今日はロビケロの仕事で千聖の連れ添いだったんだが 思った以上に早く上がってしまい 千聖に「ドライブ行きたいなぁ」と頼まれ とある夜景が綺麗な隠れた名所に向かっている 「ねぇねぇマネージャーさん?」 「……ん?どうした千聖?」 千聖が俺の袖をちょいちょいと引っ張る こんなところが妙に可愛くて困る 愛理やマイマイとは違った、ギャップ的な可愛さもあるし…… 「マネージャーさんの昔話聞きたいな」 「なんでも、ボクに似た子を最初は男だと思ってたらしいしっ!」 なんだか拗ねたように喋るのがまたイイな 1 じゃあ初デートの話を 2 ならフットサル対決の話を 3 そんなことより、ほら夜景が綺麗だよ。もちろん千聖の瞳の方が輝いているけどね 「んじゃぁ初デートの話を……って言ってもデートなんてイイもんじゃなかったけど」 ホワンホワンホワワ〜ン ジミーな俺が初めて買い物デートした相手は岡井君こと岡井ちゃんだった と言っても、 当初は岡井ちゃんと舞ちゃんが買い物に行く予定だったらしい しかし舞ちゃんが風邪とかでその役目は兄・萩原に引き継がれた 当然のように萩原は妹の頼みを快諾したけど、妹以外の女の子と買い物に行く気はなく、 よって岡井ちゃんと顔見知りで萩原兄妹からの信頼(?)もある俺が選ばれたのだった 当日 殆ど会話したこともない後輩とデートしろ!なんて前日に言われた俺は憂鬱だった 岡井ちゃんは良い男の子?……女の子だけど、だからといってデートに行くのとは別だ あぁ乗らないなぁ嫌われたショックだなぁ女の子の服とかわかんねぇよぉ 1 に逃げちゃうか 2 腹くくって盛り上げるか 3 あ!誰か呼ぶか! よっし!盛り上げまくって満足させてやるぜー! 「あ!ジミーせんぱぁ〜いっ!」 遠くで手を振りながら恥ずかしいあだ名を大声で叫ぶのは間違いなく岡井ちゃんだ 相変わらず黒いなぁ…… って飛び跳ねてるからでっかーなソレが過剰に自己主張してるっ!? すげぇな……徳永もなかなかだと思ってたが岡井ちゃんの方が…… 雅ちゃんなんて同じ名称で呼ばれるものとは思えないぜ…… 飛び跳ねるように走ってくる岡井ちゃん 中1でどんな成長をしてるんだこの子は 男どもが見てるが見るな!岡井ちゃんを汚れた目で見るな! 俺の前で軽く息を整えながら 「ジミー先輩遅いです!けっこう待ちましたよ?」 「ごめんごめん」 「徳永先輩から教わってたから別にいいですけど。」 「徳永から?」 「はいっ!“ジミーはドジでアホだけど、根はいい奴だからに〜”って」 「な、なるほど……」 誉め言葉、だよなきっと 「じゃあさっそく行きましょう!」 「あ、実は俺なにを買うか聞いてないんだよね」「えっと今日は…… 1 新しいスパイクを買いに行こうかなって 2 女の子らしい服を買えって舞ちゃんが 3 徳永先輩へのプレゼントですよ! 「女の子らしい服を買えって舞ちゃんが……」 なんだか不満そうだな岡井ちゃん 「そっか。じゃあさっそくお店行こっか」 「あ、はい!」 いいなぁ。色は黒いけどキラキラした笑顔で見上げてくる なんで俺はこんな可愛い子を男の子だなんて思ったのか ふぅ、愛理ちゃんに教わらなかったら俺最低な先輩のままだったんだろうなぁ まぁ普段着がパーカーに短パンなんて、この体じゃなかったらまんま男の子じゃないか しかし可愛い笑顔だなぁ 桃子先輩や舞美先輩、雅ちゃんや徳永とはまた違った可愛さ、愛らしさがあるんだなぁ このちょっと困った感じがまた加虐心をそそる可愛さというか…… 「え、えっと……ジミー先輩?そんな見つめられてたらは、恥ずかしい……です」 「うわっ!え!?あ、ごごめん……」 もしかしてずっと岡井ちゃんと見つめ合ってたのか!? は恥ずかしすぎる……顔が熱い…… 「あお岡井ちゃん早くお店に行こうよ?」 「えあおお店は舞ちゃんが連れてってくれるって……」 「「…………」」 どどどどうしよう 1 ととりあえず歩こうか 2 喫茶店に入って舞ちゃんに電話しようか 3 買い物はやめて、遊びに行こうか 「じゃあ舞ちゃんに電話して聞こうよ」 俺の提案に笑顔で「ですね!」と同意する岡井ちゃん 「そこの喫茶店で電話借りよう」 カラランカラン 「えっと、俺はコーヒーで。岡井ちゃんはなに飲む?」 「ん〜……」 「ここは俺が奢るから好きな物でいいよ」 「本当ですか!?じゃじゃあこのケーキセットで!」 やっぱり女の子なんだなぁって高っ! 850円もすんのかようわぁ…… 「ん〜!美味しいですよ!」 くそ、こんな顔されたら850円が安く感じちゃうじゃないか 「もぐもぐ、パクパク」 俺は苦くて飲めないコーヒーを口に含みながら、それでも目の前の女の子の幸せそうな姿を見ていた 「あの〜……電話、しないんですか?」 やばっ!また岡井ちゃんを見つめちゃってたぜ 「もしもし?萩原か?」 萩原にどこの服屋に行く予定だったかを尋ねる 「店?悪いけどわからん」 「なら舞ちゃんに聞いてくれないか?」 「…………嫌だ」 「ハ?」 「せっかく舞が寝たのに起こせるわけないだろバカか?今から舞が起きるまで横で看病しててやるんだよ」 「とか言って寝顔を見てたいだけだろ?」 「…………。と、とりあえずお前がどっか連れてってくれ頼んだ!」ガチャン あんのシスコン野郎め 茉麻が知ったら百年の恋も冷めるぞバッキャロー ……と、悪しき感情は置いといて 俺はすでに完食して満足げな岡井ちゃんと一緒に店を出た コーヒーは残した。残金は夏目さんとこの双子。 「舞ちゃん寝ててお店わかんなかったんだよね」 「え……そうなんですか」 困った顔の岡井ちゃんも可愛いなぁ 「どうしましょうか?」 「仕方ないから、可愛い服が売ってるところを探してみようよ」 「買い物ってそういうお店探しも醍醐味なんだぜ?」 ジミーな俺の辞書にそんな言葉があるわけもなく、思いっきり萩原の野郎の受け売りでした だけど、岡井ちゃんは 「そうですね!ジミー先輩となら楽しそうですし」 なんて喜んでくれた 「じゃあまずは…… 1 高級ブティック 2 女の子女の子している可愛いお店 3 スポーツショップ 「そこの可愛い感じのお店入ってみよっか」 正直恥ずかしいけど、岡井ちゃんが可愛い服を買うためだ我慢しよう 「……こ、このお店ですか……」 岡井ちゃんもなかなか気後れしてるみたいだ ここは男の俺が引っ張って行かなくちゃ! 「ほ、ほら行こう!」 グイッ 岡井ちゃんの手首を掴んで歩を進める なんか「キャァ」とか「あわわ」とか「ごめんなさい、とく…が…ん……」とか聞こえた気がしたけど、気にする余裕はなかった ガーッと自動ドアの先にいたのは 女の子女の子女の子女の子女の子女の子女の子女の子女の子女の子女の子 一瞬気が遠くなったのは言うまでもない 右を見ても左を見ても女の子 店員さんも女の人 なんだかもの凄く場違いな気がして体中がかぁっとなった でも 「う……わぁ」 岡井君もやっぱりこういう所は苦手だよねそうだよね男の子なら仕方ないよね よし今すぐ出よう、と思ったら 「……すごい、可愛い……」 岡井ちゃんは目をキラキラさせながら掴まれていた手首を解いて店の奥に歩いていった そっか、いくらボーイッシュだからって岡井ちゃんも女の子だからね 可愛いものは好きなんだね 凄い楽しそうに服を見てる姿は、見てるこっちが嬉しくなっちゃう程だ っと1人で立ってるのはさすがに恥ずかしい 1 岡井ちゃんはどれを着たい? 2 これなんて似合いそうだよ つフリフリ 3 これなんて似合いそうだよ つセクスィ 「これなんて似合いそうだよ」 と俺が差し出したのはそこらへんにあったフリフリのワンピースだった 岡井ちゃんに水色のワンピを手渡すと 「か……可愛すぎますよこんなのぉ」 なんて言いながら突き返してきた 「そうかな?凄く可愛い感じで岡井ちゃんに似合うと思うよ?」 だって明るい岡井ちゃんにピッタリな空色のワンピースなんだもの ぜひ試着して欲しいなぁ 「とりあえず着てみてよ!着たらしっくりくるかもよ」 無理やりワンピを渡して、試着室に押し込む 「え、やぁ、ちょっと、先ぱ、やだ……」 なんとか押し込んでドアを占める 途端に女の子ばかりの空間に男の自分1人ということに気づいた うっわぁ……恥ずかしい……ヤバい今顔絶対赤い…… 岡井ちゃん早く戻ってきてくれ〜!!! 「あ、あのジミー先輩……」 岡井ちゃんは真っ赤な顔を出してきた 「その……なんか上に羽織る物も選んでくれませんか?」 カーディガン的な物を選んでこいと?この女の子空間に1人で? 「お、お願いしますっ!!」 どんなん選べばいいんだゆ〜…… 1 可愛いカーディガン 2 カッコいいカーディガン 3 あえてのガーディアン 可愛いガーディアンなんてどこにあるんだよ〜 お、これなんかあのワンピに合いそうだしなにより岡井ちゃんに似合いそうだな 俺は赤色の透けているカーディガンを岡井ちゃんに手渡した ドアの隙間から手だけを出して「どこどこ?」している姿は可愛かった それ後中から「ん〜……」「いやぁでも〜」「良いのかな?」「ちょっと胸が……」「変じゃ、ないよね」などなど聞こえてきたが、紳士な俺はただじっと待っていた 決して恥ずかしさのあまり動けなくなっていたわけではない ガチャ 「に、似合いますか?」 頬を染めながら笑う岡井ちゃんはワンピの上にカーディガンを羽織っていた しかしカーディガンから透けて見える岡井ちゃんの肩は大きく開いていた 俺は気づかなかったが、このワンピは細い肩紐だけで肩がよく見えちゃう代物だったのだ 道理でカーディガンをギュッと掴んで離さないわけだ 「やっぱり変ですよね?似合わないですよね?」 もう早く着替えたいって感じで岡井ちゃんは俺を問い詰める うわぁ綺麗な肌……健康的な色ですべすべ…… 「いや、凄く良く似合っているよ。めっちゃ可愛い」 俺はもう本心も本心で素直に言えた 人間って本当に可愛いものは恥ずかしさも感じず可愛いって言えるんだなって思ったなぁ 岡井ちゃんは「あうっ!?」と鳴いて?から 「ででもこんなのは舞ちゃんが着た方が似合うし」 「その舞ちゃんがこういうのを着させようとしてたんでしょ?」 「……あ」 結局岡井ちゃんはその服を買った その前に店にある服を種類サイズ構わずなんでも試着して、もっと自分に合うやつを探そうとしていたが 俺が「やっぱり最初のが一番可愛かったし、似合ってたよ」と言ったら 「………………はい」と諦めたのだった 俺は着て帰りなよと提案したが 「は、恥ずかしいからまた今度にして下さいっ!」と言われてしまった その後いまだに顔が真っ赤っかな岡井ちゃんと 体中変な汗で疲れた俺は赤くなっていく街を歩いた 落ち着いてきた頃にジュースを買ってベンチに座る 「今日はありがとうございました!」 普段通りの笑顔で岡井ちゃんはコーヒーを俺に手渡した 「俺も楽しかったからお互い様だよ」 コーヒーを受け取り、一口飲む 「それに普段とは違う岡井ちゃんも見れたし」 意地悪に言うと、また顔を赤くしながら 「でも、“可愛い”って言われて嬉しかったですよ」 唇を尖らせながら 「男の子だと思われてたみたいだしっ!」 「あはは……あれはまじでごめん……」 「今日はケーキ奢ってもらったし許してあげますよ」 お互い照れくさそうにニヘヘ、アハハと笑い合う 他愛ない世間話をして(舞ちゃんとだったらもっと可愛いのだったろうとか、試着室に2人で入ってたかもとか) 夕日も半ば落ちてきたので 「じゃあそろそろ帰ろっか」 「そうですね。……えっと〜〜先輩には悪いんだけど、また買い物に付き合ってもらえますか?」 「うん?う、うん。俺なんかで良ければいつでも!」 「……じゃあ次はコレ着て来ますね!」 なんかおかしな間があったような 「それじゃ気をつけて!サヨ〜ナラ〜!」 岡井ちゃんはまくし立てるように言うと走って帰っていった って早っ!もう見えないや 「さて、」 俺は空になったコーヒーをゴミ箱に入れ、帰路についた。 「というお話さ」 夜景を見ながら語り始めた昔話は、ずいぶん長く話していたようで、すっかり遅い時間帯になっていた 「……マネージャーさん」 ずっと黙って聞いていた千聖がボソッと呟いた 「その女の子とはそのあとなにか、ありました?」 助手席で向き直って真っ直ぐ俺の瞳を見る その千聖の目は少し涙で潤んでいるような…… 「それは…………」 俺は千聖を自宅に送り届け、親御さんに遅くなったことを詫び、帰路についた
リ*・一・リ<ジミー先輩…… 从;´∇`从<ジミー…… ル#’ー’リ<ジミーのにゃろう……