「あぁ〜……くそっ!さみぃなぁ……」 

俺、萩原は一人黄昏ていた 
ついさっき冴えない友人と仕立て上げたツリーを見ながら、缶コーヒーをすする俺、萩原 

「舞ぃ〜……なんでなんだよぉ〜……うぅっ」 

携帯の画面に映る我が愛しの姫からのメール 
そこに連綿と語られる非情な死刑通知 

『今年は小学校最後ってことで友達とクリスマスパーティーするからvvv』 

これだけで十分過ぎるほど心が破壊される俺、萩原 
さらに舞は俺の精神破壊を続ける 

『お兄ちゃんも舞にばかり構ってないで彼女ぐらいつくんなよ?』 

お兄ちゃんはっ!!お兄ちゃんは舞がいればぁっ!! 

『あと、ジミーちゃんに“浮気ばっかしてちゃダメだよ?(≧▽≦)”って。よろしく!』 

……燃え尽きたぜ 
真っ白に、おいらぁ真っ白に燃え尽きちまったぜ…… 

はぁ、このままこのツリーで首括ってやろうかな 
そしたらジミーの野郎ビビるだろうな 
徳永との思い出に放課後のエッセンスをプレゼントしてやろうかな 
げへっ、げへっ、げへへへへへ…… 

ん?あそこに見えるは地味なくせに大もてなジミー君だな 
あ〜、もうツリーに見に来たのか 
って俺ここにいちゃマズいだろ!し、仕方ないここはツリーの後ろに! 

危ない危ない 
あと少し隠れるのが遅かったら見つかってたぜ 
空気は読めるのに妹の気持ちは読めません俺、萩原 
なんでジミーなんかと仲良く…… 
なんでお兄ちゃんとクリスマスを過ごしてくれないんだ…… 
あ、また心の汗が目から鼻から口から 

「じゃあ、プレゼント交換しよう」 
「うん。ジミーっちからお願いね。楽しみ楽しみと」 
「左手だして。早く、ほらほら考えてないで。言われた通りにお願いしますよ」 
「はぁ〜い。想像ついちゃったな。でも、まだ何かはわからないからね」 

くそっ、幸せそうにしやがって!! 
俺は舞に捨てられ独りぼっちで裏方やってるっていうのに!! 
ジミーはラブラブでラブラブでラブラブでラブラブでラブラブでえっ!!!!! 

ガンッ! 
パァッ…… 

やっば! 
照明のスイッチいれちゃった!? 
だ大丈夫かな?ジミー怒ってないかな? 
ってあら?意外とイイ感じか? 
なんだジミーよ、そのちょっと照れたような笑顔は 
……ちょっとドキッとしたじゃねぇか 

はぁ〜あ、あんなにくっついちゃって 
こりゃもっと報酬もらわなきゃ割に合わないな 
どうせジミーのことだ、舞の秘蔵写真とかあるに違いない 
それも徴収だな 

あぁ、あいつらも帰っていきやがった 
最後までチュッチュッしやがってたな 
徳永ってあんな風に笑うんだな 
ジミーは、あんな顔で、キスするんだな…… 

はぶひゅんっ! 

ずいぶん冷え込んできたな 
そろそろ俺も帰るか 
ツリーの照明を落としてっと…… 

「あっれ!?お兄ちゃんっ!?」 

え?その声は……まさか…… 

「あ、舞ちゃんのお兄さんじゃんか」 
「え、舞ちゃんのお兄さんがこのツリー飾ったの?」 
「すごぉーーいっ!!」 
「え、だって一番上の星も光ってるよ!?」 
「このサンタ、なんとなく舞ちゃんぽくない?」 
「ホントだ!なにこれ手作り?面白〜い!」 

あぁ……あぁ…… 
見間違うわけがないその神々しくひかるその姿を! 
我が美しき女神!!いや今宵は華麗なるサンタさんかっ!! 

サンタ帽をかぶり、その他烏合の衆を引き連れた妹、萩原舞 
驚愕に彩られたその顔も超絶可愛いなぁ 

「お、お兄ちゃんはなにしてんの?」 

抱きつこうとする俺を適当に捌く我が妹、さすがだなぁ 

「な、なんで舞が学校に?」 

何度も飛びつこうとしていたら舞から「萩原、お前落ち着け」とたたき落とされた俺、荻原 
虫の息で問いかける 

「友達の家でパーティーしてたらいきなりツリーが出てきたから……」 

なるほど 
それで来たわけか 
これはとんだクリスマスプレゼントだな 
ジミーに感謝、になるのか? 

「あはは!凄いキラキラ☆ピカピカだよ!……そうだ!お兄さんも一緒にパーティーしようよ!」 
「ち、千聖ぉっ!?」 

おぉ!!!!!! 
いいいいいいいいいのかい岡井ちゃん! 

「だってお兄さん面白いし、カッコいいからみんな文句ないと思うよ?ね!?」 
「「「文句ナァ〜シ!!!」」」 
「えぇ〜……」 

やったぜメリークリスマスッ!! 
舞とクリスマスパーティーだ!! 
うやっひょーいっ!!! 
「じゃあお兄ちゃんプレゼントは?プレゼントなしなら参加しちゃダメだよ!」 

あ、急なことだからプレゼントなんかないや 
どうしよう……どうしよう…… 

「お兄さんからのプレゼントはツリーだよ!ね?」 

お、岡井ちゃぁ〜ん 


「……チッ。仕方ないから来てもいいよ〜」 

岡井ちゃんの機転のおかげで無事舞とパーティーができる! 
浮かれ気分な俺に岡井ちゃんがそっと近づく 

「お兄さんお兄さん、この借りはジミー先輩との仲を取り持つことで返して下さいね♪」 

またジミーなのか