冬は昼間だというのに冷えるから手もかじかんで困る 作業する合間にも俺は手に息を吹きかけたりして暖めているが、てんで暖かくならないから嫌になる が、これもちぃの為だと思えば、我慢できてしまう 最高のクリスマスをプレゼントしないとだからな 「ジミー、この電飾はここでいいか?」 「あぁ、悪いな。クリスマスで舞ちゃんと一緒にいたいとこ無理いって」 「全くだ、俺は舞と過ごそうと予定を空けていたのにお前から連絡もらってここでこんな手伝いだ。で、舞の寝顔を収めたネガくれるんだな?」 「やるよ、それくらいさ。舞ちゃんが最近はしょっちゅう家にくるからな。(実はもうちょっと過激なやつもあるがな)」 「なんで舞はお前の家ばかり行くんだ。お前みたいな変態のどこがいいかね」 お前にだけは言われたくない だが、舞ちゃんの懐き方は半端じゃなくなったのは事実だ このままいくと一線こえてもおかしくはない… 「大体できたか」 「俺はお前に言われたから手伝ってるが、知らんぞ〜学校の木をこんな姿にして怒られてもな」 「木にするな、木だけにな。今時、警備員もつけずに教師が見回りしてる学校なんてないだろう」 「はぁ…お前にかかるとルールなんて薄っぺらく感じるよ」 腕時計をみると時刻はちぃと約束した時間の30分前になっていた そろそろ行かないと不味いかな〜 「後はこのバッテリーを繋ぐだけだな。お疲れさん。ほら、これがお前のほしがっていたネガだ」 「おう。おい、もっと大事に扱え馬鹿者が!!」 投げて渡したくらいであの怒りようはないよな 舞ちゃんのこととなると完全にそれしかみえなくなるな、萩原は… 「じゃあ、これで俺はちぃを迎えにいってくるわ」 「あぁ、徳永さんはお前のどこがいいのだ。舞じゃないからそこまで好みに口はださんが」 それは俺も気になっていたことだ 運動会の日よりも前から気になっていたことは以前聞いたんだが詳細は聞かなかったからな さて、グズグズしていられないぞ 俺は自転車のペダルを踏むと一気にちぃとの約束の場所まで漕いだ で、約束したのは… 1 駅前の噴水広場 2 ちぃの家 3 2人の家の間にある公園 そう、駅前の噴水広場だった 日も暮れてきたしますます冷え込んでくるな、急がねば 駅前に近づくにつれて人ごみが多くなり、自転車で小道を抜けていくもギリギリの時間になるっぽいな ちぃのやつ、きっともう待ってるよな 早く行かなくては 「きっとジミーはこない、1人きりのクリスマスイブ〜♪」 ジミーっちのやつ、約束破るのはいつものことだし、今日ちゃんと来てくれれかな… 俺は駅前に近い駐輪場に自転車をとめ、走ってちぃの待つ場所へ向かった すると、唄を歌いながら不安そうに噴水の囲いに座るちぃを発見した ちぃを驚かせてやろう、俺はちゃんときたぞって まだ買ったばかりの携帯を取り出すとちぃの番号を呼び出した 「もしもし…ジミーっち?」 「うん、着いたよ」 「え〜と、姿がみえないよ?どこどこ」 ちぃへのサプライズ第1弾・登場はどうしようか 1 サンタさんに紛れて風船を手渡す 2 後ろから目隠ししてだぁ〜れだ 3 話しながらここにいるからきて キョロキョロとあたりを見回す姿が可愛いし、人ごみに紛れる作戦でいくか って、俺もなかなか進めないのが欠点なんだがな… くぅ〜先に進ませろよな!! あっ、サンタさん発見 しかも、サンタさんの周りはうまく人がいないな〜みんなサンタさんより隣の恋人ということか 土産ついでに風船もらって、カムフラージュに使って近づこう 風船を受け取ると、俺はサンタさんに隠れてちぃに近づいた 「メリークリスマス〜!!」 「のわっ!!びっくりした〜ジミーっち驚かせないでよ」 ちぃはサンタさんの陰からひょこっり現れ、風船を手渡した俺に驚いて噴水に落ちそうになる 「あんまりびっくりさせないでよ〜ちょっと登場からおかしいよW」 「悪い悪い、サプライズ第1弾終わり。って、お前は薄着だな〜風邪ひくぞ」 みれば、ちぃはコートなどは羽織っておらず、寒空の下でよく耐えていたと感心する 何でこんな格好でいるんだよ… ちぃが薄着なのはね、ジミーっちにくっつきたいからなんだよ〜 ちみにはその乙女心がわかるかな 自分からいくなんて恥ずかしいけどどうしよう 1 ジミーっちにとびついちゃえ 2 気づいてもらえるまで我慢かな 3 寒いからコート着ようかな 気づいてもらえるまで我慢だよ、千奈美 何だよ、コートはちゃんともってきてるんじゃんか なのに着ないなんておかしいな… だが、寒くて震えるちぃをみるのは忍びない ここは俺のコートの中にご案内するか 「ほら、入れよ。そんな格好じゃ寒いだろ」 「うん、ジミーっち〜今日は離さないからね」 ちぃはすごく嬉しそうに俺に抱きついてきた さっきまで寒そうにしてたとは思えないはしゃぎっぷりだな〜 「で、デートコースは決まってるんだよね?」 「もちのろん。俺に任せろ」 俺は以前みつけた裏通りのお洒落なアンティークのあるお店にちぃを連れて行くことにした 表通りにあるお店に客をとられているが、不思議と潰れないのはたぶん固定客がいるからだろう 人の良さそうな店主のお爺さんがパイプふかせて、暖炉に当たりながら本読んでいる 「ジミーっち、よくこういう店知ってたね〜お洒落だ。あ、この小物可愛いよ〜あれも可愛い」 すげーはしゃいでるな 女の子はこういうの弱いからな 「ね、ここでお互いのクリスマスプレゼントを選ぼうよ。そんで後で交換しようよ」 俺は何にするか 1 ガラスのイヤリング 2 お洒落なネックレス 3 古い指輪 指輪か、古いけどこれなんか良さそうだ 俺は指輪を手に取り、お爺さんに特別に値切ってもらうことにした お爺さんもあんなに可愛い子にあげるならいいよ、とのことだった ありがとう、お爺さん 「プレゼントは最後にとっておきの場所があるから、そこで交換することにしよう」 「うん、ジミーっちが面白い計画してるみたいだし信じることにするよ」 俺たちは人目もはばからずに抱きつきながらネオンが輝く街並みを歩いた キラキラと降り注ぐ光を受けて、ちぃがいつもよりも輝いてみえる こんなにも笑顔が似合う子を泣かせていたんだな 「泣かしたこともある〜冷たくしても尚よりそう気持ちがあればいいのさ〜ちぃmy Love so sweet♪」 「何〜その替え歌は〜」 「いとしの千奈美」 「ぷっ、真顔でいわないでよ〜恥ずかしいじゃん。しかも人前だし」 「歌うのやめる?」 「ううん、ずっと聞いてたい」 次はどこにしよう 1 映画館 2 食事 3 学校 映画館にしよう ちょうど見せたい映画があったんだ 古い映画で俺は何故か両親に子供の頃にみせられて感動した覚えがある 「映画館にいこう。見せたい映画があるんだ」 「う〜ん、何々?」「ローマの休日」 俺はリバイバル上映しているのを知っていたから、迷わずにこれを選んだ タイタニックもいいが、古典も味わいがあっていいんだ 中はあまり混んでいなかったが、まばらに昔を懐かしむように中年のカップルが座っていた 「ちぃたちもあんなおばちゃんやおじちゃんになっても仲良くしてたいね」 俺の肩にもたれかかってちぃが呟いた そうだな、俺たちもあんな風にいつまでも仲良くしていたいな 時間になり、映画が上映開始となった 真実の口に主人公が手をつっこんで、なくなったと騒ぐ場面ではちぃがジミーっちみたいと笑っていた 映画がどうやら好評だったらしい 「いい映画だね。ちぃもあんなに可愛い人になりたいなぁ」 1 今でも十分可愛いよ 2 ちぃならオードリーの次に可愛くなれるよ 3 もっと可愛くなって俺がよそ見できなくさせて 「今でも十分可愛いよ」 「嘘ばっか。可愛いならよそ見しないでしょ。でも、本心でいってるなら嬉しいよ」 痛いところを突くな、ちぃは 確かに可愛い彼女がいて浮気したのは他ならぬジミーさんです 俺は奮発して予約したちょっと高めのレストランにちぃを連れて行った 店員からしたら背伸びした子供がくる場所じゃないといいたげだが、俺はちぃの為ならこれくらい苦でもない 贅沢に食材を使った料理が次々と運ばれ、俺たちはあっという間にデザートまで楽しんだ ちぃの嬉しそうな顔みたら財布がカラになろうと構うもんか アルバイトでもして取り返せばいいさ 「楽しい時間も終わりだね。今、親から帰ってきなさいってメールきちゃった。せっかくクリスマスプレゼントまで買ったのにね。残念」 ちぃは寂しそうな顔で帰ろうとしている だが、俺にはまだみせたいものがあるんだ 21時までのシンデレラなんて悲しいこといわないでくれ 1 仕方ないが諦める 2 門限破ったこと俺も謝るから一緒にいよう 3 帰らないでと後ろから抱きしめる 帰らないでほしい、だから俺はちぃを引き留めようと後ろから抱きしめていた 「じ、ジミーっち?…こ、困るな〜ちぃが帰れないよ?お母さんに怒られちゃうじゃん」 「そのときは一緒に怒られるからさ。だから今日だけは帰らないでほしい」 ちぃの涙ぐんだ声を聞きながら、俺はそれが悲しいから泣いてるわけじゃないとわかった 「バカだな〜そんなにいてほしいなら前もこんな風にしてればよかったのに」 バカな俺はちぃにコートを羽織らせ、学校までの道を走った ちぃが背中に寄りかかるのがたまらなく温かい もちろん心が温かいという意味でだ 学校の坂をあがりながら、見下ろす街並みはまた一段と綺麗だ 「ちぃ、街並みが綺麗だよ。みてみなよ」 「ホントだ〜綺麗だね〜すごく綺麗」 さぁてと到着 そろそろあんたの出番だ、伝説の樹 俺はちぃの手をひき、ツリーとして変身した樹まで案内した 「これってあの樹だよね。ここにきてプレゼント交換?」 1 まずは点灯するか、スイッチオン 2 プレゼント交換してからがいいな 3 萩原〜いたら空気読んで点灯してね まだ奴の自転車が残ってたし、奴はそこらへんにいるだろうな 萩原〜空気読んで点灯してね 俺たちは大事なイベントの最中だから、点灯のタイミングはお前に任せるよ 「じゃあ、プレゼント交換しよう」 「うん。ジミーっちからお願いね。楽しみ楽しみと」 「左手だして。早く、ほらほら考えてないで。言われた通りにお願いしますよ」 「はぁ〜い。想像ついちゃったな。でも、まだ何かはわからないからね」 楽しみにしてるところ悪いが、これは君の想像通りの指輪です でも、これリングに俺が頼んでJtoC.Tと刻んでもらったんだな だから、この世に1つしかない君だけの指輪だよ、ちぃ 俺はちぃの薬指にハマれと祈りながら、指輪を通していった すると、そのタイミングでツリーが点灯した 萩原のやつ、いいタイミングだ 『俺からお前にクリスマスプレゼントだな。後でまた舞の写真よこせ』 携帯にはこんなメールがきていた 萩原め、これじゃプレゼントじゃねぇだろ まぁ今夜だけは仕方ないか ちぃは照れくさそうに指輪をはめた手を俺にみせてきた 「似合うかな?」 「似合うよ。とっても」 「へへ、ありがとう。今度はちぃからジミーっちにプレゼントだよ」 ちぃは袋から何やらがさごそとちょっと大きめのものを取り出した どうやら写真立てみたいだ 「ジミーっちの写真立てにいつまでもちぃとの写真が並んだら嬉しいなぁと思って」 「大事にするよ」 俺たちは初めて2人が仲良くなれた場所で、再びこうしてクリスマスを祝える喜びをかみしめあった 「ねぇ、ちぃが俺を好きになったのって何で?ずっと前から聞きたかったんだけど」 「それか〜その様子じゃ覚えてないっぽいね。実は二年のときにね、ちぃが大事なペンを落として探してたんだ。みんなは廊下を通りすぎてゆくのに、ジミーっちだけは探してくれたんだ。あの時から意識してたのかもなぁ」 そんなことあったんだな、俺たちは 謎が解明されたか ツリーとなった樹によりかかり俺たちはこの日何度目かわからないキスを交わしあった いつまでもこの光景を今の写真立てに残しておきたい そんな幸せな日を過ごした