歯車はひとつが狂えばすべてが狂う 

「雅ちゃ〜〜〜ん♪」 
料理してるエプロン姿がかわいくて抱きついた。 
「じゃましないで。指切ったら危ないでしょ」 
「嬉しいくせに、俺と二人きりなのが」 

ばーか、とせっかく向けてくれた顔をそむけてしまった。まったく素直じゃないんだから 
「俺は嬉しいよ。こんないい匂いがするんだもん」 
うなじに鼻を近付けてわざとくすぐったい様に匂いを嗅ぐ。 
「こらっやめなさいって言ってるでしょ。怒るよ」 
「殴って。たまには思い切り痛くしてほしいよ」 
「…するわけないでしょ。私の手が痛いだけだもん」 

昔に比べるとずいぶんおおらかになったよなぁ雅ちゃん。 
でも、刺激がないというのはつまらないね。ちょっと怒らせてみようかな…? 

1 胸をもむふりして空振り、をしつこく何度も繰り返す 
2 包丁を使ってるときに目隠ししてやれ 
3 まな板ならいっぱいあるじゃん、と胸と腹をしつこく撫でよう 



もっと怒らせてみよう。 
「ちょっとどこ触ろうとしてるの。そこは…まだ早いでしょ」 
胸の近くまで手を近付けさわらない様にもむ振りをした。 
「…………」 
もまれると思って警戒していた雅ちゃんが手の動きを不審に思ったのか、聞いてきた。 
「なにしてんの?」 
「いやあもみたいんだけどね〜、さすがに無いものはもめないからねぇ」 
「さっ、触ればいいじゃん」 
「だ、か、ら、触れないの。真っ平らだから」 

…おかしいな。表情が変わらないぞ。こんだけこけにされたら普通は怒るはずだ。 
特に女の子にとって胸をけなされたら屈辱に違いないのに。 
「ホント子供ね。おとなしくご飯できるまで待ってて」 
調子狂うな。 
予定ではここでさっそく鼻に一撃もらってるはずだったが… 
「離れてなさい。くっつかれてたら料理しづらいの」 

なに、そのちょっと恥ずかしそうな顔。なに照れてるの、抱きつかれたぐらいでいまさら。 

1 もっとしつこく胸の前で手を空振りする 
2 じゃあその尻をなで回してやろうか、ん? 
3 煮てる鍋を見てみるか…なんか味が薄そうだな 



その恥ずかしそうな顔、なるべく早く鬼になってほしい。 
こうやって甘いのもいいんだけどあの怖かった雅ちゃんが懐かしいんだよ。 
「じゃあこの無駄にぷりっとした尻を撫でてやろうか」 
最初はまだ穏やかにスカートの上から、あくまでなぞる様に 
「ん、あっ」 
胸からいきなり尻を触られてびっくりしたみたいだな。 
「さっきからしつこいのよ。じゃましないでって言ってるじゃない!」 

…怒ってるな。だけどこんなのまだまだかわいい方だ。 
本気の状態を鬼だとしたら天使のようだぜ。 
「胸もせめてこれくらい張りがあればいいんだがなぁ」 
「こらっ、触るなってば、あ、んん…」 

な、なんだこの声。 
本気で怒るより先にそういう気持ちになったっていうのか? 

1 ちょっと強めに尻をつかむ 
2 耳たぶをかんで首を舐めちゃえ 
3 悪乗りして前の方をまさぐる 



「雅はスケベだなぁ、そんなやらしい声出しちゃって〜」 
「し、しつこいのよ、いい加減にしないと、ね」 
「いい加減にしないと…なぁんだぁ?」 
その耳たぶを噛んでこりこり感触を味わってから舐めた。 
「んはぁ…た、だめだってば」 
「もっとしてほしいって?」 
俺の悪乗りはいちどはずみがつくと止まらなくなる。 
「こらぁっ、本当にやめてって、ば…!」 
そのまま首から肩にかけていやらしく舌を這ってやれ♪ 

「だ、だめぇ、料理に集中できないでしょお…」 
「いまは俺に集中するんだ」 
「料理の方が大事…」 
そんなぁ、俺より料理の方が大事なのかよ。 
…なんか腹立つ…ジェラシー、いまぐつぐつ煮えてる鍋にジェラシー… 

1 こんなまずそうなものが大事だって?笑っていいか? 
2 いいからやらせろって言ってるんだよ 
3 俺は料理なんかよりお前が大事だよ 



「俺は料理なんかよりお前が大事だよ」 

ふと、雅ちゃんの声のトーンが弱くなった。 
「…わ、私は、料理の方が大事だって、ば…!」 
「どーしてそういうこと言うんだよ」 
「見たいの」 

いったい何を見たいんだよ。 
「…美味しいって言ってほしい。うれしそうに食べる顔が見たいの」 
小さくて消えてしまいそうな声だった… 
「だからお願い。もう少しだけ待っててほしい」 

雅ちゃんからのお願い。どうしよう? 

1 わかりました。おとなしくしてるよ 
2 美味しく作ってくれよ、とおでこにキス 
3 俺は雅の方が大事なんだ!と押し倒す 



少々しつっこく触りすぎたかもしれない。 
これ以上悪ふざけしたら間違いなく一気にカオスを振り切ってしまうだろうな… 
「わかったよ」 
黒めなカラメル色の髪をそっと撫でて前髪を上げた。そして 
「きゃ、なによっ」 
ちょっとかっこよくおでこに口付け。 
「美味しく作ってくれよ。約束だぜ」 
「か、かっ…つけ……で…」 

かっこつけないでよ、って言ったのか?小さくて最後まで聞き取れなかった。 
あの気の強い雅ちゃんが面と向かってしゃべれないのがすごく可愛かったよ。 

よしわかった。もう困らせるのはやめよう。 
たまには怒る姿を見てみたかったけど…もし怒らせたら取り返しがつきそうにない。 
こうやって俺のために何かしてるときは特にね。さすがにおとなしくしてる方が正解だろう 

「………………」 
「うるさい、足ばたばたしないの」 
「待ちきれなーい」 

「俺よりうまいなぁ」 
「当たり前でしょ」 
「なにその自信?」 
「だって…一生懸命作ったんだもん」 

こら、そうやって…さあ、じーって見るなってば。 
「あっ、そうかい」 
「顔赤いよ、そらさないでこっち向いて。ほら早く」 

うう…なんで雅ちゃんとだとこうなるんだ。 
ちょっとした些細なことでもすごく恥ずかしくなる。 
「ごちそいさま!」 
「なにごちそいさまって?ちゃんとしゃべれてないよ」 

…もしさっき怒らせてたら、この悪戯な笑顔はどうなっていただろう? 
ふと、考えてしまった。 
当たり前のこの状況かもしれないが行動によってはまるで違ってしまう。 

…だから、あの 
うまく言えないが、これからはもう少し雅ちゃんのことを考えて行動しようと思う。 
「一緒に片付けよ」 
エプロンをつけたまま食器を洗っているこの姿が当たり前に見えるけど 

もしかしたら奇跡なのかもしれない。 
俺が、雅ちゃんの隣にいることだって、同じかもしれない