ようやく長い長い復帰1日目の授業も終わった。 久々に授業やるとやっぱりしんどいな。もうクタクタだよ。 1日学校にいたお陰で色んなことを思い出すことができた。 あの日、何があったのか。ちぃのこと、雅ちゃんのこと、梅田先輩のこと。 俺はなんて色んなことを忘れてしまってたんだろう。 大事なみんなとの思い出を忘れてしまうなんて。 もちろん、まだ全部を思い出したわけじゃない。 それもこれから思い出さなきゃいけない。 何より気になること。 ちぃは俺の帰る場所だと言った。 栞菜ちゃんと俺は愛し合ってる関係らしい。 愛理ちゃんは俺の彼女だという。 多分雅ちゃんとも何かしらの仲だったみたいだし。 みんなのことは好きだ。 けど、だけどだったら何でこんなことになってる? 俺にはちぃしかいない、お昼には確かにそう思ったけど。 考えれれば考えるほどおかしい。 確かめなきゃ。 確認することで、誰かを傷つけることになるかもしれない。 だけど、忘れたままでいることは、多分もっとみんなを傷つけることになるに違いない。 1.ちぃ 2.栞菜ちゃん 3.愛理ちゃん 4.やっぱダメだ、聞けない、帰ろう 5.他に忘れていることを思い出すため、校舎を徘徊 …いやでも、やっぱりみんなを傷つけることは怖い。 ちぃにしてもみんなにしても、今回の件でいっぱいいっぱい傷つけたんだ。 まだ思い出していないことがあるなら、そのピースを合わせればこの答えだって出るかもしれない。 自分を取り戻すんだ。 みんなに確認するのは、それからだって遅くない。 そう思った俺は、放課後の校舎を歩いてみることにした。 医者の先生も、色んな人と触れ、話をすることが記憶を取り戻す一番の近道だって言ってたし。 お見舞いに来てくれてた後輩たちのことも、まだ思い出してないこともあるかもしれない。 さて、どこに行ってみようかな。 1.高2のフロア 2.中等部校舎 3.グラウンド 高2のフロアに上がってみることにした。 クラスメイトに後輩たちには会えた。 覚えてる限り会ってない、そして携帯に入ってたアドレス。 「清水先輩」「舞美先輩」「桃子先輩」。 梅田先輩が「舞美」って呼んでたことを考えると、1つ上のはず。 会えるかな?っていうか、会って俺、分かるかな? そんなことを考えながら廊下を歩く。 な、なんか緊張するな、先輩だらけの廊下って。 ふと窓からグラウンドを見下ろすと、トラックを走る一人の生徒に グラウンド中の生徒の視線が集まってることに気がついた。 ものすごい速さで髪をなびかせて走っているあの人。 …舞美、先輩…? 周囲の声援や視線なんて全く気にしないでひたむきに走っている表情がすごいキレイだった。 あの人とも、俺は何かあった…? ―ドクンッ ―今後矢島の妹といるとこみたらうちの妹共々別れさせるからな― 「う…ぐっ!?」 何だ今の感じ。 記憶がフラッシュバックする、汗が吹き出る。 嫌な感じだ、頭がクラクラする。 舞美先輩と、何かがあった? いや違う、「あの男」、だ―。 あの先輩を、俺は傷つけた? 分からない、分からない。 立ってられなくなり、俺は柱にもたれてしゃがみ込んだ。 胸を押さえて深呼吸して。 ようやく気分が落ち着いてきた頃。 「うそっ…ジミー…!?」 誰かが俺を見下ろしているのに気付いた。 「ジミー!!」 「うわっ!!」 立ち上がるのと、その先輩が飛びついてくるのは同時だった。 「良かったジミー!心配したんだから!!学校来たんだ!?いつから!?」 「え…あ、今日からです」 色白で黒目と黒髪が印象的な先輩だ。 えっと…えっと? 1.ご心配おかけしました、桃子先輩 2.えっとすみません、桃…子、先輩ですよね? 3.…ホントごめんなさい、どちらさまでしたっけ? この先輩とは会ったことはある、間違いない。 けど… 「えっとすみません…桃…子、先輩ですよね?」 「は!?」 俺が明らかに空気読めてない台詞を発した瞬間、先輩は俺を引き剥がしてきた。 その顔は驚きで目を見開いている。 「マジで言ってんのアンタ!?」 「あああああその、若干俺、記憶喪失気味で…」 「ひどいっ!!もぉのことは遊びだったのねっ!?」 は い ! ? 桃子先輩?は俺から後ずさりして、顔を両手で覆ってしまった。 肩を震わせてる。泣かせた!? あああああやっちまったぁぁ!! 記憶を取り戻せてないことでまた女の子傷つけちまった!! 1.あ、その、ウソです!と覚えてないけど取り繕う 2.泣かないでください、とオロオロしながら慰める 3.やばい、絶対やばい、逃げる! やばい、やばいやばい。 通りがかる先輩たちが「何事?」みたいな目でチラチラと見ていく。 「あ、その、ごめんなさい先輩、泣かないでくださいよ」 オロオロソワソワしながら両手をアワアワ振り回すけど、どうしていいか分からない。 まさか抱き締めるわけにもいかないし。 ああどうしよう、どうすれば? 「えっとえっと…うぅ…、桃子先輩、泣かないでくださいよぉ…」 「……な〜んちゃって♪」 「え?」 俺が間抜けな声を出すと、そこには笑顔で舌を出した桃子先輩。 「騙されてやんの〜♪」 「ちょっ、ビックリしたじゃないですか!」 「引っかかるほうが悪いんだよ〜だw にしてもなんかジミー雰囲気変わったね」 「そ、そうですか?」 「うん、なんか初めて会ったときみたい。だからからかいたくなったんだけどw」 「うぅ…」 俺、桃子先輩にはいつもからかわれてたっけ?言われてみればそんな気もするけど…。 でも俺はからかわれたみたいで少し面白くない。 「しかも記憶喪失とか、冗談にしたって面白くないってw 言うならもっと面白いこと言わなきゃw」 いや、ホントなんですけど… 1.ホントなんですよ、と事情を説明 2.じゃあどんなことだったら信じてくれました? 3.信じてくれないならいいです!と逆ギレ ここでおかしなことを言ったって仕方がない。 これまで会えなかったこと、そして本当に桃子先輩のこと、桃子先輩との思い出を 一部忘れてしまっていることを掻い摘んで、でも正直に話した。 初めは疑ってた桃子先輩だったけど、話が進むにつれて真面目な表情になっていった。 「…つまり、ジミーはこれまでもぉとどんな関係だったか覚えてないんだ…」 「はい…すみません…」 話し終わると、桃子先輩は悲しげな目を向けてきた。 この目…朝のちぃといっしょだ…。 俺は居たたまれない思いに押し潰されそうになった。 桃子先輩も、俺のことをずっと心配してくれてたはずなんだ。 なのに俺はそんな桃子先輩のことを忘れちゃってるなんて。 「桃子せn「忘れちゃったものは仕方ないね♪ これから新しく思い出作り直せばいいんだし」 …え? 「無理に過去のことを思い出すよりはさ、また色んなことやって思い出したほうがいいじゃん それにいっしょにいればもぉとのことも思い出すかもしれないし♪」 さっきまで悲しそうな顔をしてたのに、桃子先輩はもう笑顔に戻っていた。 なんかコロコロ表情の変わる人だな。 それが可愛い…んだろうけど。 「よーし、じゃあ教えてあげましょう。もぉとジミーはね、付き合ってたの♪」 「え、えぇぇぇ!?」 ま、また恋人ですか?!ちぃがいて、栞菜ちゃんがいて、愛理ちゃんがいて、雅ちゃんがいて。 ホントに!? …マジマジと桃子先輩を見てみるが、その顔に張り付いた笑顔からは本心は読み取れない。 本当に?それともウソ? 1.こ、恋人だったっていうなら、証拠見せてくださいよ! 2.俺も桃子先輩みたいな可愛い人が彼女だったらいいなって思ってたところなんですよ 3.嘘、ですよね? だって俺、他にも大事な人がいるみたいで… さっきもウソ泣きで桃子先輩には騙された。 まさか今回も…? 疑ってるわけじゃないけど、からかわれてる、って思ってしまうのは仕方ないと思う。 ましてや、俺には他にも大事な人がいるらしいし。 「こ、こ、恋人だったっていう証拠はあるんですか?」 「証拠?ん〜…こないだ誕生日にキスされたけど、プレゼントとかってないなぁ…」 「だ、だったら…」 「よし!ちょっとこっちおいで!」 「えっ!?ちょ、桃子先輩!?」 桃子先輩はいきなり俺の手を引くと、どこかへ走り出した。 連れて来られたのは階段の裏の死角の場所。 簡単な物置みたいになってるけど、人が隠れるにはちょうどいいスペースがある。 そこに俺と桃子先輩は入り込んだ。 「人に見られたらまずいから…」 「ひゃ!」 と、桃子先輩は俺の股間を撫で始めた。 え、え、えぇ!? さっきの梅田先輩といい、なんて積極的なんだ! っていうか、桃子先輩とも俺、こんなことを!? 「もぉ、すぐ大きくして、ジミーのエッチ」 病院での禁手淫生活、そしてさっきの梅田先輩のことでまたしてもすぐさま大きくなっていた。 そのまましゃがみ込もうとする桃子先輩。 これは、まさか…!? 1.わ、分かりました分かりました!信じますからもういいです! 2.く、く、口でシてくれるんですか!? 3.だ、ダメです学校でこんなこと! しゃがみ込んだ桃子先輩はそのままチャックを下ろそうとしてくる。 「わ、分かりました分かりました!信じますからもういいです!」 何だか妙に動揺して、桃子先輩の顔と手を押さえて止めてしまった。 「そう?どうせ溜まってるんじゃないの?」 「そ、それはそうなんですけど、こんないきなり…」 多分今の俺はものすごく情けない顔をしてるに違いない。 いくら元付き合ってた(かもしれない)人でも、会った初日にこういうことをするなんて…。 「その、あの、こういうことはもっとお互いのことを知ってからのほうが…」 「そぉ?もぉはジミーのこといっぱい知ってるし、いいと思うんだけどなぁ」 こんな可愛い人が恋人だったらどんなにいいことだろう。あ、いや、恋人だったのか。 でないとあんなこと抵抗なくなんてできないよな。 可愛いから桃子先輩、モテそうだし。 「あ、でもじゃあ2つ約束。1つめ、今度デートしよ。ジミーがもぉのコト知りたいなら、断らないよね?」 「え、あ、はい…」 「ジミーが言ったんだからね、ほら、約束!」 なんか上手く丸め込まれたような気がする。 「2つめ、ジミーともぉが恋人だった、って信じたんだよね?」 「は、はい…」 それも若干丸め込まれたような気がしないでもないけど。 「じゃあこういうことしても、怒らないよね?」 言うや否や、またも俺の前にしゃがみ込もうとする桃子先輩。 え、え!?さっき信じたらやめたんじゃないんですか!? 「も、桃子先輩!?」 や、やっぱりこのままされちゃうんですか俺!? "ギリ…ブチッ" お腹の辺りで聞こえた、少し鈍い音。 見下ろすと、口に制服のボタンを咥えて笑みを浮かべる桃子先輩。 慌てて見ると、制服の第二ボタンがない。桃子先輩が歯で噛み千切ったらしい。 「これちょーだい♪ どうせ中学の第二ボタン誰かにあげちゃったんだろうし、 高校卒業までこのボタンずっとついてるとは限らないし」 「え…」 「だから、もし取れちゃったり、誰かに第二ボタンあげたとしても、 ジミーの高校の第二ボタンをもらったのはもぉだって言えるわけだし」 「え、あ、あ…」 俺は桃子先輩のイジワルな笑みと、ボタンのなくなった制服を見比べるばかりだった。 てっきりまた何かされるのかと…。 「何だよぉ、顔真っ赤にして。何か期待したんだろ、このムッツリw」 「ち、ち、違いますよ!」 「またまたぁw そういうトコ、いつまでもわすれんなよ?ウフフ」 こつんと軽く小突かれた。 そのまま階段裏から出て行く桃子先輩。 「も、桃子先輩!?」 「バイトあるからもう行かなきゃ!覚えてるでしょ、近所のコンビニ!また買い物来てよ!」 叫びながら桃子先輩は行ってしまった。 ヘンな走り方…。 俺は桃子先輩が見えなくなるまで呆然と立ちすくんでいた。 結局、記憶が戻るどころかますます謎が増えてしまった。 桃子先輩とも俺は付き合ってた? なんかからかわれたような、そうでないような…。 でもいくらなんでも、あんなイタズラしといて、ウソってことはないよな、さすがに…。 ―見たいだろ?見てオカズにしたいだろ?このむっつりめ ―そういうトコ、いつまでもわすれんなよ?ウフフ 何だか、同じようなことを前にも言われたような気がする。 桃子先輩はそれを意識して言ったかどうかは分からないけど。 それに思い出させようとするちぃや雅ちゃんと違って、桃子先輩は新しい思い出を作ろう、って言ってくれた。 あんな可愛い先輩と付き合ってたなんて、俺ってサイコーじゃん! 誰が本当の本命なのか、いつかは決めなきゃ、いや、思い出さなきゃいけない。 だけどまずは、誰とどんな仲だったのかを見極めるほうが先決に思えた。 問題の先延ばしに違いないけども。 さっきの桃子先輩だって、ウソ泣きだったけど傷ついてないわけがないんだ。 そう自分に言い聞かせて、帰り道を急いだ。