金曜日、授業も終わって萩原と二人で帰宅の途中だった。今日一日どこか萩原の顔が浮かれていた。 
「どうした?なんかいい事あったのか?今日一日ニヤけっぱなしだぞ?」 
「わかるか?そうかぁ・・・」 
そりゃわかるって。 
「俺は今人生で至福の時間を過ごしているんだ。理由が聞きたいか?」 
いや「別に・・とも思ったが、俺の返事を待たずにヤツは話し始めた 
「実は舞がな、俺のためにチョコレートを作ってくれるんだ」 
「へぇ・・・」 
「舞が生まれてから、舞から貰ったのは店で買った安物ばかり、それでも嬉しいんだけど、 
今回はなんと手作りだぞ。俺のために舞が、あのかわいい手で舞がチョコを作ってくれる。 
どうだ?こんな幸せがお前にわかるか?」 
「なるほど、それはよかったな」 
「なんだ、もっと小躍りして喜ぶところだ、お前は本当に情が薄いな」 
なんで、俺がと思いながら、そうかそんな時期なんだと理解した。 
今までこういう行事とは縁がなかったんでスルーしてたけれど、今年はもしかすると・・・みたいな期待が持てるな。 
「じゃあな」 
萩原は別れるとへんてこなスキップをしながら帰っていく。いい奴だと思うよ、ほんとに。 

「ジミーっち!」ちょっと高めの大きな声で俺を呼ぶのがいるな。 
「遅かったね。今帰り?」 
「ちょっと萩原と片付けしたたから」 
「大丈夫?」と須藤さんの心配そうな声 
「なに?大丈夫って」と雅ちゃん。 
「あああちゃんと終わったかなって」とごまかす須藤さん 
「う、うんちゃんと終わった」と俺 
「ところでみんな揃ってどうしたの?」と聞くと 
「へへへージミーちゃんには秘密」と千奈美が言った。 
見ると二人も顔を見合わせてなんか笑ってる 
「なんだよー」と突っ込むと、「後のお楽しみ」と千奈美が笑顔で話した。 
ふと見ると千奈美が持ってる袋には見覚えがあった。確か桃子先輩も同じもの持ってたっけ・・・とすると中味は・・・ 
「じゃーにー」手を振りながら千奈美は歩いていった。あっちは確か夏焼さんちだな。 
俺の期待は最高潮に膨らんだ。もしかすると萩原みたくスキップしてたかもしれないな。 


土曜日、遅く起きてゴロゴロしてたら、、母親が電話だと知らせた 
「誰?」 
「えっとね、確か・・・徳永さんって子から」 
電話口に出た。 
「あ、ジミーっち?今日暇?」 
「まあ、暇だけど」 
「よかったらうち来ない? 
「千奈美の家に?」 
「うん、渡したいものがあるから」 
なんだろ。まあいいか、 
「わかった、行くよ」 
「ほんと?じゃあ3時に家の前でね。」 
そういうと切れた。 
なんか複雑な気持ちもあったけど、とりあえず約束の時間に千奈美の家に行った 
「やっほー」呼び鈴を押すと能天気な声で玄関が開いた。 
「どうぞどうぞ」と促され二階の千奈美の部屋に通された。 
お茶のペットボトルとコップが用意された。 
俺はテーブルの横に、千奈美はベッドの上に腰掛けた。 
さてなんか話すか 

1.キレイな部屋だね 
2.渡したいものって何? 
3.ずいぶん静かだね 



「今日は随分と静かだね」 
「うん、今日はパパの実家で集まりがあるからってみんな出かけたの」 
「え、大丈夫なのか?」 
「まーにー。課題あるからってごまかした」 
そう言ってVサインをする千奈美 
そうか・・・今日は二人っきりなのか・・・とはちょっと言い出せなかったけど 
妙に意識してしまったかな 
思わず喉がかわいたのでお茶をゴクリと飲んだ 
千奈美もちょっと黙ってお茶飲んでた 
ちょっと何がしかの緊張感みたいのが走っちゃったかな 
ここは更に話題をふらないと 

1.そういや昨日3人でなにやってたの? 
2.家族はいつ戻ってくるの? 
3.なんか用事があったんじゃないの? 



「じゃあ早く戻るのかな?いつ帰ってくるの?」 
「え?」 
千奈美がビックリした顔でこっちを向いた 
「一応・・・泊りがけ・・だけど」 
そういうと少しうつむいてしまった 
俺もちょっとだけビックリ。いいのかな・・・こんな事があっても・・・ 
そういえば、以前須藤さんに聞いたけど千奈美の部屋って結構雑然としてるって聞いたけど 
そんなでもないぞ。片付けたみたいだし・・・やばい。ちょっとドキドキがとまらないか? 
「あ、あのさ・・・」千奈美が切り出した 
「み、みかんでも食べる?」 
千奈美がベッドから降りて階段を下りていった。 
俺は一応いろいろな状況を考えた・・・ 
二人っきりの状態で俺を部屋に呼ぶって事は・・・ 
でもあの一件以来千奈美は俺とは付き合ってないっていうし・・・ 
だけどあの後結構いい雰囲気だし・・・ 
すると両手にみかんを抱えた千奈美が戻ってきた 
「はい」「ありがと」 
二人で皮をむいたとき俺のみかんの汁がチュって千奈美の目に飛んだ 
「あいた!」 
「あ、ゴメン」 
慌ててティッシュを探す。あ、机の上にあるみたいだ 
そっちに寄っていってティッシュを渡す。 
「んも!」 
目をティッシュで押さえてぱちぱち瞬きをする 
「ほんとにジミーっちは下手だなぁ」 
みかんを剥きながら千奈美が呆れたようにいった 

1.じゃあ俺に食べさせてよ 
2.みかんじゃなくて他のがいいな 
3.そんなのより食べたいのがあるんだけど・・・ 



「そんなに言うんなら食べさせてよ。ね?」 
「ほんとに世話がやけるなぁ・・・はいどうぞ」 
「えーそうじゃなくて。あーん」 
「もう子供みたいなんだから」 
でもちょっと嬉しそうにみかんを一つ摘んで口に入れてくれた 
「うん、おいしい」 
「でしょ?剥いた人がすごいんだから」 
「じゃもう一個」 
「ほんとにもう」 
でもこんどは向こうから 
「はいあーん」 
俺が口をあけるとぽいって投げ入れてくれる 
それで今度はまだ頼む前からひとつ持ってこっちの食べ終わるのを待ってるみたいだ 
このままだと面白くないしな 

1.今度は俺がたべさせてあげるよ 
2.千奈美の指ごと食べちゃう 
3.よし投げてみて。見事食べちゃうから 



俺はまた口をあけた。ちょっと低い位置に構えて。 
千奈美はもうっとばかりに手を伸ばして俺の口までみかんを運んできた 
そのかわいい指が俺の顔に近づいた時、すっと体を浮かせたんだ 
「きゃ!」かわいい叫び声はしたけど確実に俺の口は千奈美の指を捕らえた。 
「ちょ、ちょっと・・・」 
そんなのお構い無しで、千奈美の手首をもつと千奈美の指に舌を這わせていた 
ちょっと柑橘な匂いのする千奈美の指をペロペロと。 
「だめ!」そういう強い口調で手を引っ込めた。 
「ほんとにジミーっちはエッチなんだから・・・」 
ブツブツ言いながらハンカチで手を拭いていた。なんだよ別にエッチな事はしてないんだけどな 
「ゴメン・・・ 

1.だってかわいい手だったんだもん 
2.ちょっと勢いがつきすぎて 
3.みかんが激ウマだったからつい。 



「ゴメン・・・だってみかんが激ウマだったからさ。つい飛びついちゃった」 
「ふぅーん。あっそうですか」とそっけない 
自分の分のみかんを剥きながら一人でパクパク食べてる。 
なんだ何拗ねてるんだ。 
「なあ千奈美さぁ・・・」 
「ねーもうエッチなジミーっちなんて知らないですよねぇ」 
千奈美は枕元においてある熊のヌイグルミに向かって話しかけてる 
あららなんか拗ねてるのか?どうしたっていうんだよ 
「なあ千奈美ってば・・・」 
「ねー」 
相変わらず熊さんと話をしている千奈美 
全く 

1.いい加減にしろよと怒鳴る 
2.何拗ねてるんだよと横に座る 
3.お返しに俺のなめていいからと指をだす 



「何拗ねてんだよ」とベッドに座る千奈美の横に座ってみた 
プイっと横を向いてしまった千奈美 
「さっきのは悪かったよ」 
「うん」 
「機嫌直せよ」 
「ていうか、怒ってるの」 
「まだ怒ってるのか?」 
「ううんなんかね。こう折角ジミーっちが来てくれたのにさ・・・なんかうまくいかないっていうかさ」 
相変わらず熊を見つめたまま千奈美が続ける 
「素直にジミーっちに気持ち伝えようと思っていろいろと考えたのにさ、なんかダメだよねぇ・・・」 
ぬいぐるみをテーブルに移して、こっちむいて笑った 
「でへへ・・・なんか湿っぽいね」 
目がちょっとウルウルしてるな 

1.涙なんて似合わないぞと顔をつつく 
2.まあみかんでも食べなってと差し出す 
3.抱きしめる 



「泣くなよ、ちぃは涙は似合わないから」 
「へへへへ、そうだね」 
顔をつっつくと目が無くなりそうなくらい細くなって笑ってた 
「あの、あのね」と千奈美が引き出しの中をあけた 
「これ、ちょっと早いけど」 
そう差し出されたのは小さな包み。これって・・・ 
「ちょっと早いけどバレンタインのね、一応手作りなんだぞ」 
「千奈美・・・」 
「昨日みんなで作ったんだけど、なんかジミーっちには二人きりの時に渡したくってさ。それで・・」 
照れた顔でそっと差し出す。 
「開けてもいい?」うなづく千奈美 
小ぶりだけどちゃんとハードの形になってるっチョコが出てきた 
「形は・・・あれだけど・・・味は大丈夫だから」 
ほんと? 

1.ありがとうって一口食べる 
2.じゃ一緒に食べようか 
3.味見した? 



「ちぃ・・・」手を伸ばして顔に触れると結構熱い
「ジミーっち・・・」
千奈美のちょっと潤んだ瞳に俺が揺れてた。俺が体を起こすと千奈美は目を閉じた
口をゆっくりと重ねる
「一応・・・本命なんだぞ」
照れたようにそう呟く千奈美。俺はもう一度千奈美の顔を見てそしてもう一度顔を寄せた
千奈美も体に手を回し俺達はぴったり抱き合っていた
自然と本当に自然と俺達は重なり合いながらベッドに倒れこんだ
「ちぃ・・・」
千奈美はこっくりうなづいた
千奈美の柔らかい部分がドキドキと鼓動を発する。
そのかわいい唇に向けてそっと俺は近づいた

その時携帯がカタカタなり軽快な着メロが響く
千奈美は慌てて携帯に出た
「もしもし?え。うん。え?そうなの?わかった」
電話を切ってこっちを向く
「ごめん。ちょっと出かけなきゃ」
「どうした?」
「ママ達戻ってくるって」
「え?」
「泊まりなのはパパだけでママとか帰ってくるって」
「そうか・・・でなんで出かけるの?」
「だから今日は課題をするためにみやの家に泊まるって言ってるから」
「あ。そうなんだ・・・」
「ゴメン。ジミーっち、またね」
慌しく片づけをして千奈美と俺は家を出た
「じゃあね・・・また今度」
「おう」
ちょっと残念な感じだったけど、まあいいか。チョコもらったしな
「あ、ジミーっち待って」
振り向くと千奈美の顔が真横に・・・そして唇に触れた・・・
「えへへへ。またね」
「お。おう」
「ジミーっち、甘かったぞ」
そりゃ千奈美のせいだからな