじまって1か月が過ぎた。この1か月は・・・いろいろとありすぎた。 
とても落ち着いていられる状況じゃなかった・・・ 
入学式が終わったらすぐにボコボコにされ記憶障害になり、大勢の女の子に心配をかけた。 
会って記憶がよみがえった子もいれば 
思い出せないけどそれでも俺のことを好きだと言ってくれる子もいた。 
まだ、顔を合わせていない女の子もいる・・・ 

俺はいったい・・・どれだけの女の子を思っていたんだろう? 
うぬぼれではないけど、どれだけの女の子に慕われていたんだろう? 

GWに入る前、友達や女の子たちからいろいろとお誘いを受けたがどうしても気持ちを整理したい日がほしいと思って、今日だけは全部断った。 
何をするわけでもないんだけど、1人になってゆっくり考えてみたくなっていた。 

考え事をする性分じゃないけど、部屋ん中に閉じこもってばかりじゃ気が滅入る。 
そう思ってちょっと遠出して見知らぬ公園のベンチに座っていた。 

「はぁ・・・」 

考え出すとますます俺自身がわからなくなってイヤになりそうだった。 
そんなとき、公園の入口から犬が俺の足もとに駆け寄ってきた。 
そいつは俺の顔を見上げてなぜか得意げな(?)顔をしてしっぽを振っていた。 

「なんだよお前、かまってほしいのか?」 

若干気がまぎれて、犬と遊ぼうとしたときだった。 
飼い主らしき女の子の声が聞こえた。 

1. ∇^)||「ミント〜、どこ行っちゃったの〜、ミント〜?」 
2. ―・リ「リップ、確かこっちに行ったはずなんだけど・・・」 
3. ゥ・从「アロマ〜、コロンママがおうちで待ってるから帰るよ〜?」 
4. v・)「マロン?もう、1人で帰ってこれないんでしょ?ちゃんと出てきなさ〜い!」 



「ミント、ひょっとしてお前の名前か?」 
「ワンっ!」 
会話はできないはずなんだけどこの犬の気持ちはなぜかわかる気がして、名前がミントだということは直感で感じ取れた。 
とりあえずはミントと一緒にベンチで飼い主の女の子を待つことにした。 

「あ〜、見つけた〜。も〜、勝手にどこかに行っちゃダメでしょ!うちのミントがすみませ〜ん」 

俺が顔をミントから女の子に向きなおしたところで 

「あっっ!」 

ん?背の高い女の子が俺の顔を見て凍りついてしまってる。 
表情がこわばったままだ、どうなってるんだ? 

1.とりあえず笑顔でミントを返す 
2.かわいい子なんで名前を聞いてみる 
3.笑わせるために「お化けの救急車〜」 



女の子の名前はわからないけど、とりあえずはちゃんとミントを返してあげないとな。 
俺は笑顔でミントを抱き上げてその子に渡そうとした。 
「ミント、飼い主さんが迎えに来てく「センパイッっっ!!!」 

えぇっ!いきなり抱きついてきたよ、この子! 
どーなってるんだ?ミント、お前なんかわかるか? 
「ワンっ!」 
・・・こんな時はわからないのな、犬の気持ち・・・ 

「センパイッ!ジミーセンパイッ!ジミーセンパイッ!」 

抱きついて、そのまま泣いて涙を流している。 
この子とも俺は何らかの関係があったのだろうか・・・ 

1.髪をなでて落ち着くまでこのままでいてあげる 
2.自分との関係を率直に聞いてみる 
3.とりあえず顔を流れる涙を拭いてあげる 



「センパイ〜、ひーん、センパイぃぃ」 
背が高いんだけど、すごく泣き虫だった女の子。 
・・・何かが心の奥で引っかかっているんだけどどうしても出てこないもどかしさ。 
悔しいんだが、どうしてもこの子のことが思い出せない・・・ 
泣き顔を見るのが心苦しくなって、俺は女の子の涙を手で拭ってあげた。 
「えへへ、センパイの手、いつもあたたかいなぁ」 
女の子は俺の手に触れながら、やっと笑顔になってくれた。 
・・・この笑顔、絶対に見たことがあるはずなんだけど・・・ 

女の子はようやく落ち着いてきて、俺の顔を見ながら 
「センパイ、ずっと会いたかったんだよ。でも、入院してたって聞いてたから、いつ会えるのかわからなくって・・・」 
「う、うん」 
「ずっとずっと心配だったんだよ。」 
「あ、あぁ、えーと・・・」 
「もう、センパイ。ちゃんと私の話聞いてます〜?」 

1.正直に謝り、記憶障害になったことも話す。 
2.ごまかすためにミントと一緒に遊ぼうという 
3.ストレートに名前を聞く 



ごまかしてもしょうがない、ここは正直に今まであったことを話そう。 
「・・・本当に会いに行けなくてごめん。俺、ボコボコにされて記憶の一部が思い出せないんだ」 
「えっ!」 
「だから、まだ君の名前も思い出せてないんだ。本当にごめん」 
「そんな…」 
女の子は呆然とした顔で俺の顔をじっと見てる。 
俺はそんな女の子のことを不安そうに見てしまっている。 

時間にしてみれば数秒のはずの沈黙が、俺には1日よりはるかに長く感じられた。 
女の子は表情をきりっと引き締めて、意を決したかのようにこう言った 
「じゃあセンパイ、 

1.私ともう一度付き合ってください!」 
2.私に何か手伝えることがあれば言ってください」 
3.ジミントだったことも覚えてないんですね?」 



「じゃあセンパイ、私ともう一度付き合ってください!」 
「えっ!」 
「記憶がなくなってる、ってことは今までエンジョイしてきた思い出がわからないってことじゃないですか」 
「うん…」 
「そんなの、絶対センパイにとって苦しいし、悔しいことです」 
「そう、だね」 
「私はセンパイが苦しかったりするのはイヤ!センパイと楽しくエンジョイな生活がいいんです」 
「・・・ありがとう」 
「私と新しい思い出を作っていくうちに、前のことも思い出せるようになるはずです。そしたらもっとエンジョイできるようになりますよ!」 
すごく心が救われた感じだった。この子との思い出を忘れてしまってる俺なのに 
まっすぐな気持ちで俺と思い出を作ってくれる、と言ってくれてる。 
確かに、引っかかっている心の記憶が思い出作りのうちによみがえるかもしれない。 
そう思うと自然と涙がこぼれ落ちてきた。 
「本当にありがとう、あの…」 
「もぅ〜、センパイも泣き虫さんなんだから〜」 
大きな体を少しかがめて、俺の涙をハンカチで拭いてくれた。 
・・・心地いいな、この包み込んでくれるようなオーラが・・・ 

途中まで一緒に帰ろう、ということになり女の子との帰り道 
「ごめんね、本当にいろいろと」 
「いいんです、センパイ。センパイには楽しい思い出がいっぱい必要なんですから」 
「それでさ、聞きにくいんだけど、名前・・・」 
「そうでした、記憶がないんだから名前もわからないんですよね。」 
「うん・・・」 
「じゃあ改めて自己紹介します!熊井友理奈です。センパイは熊井ちゃんって呼んでくれてましたよ」 
「熊井ちゃん・・・」 
「ハイッ!センパイ」 
「熊井ちゃん」 
「どーしたんですか?」 
「いや、なんとなく、ね」 
熊井ちゃんとの思い出、引っかかってる心のもやもやを何とか吹き払いたい。 
そう思った俺。 
「センパ〜イ!今度は学校でいっぱいお話しましょーね〜!」 
帰り際、大きな声で俺に呼び掛けてくれた。 
この子の笑顔をたくさん見たい、と思って俺はいま俺にできる最高の笑顔で答えた。 
「うん、今度は学校でね〜!」