年も明けて、ワンダのライブもとりあえず東京は終わったしで一段落かな 
我が子たちもみんなよく頑張ってたしな、誇らしい限りだ 
この寒さに負けずによくやったよ、本当に 

ざわざわとみんなが騒ぐのを聞きながら、一人で感傷に浸ってみた 
そういえば、中学のときもこんな状況があったような気がするなぁ 
確かあれはクラスで新年会みたいなのをやったときだっけか 


年始の挨拶…なんて大それたものではないけど、クラスの集まれる奴らだけ集まってパーティみたいなのをやったんだよな 
クラスの男ども、やけにテンション高かったし 
俺は行く気がほぼ皆無だったけど辺りが薄暗くなった頃、萩原に拉致されるように連れてかれたんだ 
誰かが借りたであろうファミレスのパーティルームにクラスの男子大多数と女子一部 
異様な光景だったっけ。一発芸とかやり出すやつもいたし 

行く気の無かった俺は後ろの方でぼーっとその光景を眺めていた 
そんな俺に声をかけてきたのは… 


1.無礼講、と酒を持った萩原 
2.オレンジジュースを持ったちぃ 
3.メロンソーダを持った須藤さん 
4.ウーロン茶を持ったみやびちゃん 



「ジミー君」 

みやびちゃんが前からゆっくりと歩いてきた 
相変わらずおしゃれな子だなぁ。前から思ってはいたけど 
今日もボーダーのVネックセーターにショートパンツとニーハイ。この季節に制服以外で覗く生足が眩しいぜ 

「飲み物。持ってなかったなと思って」 
「あ、ありがとう」 
「ウーロン茶だけど、ね。うちと同じ」 

同じ、といったところではにかんで笑うみやびちゃん。新年早々可愛いな 
そのまま俺の横に並ぶようにしてウーロン茶を飲みだした 
あ…そういえばみやびちゃんに新年の挨拶してなかったな 

「みやびちゃん、あけましておめでとう」 
「あ、そういえば。おめでとう。今年…は、よろしくね」 

今年はっていうところがなんか引っかかるなぁ、まぁみやびちゃんの笑顔は可愛いんだけど 


1.気にせず自分もウーロン茶をすする 
2.ジミーはKY。だからダイレクトに聞いちゃうよ 
3.可愛いなぁ…って何も考えずに勝手に口が 



「…可愛いなぁ…」 
「えっ?い、今なんて?」 
「あ、え…」 

ばっとウーロン茶から俺のほうに首を向けるみやびちゃん 
ただでさえ大きい目がさらに見開かれてる。ていうか、俺も何も考えてなかった 
まさに無意識、だ。やばい 
案外恥ずかしいことに気づいて顔を赤くしたが、ステージを明るくするために周りが暗くなってるからまぁ大丈夫だろう 
まずはこの状況の打破が先だ 

「いや、今日もやっぱり…ふ、服装とか。可愛いなって」 
「あー、これ?そうかな。ジミーくんはこういう格好、好き?」 
「う、うん」 
「そっか。ならいいや。これ着てきてよかった」 

笑ってるけどなんとなく少し残念そうなみやびちゃんの顔。でもなんとか話題は逸れたぞ 
他に話を持っていかなきゃな 


1.お嬢様なみやびちゃん。新年だしこんなパーティ来てて大丈夫なの? 
2.ちぃとか須藤さんはどうしてるのかな 
3.萩原に助けを… 



そういえばみやびちゃんはいいとこのお嬢様だったような 
お嬢様ってことは新年の挨拶とか礼儀とか俺らよりも厳しいはず 
こんなところにきてて大丈夫なんだろうか、ちょっと聞いてみようか 

「みやびちゃんはこんなとこ来てて大丈夫なの?」 
「えっ!?…うち、きちゃダメだった?」 
「いや、そういうことじゃなくてさ…新年の挨拶とかさ、親とか大丈夫だったのかなって。みやびちゃん家厳しそうだし」 

壁にもたれながら、ちょっとだけ本心を出してみることにする 
前のほうは誰かがお笑いのネタでもやってるようだ、結構騒がしい 
みやびちゃんはするりと俺の隣から向かいに移動して、俺と目線を合わせてきた 

「ほんとは、ね…今日、ジミー君に会いに来たんだよ」 
「…へ?」 
「誘われたときに行くのやめようかと思ったんだけど…萩原君に、ジミー君も来るって言われて…」 

そうか、だから萩原のやつ俺を無理やり連行したのか、そりゃ引きずってでも連れてくよな 
…今、一瞬目線をそらしたら萩原と、目があった気がしたけどそれは気のせいだよな? 

だから、親に無理言って来ちゃった。そういって俯くみやびちゃん 
薄暗い中、みやびちゃんが俺の左手をそっと握ってくる 
とにかく、今は手に感じるみやびちゃんの暖かさがやばい、だろ 
しっとりと手が汗ばんでいる。緊張、してるのかな 


1.俺もその手に力をこめてみようか 
2.そのまま手を引いて外に連れ出そうか…二人きりになりたい 
3.その前に萩原を殴りに行こうか 



「みやびちゃん…」 

ゆっくりとみやびちゃんの手を自分の方に引くと、耳元で囁いた 

「ねぇ、抜け出そうよ」 
「え…」 

俺は有無を聞かずにそばにあったドアをあけてもわもわとした暑さの部屋から、外へと勢いよく飛び出した 
とにかく、寒い。でも繋がれた手だけ、暖かい 
みやびちゃんがちょっとでも嫌がったらやめるつもりだったけど…何も言わずに俺の後ろをついてくるみやびちゃん 
走ってるわけじゃないのになんだかやけに心臓が早く動く 
一歩歩くたびに心拍数が上がってる気がするよ 
とりあえず近くの公園まできてみたけど…どうしよう。どうするか何も考えてないや 

「とりあえずさ、座らない?」 
「あ、うん」 

さっきまで俺が引っ張っていたのに、今度はみやびちゃんに手を引かれて近くにあったベンチに座る 
先に俺がみやびちゃんのスペースをあけようと端っこの方に座ると、みやびちゃんは俺に擦り寄るように近くに座ってきた 

「寒い…ね」 
「うん…」 

特に会話が無い。でも、触れ合ったところがやけに熱い 


1.寒いならこれ…と着ていた上着をそっとみやびちゃんにかける 
2.もっと触れ合えば寒くないと肩を抱く 
3.笑えば寒くないだろ、とジミー得意の一発芸でもやっとくかw 



冷たい風が一度、俺たちを吹き付けた 
みやびちゃんも口に出していたようにぶるっと一度大きく震えた 
そういえば触れ合った部分の体温もどんどん下がってるしな。何よりみやびちゃん薄着だし 
俺は上着を脱ぐと、何もいわずにみやびちゃんにかけた 
また目を見開くみやびちゃん 

「寒いんだろ、それきてなよ」 
「でも、それじゃジミー君も寒いんじゃ…」 
「俺は大丈夫だからさ。みやびちゃんがあったかい…な、ら…」 

…俺今、すっげぇ恥ずかしいこと言ったよな?な? 
おかげで最後噛んじゃったじゃねぇかよ、うわー…なんか最悪 
目をそらすと、それに待ったをかけるようにみやびちゃんが手を繋いでくる 
…しかも指と指を絡めるように。俗に言う恋人繋ぎ 
咄嗟に見たみやびちゃんの顔は、りんご並に真っ赤だった 

「…ありがと」 
「いや、別に…これくらい」 
「ジミー君ってさ、ずるいよね」 
「…え?」 
「誰にでもこういうことしてるんでしょ?みんなに…私、勘違いしちゃうよ」 

こてんと俺の肩にもたれるみやびちゃん 
このアングルから見ても…キレイだ 


1.みやびにだけだよ…抱きしめる 
2.21時回った。シンデレラもここまでだな。戻る 
3.意味も無く、キス 



さっきからドキドキしっぱなしで心臓が痛い 

「みやびちゃん…」 
「ジミー君…」 
「いや、雅。だけ、だから…」 

少し、強気に呼び方を変えてみる。そして手を繋いだまま、みやびちゃんを抱きしめた 
俺よりも小さいみやびちゃんは肩におでこをぶつけるようにくっついてきた 
その様子が猫みたいで、なんだか可愛い 
しばらく、みやびちゃんは何も言わなかった。でも俺が見つめていると、少し体を離して自然に閉じられた瞳 
…期待、してるよな 
俺は生唾を飲み込む。冷や汗が頬を伝う 
答えてあげたかった。けど、これでこの期待に答えたらこれからいろんなバランスが崩れそうで怖くて… 

「ジミー君」 

急かすようにみやびちゃんが俺を呼ぶ 
また脳裏にいろんな子が頭をよぎった。でも…それでも俺も自然に顔を近づけていた 
みやびちゃんの顔に、唇に。吸い寄せられるように 
そしてそのままみやびちゃんのすっかり冷たくなった唇に、自分のそれを重ねた 
それは一瞬のことだったと思う。でも塗られたグロスの感覚や唇の柔らかい感触だけがリアルで 
寒いのに、熱い。体の機能もおかしくなっているようだ 

ぱっと顔と体を、勢いだけで突き放すと耳まで赤くしたみやびちゃんがそこにいた 
誰もいない公園での出来事だ 

シンデレラは21時まで。時間も遅くなってきたし、みやびちゃんと皆のところに戻ることにした 

「ねぇ、ジミー君?」 
「…ん?」 
「ジミー君が誰を想ってても。何人でも、私が何番でも…私は、ジミー君が好きだから」 

凛としたみやびちゃんの声。空気に響いた 
…俺は、その時は何も言えなかったけど。手だけは、繋がれた手だけは、強く握った 
皆のところに戻っても、その手だけはずっと…繋がれたまま 
その日、俺は返事出来なかったんだよな…確か 



「マネージャー」 

ふっと我に返るとそこにはウーロン茶を持った雅ちゃんがいた 
その姿が…思い出のみやびちゃんと全部被っていて、懐かしかった 

「これ。疲れた?何か飲み物と思って…」 

珍しくもある、その優しさが。俺に向けてはにかむその笑顔が。あの時のお嬢様を彷彿とさせた 
なんだか、無性に雅ちゃんと手を繋ぎたくなった