「タイムカプセルぅ?」 

ナイスな俺の提案を聞いて、一瞬みんなの顔が怪訝そうなものに変わる 
いきなり過ぎたかなと不安になったが、思い出を形として残しておけるいい機会だと思うんだが 

「そいつはいきなりだな。それにまだ卒業まであとちょっとあるぞ」 

萩原、お前だけは味方じゃないのか・・・え? 

「ジミー君、あんたって本当に衝動的よね」 

須藤さんはまたジミーの悪い癖が始まったと呆れ気味だ 

「ん〜みんなの言う通り、いきなりじゃないかな・・・」 

雅ちゃんもすぐには頷けないという微妙な表情 
だが、ただ1人だけ俺の味方がいてくれた 

「面白そうだね〜いいじゃん、やろうよ〜」 

ちぃだけはとくに悩んだわけでもなく俺の考えに同意してくれた 
しかも目を輝かせているし、これは俺以上に乗り気なのはこいつかも 

「だってさ〜今の思い出は今しか作れないんだよ?だからさ、ね。タイムカプセルやろうよ」 

ちぃがみんなを説得しにかかっているが、萩原と須藤さんは中々うんとはいってくれない 
ここは俺も説得しにかかったほうがいいだろうな 

1 萩原、舞ちゃんだって小学校卒業だし一緒でもいいんだぜ 
2 須藤さん、君との思い出を僕は残しておきたいなぁ〜 
3 ここは強制的に日時と場所を決めて話進めてしまうか 



まずは萩原でも落としにかかるか 
奴なら舞ちゃんを使えば、簡単に落とせるだろうな 

「おい、萩原君。君には小学校を卒業する予定の妹さんがいたねぇ」 
「何だ何だ、白々しい。お前、舞を使ってどうしようっていうんだ」 
「萩原、舞ちゃんだって卒業するんだし一緒に思い出を残しておいたっていいんだぜ」 
「お前・・・俺の懐柔の仕方は舞だと思ってるだろ」 
「いいのか?舞ちゃんは俺がやろうって誘えば、きっと一緒にやりたいっていうぜ」 
「やろう?貴様〜俺の知らない間にそんな関係にまで」 

何を勘違いしたか、卑猥な妄想をした萩原がみんなの前で取り乱しだした 
しかし、女の子たちが様子をみていることもあり、完全に理性が吹っ切れないらしい 

「お前にも場を弁えるだけの理性は残ってるみたいだな。なら、ここは同意したってことにしとけ」 
「ぐ・・・後で覚えておけ」 

萩原は俺に怒りの目を向けた後、踵を返して3人の前にいって笑顔をみせた 

「俺はジミーの考えに同意するよ。たまには俺もみんなの仲間に入れさせてほしいしね」 
「そっか、萩原君もOKなら私もいいっかな」 

ようやく須藤さんもOKをくれたので、タイムカプセルを埋めることに決定したみたいだな 
で、俺はこの後の予定を決めないとかな 

1 まずは日時と場所、教えておけばいいっか 
2 舞ちゃんを誘いにいこうか 
3 リーダーは萩原に任せてしまう 



萩原から同意もらうのに舞ちゃんの名前出してしまったことだし、舞ちゃんを誘おう 
俺は小等部の教室までいき、舞ちゃんを呼び出した 

「ジミーちゃん、何?」 

俺がわざわざ会いに来たのが、嬉しいのか舞ちゃんは飛びついてきた 
少し伸びた身長のせいか顔の位置が近づいた気がする 
上目遣いに俺をみる視線ももう小学生とは思えない 

「舞ちゃんさ、タイムカプセルとかって知ってる?」 
「聞いたことあるけど、それがどうかした?」 
「今度さ、みんなでやろうって決まったんだ。それで舞ちゃんもどうかなって」 
「タイムカプセルを自分たちでやるなんて面白そうだね。うん、やろう」 

舞ちゃんはあっさりとOKをくれたこともあり、揉めたりすることもなく話は進んだ 

「じゃあ今週の日曜日に思い出の品を持って、集合するってことでいいかな」 
「バッチリでぇ〜す。ちぃはね〜何を持っていこうかな〜」 
「で、ジミー君。埋める場所はどこにするの?」 

あ、それをまだ決めていなかったな 

1 学校の裏庭でいい? 
2 川原で 
3 俺の家の庭なんてどう?w 



「学校の裏庭でいい?」 

無難な場所ではあるが、ここがいいだろう 
広くて開けた場所はここ以外にそうそうあるはずがないからな 

「そこでいいんじゃないか。俺はお前のことだから『俺の家なんてどう?』とか言い出すと思ったw」 

こいつ、エスパーかよw 
一瞬だが、俺の頭の中にその案があったことは間違いない 
萩原、そんな能力あっても妹のことは丸っきりわからないのなw 

「じゃあ日曜日に学校で」 

そういって、俺たちは解散した 
俺はどんな思い出をタイムカプセルに入れようかな〜 
悩むな〜こういうのは一生ものだし、下手なものを入れて掘り出すときに笑われたくはない 
とはいえ、俺には一番大事なものって何だろう・・・ 
1年間が濃すぎて、どんなものがいいのか中々決められなかった俺を呼び止める声がした 

「ねぇ」 

1 舞ちゃん 
2 須藤さん 
3 雅ちゃん 
4 ちぃ 
5 ハギティ〜 



「み、雅ちゃん」 
「そんなに人の顔みて驚かないでよ。ちょっと嫌な感じぃw」 
「ご、ごめん。突然呼びかけられたからさ」 
「夢中だったもんね、君。だって、私がずっと隣にいたのに気づかないんだもん」 

ずっと隣を歩いていたのか、教室から? 
俺ってば、そんなにも考え事に熱中してたんだな 
で、雅ちゃんは俺に何の用事があるんだろう 

「考え事に熱中すると周りがみえなくなる。それって君の悪い癖だよ」 

まるで昔から俺の癖を知ってるみたいな口ぶりで注意してくる雅ちゃん 
しかも俺を見る目がいつもよりも優しげなのは気のせいだろうか 

「自分だとそういうのって気がつかないからね。私は結構前から気づいてたよ」 

俺がしゃべる間もなく、雅ちゃんは思い出に浸るように話す 
いや、もう既に浸っているのだろう 

「結構前って、そんなに前から知ってたんだ。俺のこと」 
「だって、ちぃが君のことを2年の時からずっと話してたからね。あんなに優しい人はいないって」 

何だろう、雅ちゃんが俺のことを知っていた理由をもっと深く知りたい気がする 
雅ちゃんもちぃ同様に俺のこと、もしかして初めから・・・ 

1 同じクラスになってからだって見る機会はあったし自惚れるな 
2 雅ちゃんからじっくり聞きたいので、このままにしておく 
3 自分で思い出してみるか? 



俺は自転車を転がしながら、雅ちゃんの話にそっと耳を傾けた 
このまま聞いておけば、彼女からもっと話が聞けそうだからだ 

「でね、ちぃって今まで面食いだったからまた顔だけ良い男かなと思ったのね」 

ちぃの過去が明らかになったな、面食いとは予想通りだけど 

「だから、茉麻と私で見に行ったのね。そしたら、君じゃない。だから、意外すぎちゃってw」 

くすくす、と小さく笑って口元に手を当てる仕草が妙に大人っぽい 
ちぃがやっても誰かを真似してる感じだけど、雅ちゃんは自然とできている 

「それからは君のこと、見かけたらちょくちょく観察してたんだよ。気づいてなかったろうけど」 

雅ちゃんは今の俺をみてるのではなく、過去の俺をみている 
きっと彼女に遠い目をさせている俺がいたんだ 
自分では一切気づかなかったけれど 

「思えば、ちぃの話聞いてから君のこと追っかけてたかもしれない。ずっと・・・」 

雅ちゃんがふと俺の目を覗き込むようにみつめてきた 
君は私のこと気づいてなかっただろうけど、って恨みがましいものが若干含まれているが 

「だから、君と一緒のクラスに慣れたとき、どうしていいかわからなくて冷たい態度取っちゃったんだ」 

切ない気持ちがすげぇ溢れてくる 
雅ちゃんにさっきから胸がキュンとさせられっぱなしだ 

1 雅ちゃんを抱きしめる 
2 このツンデレめ、あの時お前が素直になってればお前がヒロインだったんだぜw 
3 タイムカプセルに俺との思い出埋めてみない? 



このツンデレめ、あの時お前が素直になってればお前がヒロインだったんだぜw 
なんて、ことは今だったら言えるが、このときはさすがにいえなかった 
というより、この時代にツンデレなんて言葉はなかったが、俺は似たような言葉を言っていた気がする 

「この天邪鬼、あの時君が素直になっていれば俺は君を選んでたんだ」 
「え?」 
「そっちこそそんな顔して驚かなくてもいいだろ。俺は君のことが気になってたんだ」 

気になってた、彼女はその一言をかみ締めるように目を瞑ってしまった 
そして、とても寂しげな表情で俯いてしまう 

「そうか・・・私、あの時素直になってれば君の隣にいられたんだね・・・」 

寂しげな雅ちゃんがいうから、隣って言葉が妙に重い響きをもってしまった 
ちぃには気軽に隣に来いよ、といえたのに 

「でも、それを悔しがったりしてる私、友達失格かな?」 

顔を上げて、問いただすように聞いてきた彼女の目には涙があった 
そんなことを言われたら俺はどうしたらいいんだよ 

1 失格じゃねぇw ちぃが可哀想じゃんw 
2 俺には何も言えないんだし・・・ここはそっと抱きしめる 
3 今度こそ、タイムカプセルに俺との思い出を埋めてみないかと誘う 



失格だとか失格じゃないとか、俺にはそんなこと言えた義理じゃない 
ましてや、俺の一言で2人の人間関係にヒビを入れさせるわけにはいかない 
だとしたら、俺に出来るのはこれくらいだ 

「じ、ジミー君・・・ちょっと・・・こ、困るよぉ」 
「俺には友達失格だとかそうじゃないとかいえないよ。出来ることなんてこれくらいしか」 

俺は雅ちゃんを気づくとギュっと抱きしめていた 

「君っていっつも卑怯だね・・・こんなことして、人の気持ちをつなぎとめようとするんだから」 
「卑怯・・・よく言われる・・・ジミーはずるいって」 
「こんなことされて、嬉しいわけないんだからね・・・」 

俺たちは学校帰りの路上で5分以上もこのまま抱きしめあったままでいた 
寒風が通り過ぎる下、言葉もなく無言のままで抱きしめあった 

「雅ちゃん、タイムカプセルに君との思い出ほしいな」 
「そんなことして、茉麻やちぃにバレたらうるさいよ・・・私、これだけでもすっごい嬉しかったから」 

遠慮してそう言っているのはわかるけど、本当に雅ちゃんはそれでいいの? 
俺は君を傷つけるだけしか出来ないのかな 

1 プリクラなんてどう? 
2 雅ちゃんもあの骨董屋さんに連れて行くか? 
3 出来ることでよければ何でも叶えてあげるから 



せめて俺に出来ることをしてあげたいな 
だったら、タイムカプセルに入れても無難なものにしよう 

「よかったら、俺とプリクラを一緒に撮らない?」 
「プリクラ?いいの?」 

まだプリクラを撮ることにも不安そうな雅ちゃんの態度ははっきりとはしない 

「それくらいなら平気だよ。今日、せっかくタイムカプセルを埋める話もでたんだし、思い出作ろう」 
「・・・本当にいいの?」 
「あぁ。じゃあ自転車の後ろに乗って」 
「うん」 

俺と雅ちゃんは駅前のゲームセンターでプリクラを撮ることにした 
ここは夏に熊井ちゃんと遭遇した場所だったりする 

「俺、初めてだからどう使うのかわからないしよろしくね」 
「いいよ、私がやるから」 

この時にはすっかり元気な雅ちゃんになってくれていた 
切なそうな表情がとても似合う子だけど、良いときには笑顔でいてほしい 

「ジミー君ってプリクラ初めて?」 
「そうだね。初めてだ。つまり、雅ちゃんがプリクラ童貞奪った相手かなw」 
「そんなに童貞とかあるの?wまったく」 

俺の馬鹿なことにもちゃんと反応してくれる 
そろそろシャッターが切られる・・・ポーズはどうしようか 

1 雅ちゃんの肩に手を置く 
2 俺らしくはっちゃけたところを記念に 
3 顔をつかんでキスを 



何も考えることなく、自分らしい場面を撮るのが大事だ 
俺はズボンから取り出した割り箸をへし折ると、鼻と口ではさんで宴会芸をするおっさんみたくした 
そんでもって、両手をあげてバンザイ 
これを隣でみていた雅ちゃんはそれをみて、大爆笑をした 
それがプリクラから出されたときは、雅ちゃんは再び笑いだしてしまっていた 

「これが大事な思い出のものになるなんてジミー君らしいね。これならちぃや茉麻にみられても全然平気かも」 
「だねw」 

こうして俺たちは目的のものを手に入れ、雅ちゃんはお迎えの車に乗り込んで去っていった 

「タイムカプセル埋める日、楽しみにしてるから〜」 
「うん、俺も〜」 

遠く去っていく車をみつめ、俺はこの日は半分渡されたプリクラを手に家に帰った 


「で、これがその問題のプリクラってわけね。あんたらしいね、こういうのって」 
「俺らしいっていうのは同意だが、問題のプリクラってのはいいすぎだ」 

あれから8年、俺はアイドルのマネージャーという職業についた 
卒業式から5年後の成人の日、みんなで開けようと約束していたタイムカプセル 
その日、俺だけその場にはいなかった 
俺は1人東京の大学に進学し、よりによってバイトで失敗して帰れなかったのだ 
それを聞いて、萩原たちは「俺たちだけで開けてしまおう」ということで、開けてしまったらしい 

「雅ちゃん、そんなにまじまじと見入っているってことは君も俺と撮りたいの?w」 
「べ、別にぃ。こんな馬鹿げたのならいらないと思っただけ」 

お前も素直じゃないのな 


俺の車には今、雅ちゃん、そして千奈美に母さんと中3の子たちが乗っている 
俺が昔にタイムカプセルを埋めたなんて話したら、うちらもやりたいと言い出したわけだ 
やれやれ、と思いながらも俺はそれに協力することにした 

「まぁ、こういうのもあなたらしいわね。みてると変わらないんだってほほえましくなっちゃう」 
「だねぇ〜マネは馬鹿やってなきゃマネじゃないもんに〜」 

ったく、いつも馬鹿やってるってわけじゃないだろう 

「ねぇ、うちらもマネとプリクラ撮らない?」 
「千奈美〜それいいねぇ。やろやろ」 
「あなた、今日は馬鹿なことしないでね。私でもフォローできませんから」 

プリクラかぁ〜実に何年ぶりになるかわからないな 
思い出せないくらいにそれだけ撮っていない証拠か 
俺たちは目的地の途中にあったゲームセンターに立ち寄ることにした 

「ほら、あんたは私の隣でしょ」 

と、俺の服を引っ張り、珍しくツンデレじゃない雅ちゃん 

「あなたは妻を差し置いて、みやの隣に行くんですか?」 

と、がっしりと腕を掴んで離さない母さん 

「むぅ〜たまには私の隣にきなよ〜マネ〜」 

と、後ろから抱きついてくる千奈美 
とまぁ、結局シャッターはこの瞬間にきられ、俺達はいつも通りの賑やかなプリクラを残した 
これが記念になるのか、そう思うと俺はまたあの頃と変わってないんだなと懐かしくなった