この後どうするか、夕飯にはまだ早いしな 
記念におみやげ屋でも寄っていこうかとも思うが、どうするか 

「ちぃはこの後どうしたい?」 
「う〜ん、とりあえず写真でも撮ろうよ。2人の記念にさ」 
「そうだな、そうするか」 

記念撮影か、あんまり2人ででかけて撮った写真なんてないから丁度いいか 
カメラを買いにお土産屋に行くことになると余計なものまで買っちゃいそうだ、俺たち2人だと 

「ねぇねぇ、このペンギンのキーホルダーかわいいよ。ほら」 
「そうか、それよりもこのラッコのぬいぐるみがいいぞ」 
「ん〜そんな年でもないような気がするぅ。かわいいけどさ」 

とまぁ、こんな感じでやはり脱線してしまう・・・予想とおりの展開 
本当はカメラだけ買えばよかったんだけどな 
結局はクッキーやぬいぐるみなどを買い込み、袋から溢れ出しそうだ 

「お土産も買ったし、次はどうするか」 
「ねぇねぇ、今気づいたんだけどここって海近いよね」 
「だと思うよ。潮風が吹いてるしね」 
「だったら、行ってみない?海はうちら行ったことないじゃん」 

1 お腹減ったし、次にしようよ 
2 何々、それで「獲ったど〜」とかやりたいのw 
3 月も出てるし、絶景だろうし行くか 



月も綺麗に空に上がってるし、夜の海を見に行くのも悪くないか 

「海行くか。看板とかも出てるだろうしな」 
「うん、行こう行こう。きっとロマンチックだよ〜」 

ちぃはいつもは無邪気でまだまだ子供かなと思うけど、ロマンチックなものが好きだな 
そういうとこはなんだかんだで女の子だ 
標識に従って俺とちぃは海まで歩いていくと、どんどん海の香りが漂ってくる 
再び、俺の腕にしがみつき寄り添うように歩きだすちぃ 

「夜風が冷たいね〜」 
「寒くない?よかったら、コート貸すぞ」 
「平気だよ〜コート借りたらジミーっちにくっついていられなくなるじゃん」 

俺の顔を覗き込み、照れ笑いを浮かべてくる 
砂浜に出ると、もうそこには絶景が広がっており、満月が海面に映し出される 
それがまたとても神秘的だ 

「綺麗だね」 
「あぁ、綺麗だな」 

砂浜の上にこしかけ、2人で寄り添いあう 
何だか、言葉を話さなくてもずっとこうしていられる気がする 

「ずっとこうしていたいね」 
「あぁ時間を忘れてこうしていたいな」 

しばらくの間、俺たちは砂浜でただ座っていた 
だが、そんな沈黙を破るようにちぃが立ち上がり、「海までいこう」と誘ってきた 
波が押し寄せる場所までいくと、ちぃはおもむろに靴を脱ぎだした 

「ちべたぁ〜い。海ってこんなに冷たかったんだ〜」 
「馬鹿だな、冬の海は冷たいんだぞ」 
「君に馬鹿と言われるとはね。ふぅ〜んだ、こうしてやる。えい」 

ちぃはその長い足で波を掬い上げ、俺に向かって飛ばしてきた 
うわっ、つめてぇ・・・この野郎 

「つめてぇ〜」 
「はっは〜だから言ったじゃん。冷たいって」 

俺も靴を脱いで海まで走ると、ちぃに向かって海水を飛ばした 

「きゃ・・・つめたい。このぉ〜」 

1 このままはしゃいでいたい 
2 いいこと思いついた、海で季節はずれの花火したい 
3 今度こそ、透けさせてやるかな・・・ウシシ 



砂浜に落ちたある物が目についた 
最初はゴミは捨てて帰れ、くらいにしか思わなかったが、そういや花火見に行かなかったな 
季節はずれなのはわかってるけど、花火したいな 

「なぁ、花火したくない?」 
「いきなり何を言い出すのさ。花火ってこんな時期に売ってるわけないじゃん」 
「もしかしたら売ってるかもしれないじゃん。それに夏花火見に行かなかったしさ」 
「あ・・・そういや、そうだ。ジミーっちが断ってそうなったんだったね」 
「だろ、もしかしたら売ってるかもよ」 

こんな時期に売ってるわけない、そんなのは常識かもしれない 
けど、今日だけでいいから売っていてほしい 

「君の悪運の強さってすごいね。本当に売ってたよw」 
「試しに行ってみてよかったな。これで花火ができるぞ」 

現地調達というわけでもないが、砂浜で拾ったバケツに水を汲んで準備OK 
マッチをこすり、花火に点火する 
うっすらと赤い火が点る 

「うっひゃ〜すっごいよ。この花火」 
「ば、馬鹿。俺に花火向けるなぁ〜」 
「だってだって〜」 

俺たちは花火を両手に砂浜を走り回ったり、ととにかく今を大いに楽しんだ 
花火が残り少ない、もう終わりか 
最後の締めは 

1 線香花火 
2 ロケット花火 
3 ねずみ花火 



線香花火、はかなくて見ているだけで切ない気持ちにさせる 

「線香花火にしようか」 
「うん、それがいいな。線香花火大好き」 
「こうしてみてると切ないな。もう終わりって気がしてさ」 
「だね、でもジミーっちと花火ができただけでちぃはすごく嬉しい」 

線香花火をみつめるその表情がとても色っぽかった 
ちぃの奴、いつからこんな色気を醸し出すまでになったんだろう 
俺は隣で線香花火をみつめるちぃの唇を不意に奪った 

「ん・・・ジミーっち・・・」 

キスなんてもう何度目かわからないくらいしてるはずなのに、今日のキスはいつもとは全然違った 
たぶんずっと忘れられない 

「もう帰ろうか」 

もう帰ろう、そう言って駅まで戻った俺たちだったが既に終電がいった後だった 

「どうしようか」 
「ついでってわけじゃないけど、朝日が昇る海まで見ていくか」 
「ここまできたら、そうしようか」 

俺たちは砂浜に戻って朝日が昇るまで海で一夜を明かした 
これはこれで悪くなかったけど、その後の代償が高くついたりした 
次の日、俺とちぃは見事に風邪を引いてしまったのだ 
で、期末テストは散々な結果に終わり、入試もピンチ 

「この時期に2人揃って何やってるんだか。進学できなくても知らないからね」 
「まぁまぁ、大丈夫だって。ねぇ、ジミーっち?」 
「たぶんね。須藤さんが何かあったら答え教えてくれるよね、ね?」 
「私はそんなことしません。自力で合格しなさいな」 
「えぇ〜」 「えぇ〜」 

須藤さんに叱られ、雅ちゃんも勉強は苦手と頼りになりそうにない 
本来は自分の力で合格しなければならないんだけどな 

「まあさ、それよりさ新ギャグ聞いてよ。いくよ〜『湘南の海に行ってきました』」 
「しょうなん」 「しょうなん」 
「あぁ〜何でわかるの〜」 
「あんたの考えそうなことはお見通しです。そこ、2人も笑ってる場合じゃないよ」 

肝っ玉母さんに連れられ、俺たちはこの後勉強会だそうな・・・ 
しかし、俺とちぃには入試前のいいリフレッシュになってくれた 
2人して、しっかりと見合って笑いあい、高校も一緒に行こうねと約束しあった 
この約束だけはちゃんと守ろう、ちぃの為、俺の為そう誓った